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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第11章 国境沿いの軍部に潜む罠

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第64話 忍び寄る気配

「リオネル、安心したまえ。別院はすでに憲兵たちが包囲しているはずだ。首都セラフィオンにも使いを送ってある」


「えっ? ヴォルン院長……い、いつのまに」


魔法を使ったのだろうか。

だとしたら、かなりの使い手だ。


偽物のノルディア領主が言っていた、ヴォルン院長が高度な魔法使いだという説は――本当だったのだろうか。頭が混乱してくる。


「当初から、こちらで行われている会議が大詰めになったら、別院を包囲する予定だったのだ。首都からも応援が来るはずだ。

さあさあ、長旅で疲れただろう。リオネルは少し休んだほうがいい。部屋を用意させる。そちらに移動しろ。レオンハルトは会議に出席してくれ」


なんだ、最初から綿密な計画が組まれていたのか。

僕は胸を撫でおろした。


「わかりました。リオネル、リオンの件はヴォルン院長にお任せして、少し休むといい。会議が終わったら、夜通し馬を飛ばして別院へ戻ろう」


「うん。レオンハルト、わかった。そうしよう」


レオンハルトはヴォルン院長とともに会議の場へ向かった。

僕は憲兵に案内され、一階の角部屋へ向かう。


「こちらです」


「どうもありがとう」


憲兵はすぐに戻っていった。

僕は目の前の扉を開け、中へ入る。

窓際の長椅子へ向かうと、安心したせいか疲れがどっと押し寄せてきた。


地下牢に監禁されていたレオンハルトは、僕以上に疲れているだろう。

リオンは元気でいるのか。アーロンのことだから、傷つけたりはしないと思うが――。

レオンハルトとリオンのことを案じながら、長椅子に腰を下ろした。


「ぅ……うっ……」


とたんに、覚えのある息苦しさに襲われる。

この匂いは――。


「……っ!」


思わず天井を見上げる。

長椅子の真上、高い天井から大量の薬草の束が吊り下げられていた。

そこから発散する、独特で強烈な香り。


「発情促進魔法……!」


僕はすぐに長椅子から飛びすさり、短い呪文を唱えた。

魔法の発動が消える。


「はぁ……はぁ……な、なんで、ここに……?」


苦しさに、その場にうずくまる。

薬草からの発情促進の効果は消えたが、少なからず魔術を吸ってしまった僕の体は思うように動かない。


「早く……ここを出ないと……」


這うように扉へ向かった。


コツ、コツ、コツ、コツ――。


「はぁ……っ……ぁ……」


誰かがこちらへ歩いてくる。


カチャッ。


扉が静かに開いた。


「やっと……会えた」


「……っ!」


長い金髪に青い瞳――。

目の前に、末の王太子が現れた。

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