↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第12章 リオンを求めて

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/72

第68話 奪われた子

「リオネル、久しぶりね。この子が私の孫だって? 笑わせるわね」


「……っ!」


黒い巻き毛に黒い瞳――。

あの頃はひとつにまとめていた髪を、今は下ろしてなびかせている。

継母はただの女の顔になり、腕の中の リオン の首にナイフを突き立てていた。


「やめろ! リオンを離せ!」


つかみかかろうとした僕を、レオンハルトが強く引き止める。


「リオネル……彼女は本気だ」


「ママー!」


コマドリの砂糖菓子を手に、泣き叫ぶリオン。

その細い首筋から、一筋の血が流れ落ちた。


「やめろ! もしリオンに何かあったら、容赦しない!」


レオンハルトに後ろから抱きかかえられたまま、僕は継母をにらみつける。


「おやおや、あんなに脅えてた坊やがねぇ……リオネル、ずいぶん生意気になったじゃないか!」


継母がすごむ。

だが、僕は負けるわけにはいかない。

互いのにらみ合いが続く。


「フェルナー法務官、私たちを逃がしてくれ。そうすればリオンは傷つけない。彼はレオンハルトとリオネルの息子だ。君も気づいていたろう」


「ヴォルン院長! なんと卑怯な……」


フェルナー法務官が困惑しながら答える。

握る剣の先が震えだす。

その様子を見たヴォルン院長が、呪文を唱え始めた。


「レオンハルト、移転魔法だ。彼らは隣国に逃げようとしている」


「本当か……? だが、リオンを人質に取られた私たちには……」


このまま黙って、ヴォルン院長と継母がリオンを連れて逃げるのを見ているしかないのか。


「この子がどうなってもいいのかい! 私たちの罪は、そこに転がっている末の王太子が償えばいい。この男は色恋に長けているだけの能無しだ。武器を横流しした金を散財して……私たちが使う方がよっぽど有意義だったわ」


継母が勝手な言い分を並べ立てる。

そうだ。彼女は昔からこういう人間だった。


過去の出来事が走馬灯のように胸を締めつける。

背筋がゾッとし、立っていられない。

レオンハルトに支えられながら、必死でトラウマと闘う。


『ヒュッ…パシッ』


怖ろしいムチの音。

そのあとに響く、扉が閉まる重低音。

耳の奥で反響し、僕の体を押さえつける。


「はぁ……はぁ……」


「リオネル、大丈夫か」


「レオンハルト……うん」


その瞬間、目の前に真白な空間が出現した。

ヴォルン院長は呪文を唱えるのをやめ、継母の手を引いて中へ入ろうとする。


「やっと転移の扉が開いた。さあ、すぐに行こう。私たちの娘たちが中で待っている。子どもは置いていけ」


「いやよ! 大事な人質よ。隣国へ行っても利用できるわ」


「……わかった。君さえいれば、私はしあわせだ」


ヴォルン院長と継母が、リオンを抱えたまま白い空間へ入っていく。


「リオン! 二人とも、待てー!」


「リオネル!」


僕はレオンハルトの手を振りほどき、リオンとヴォルン院長、そして継母を呑み込んでいく異空間へ飛び込んだ。


「リオネル……リオネルーっ!」


背後でレオンハルトの絶叫が響く。


だが、僕はひるまない。

継母の背中を追い、真っ白な霧に包まれた異空間を全力で駆け抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。