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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第11章 国境沿いの軍部に潜む罠

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第63話 暴かれる虚像、揺らぐ信頼

「唐突に、何の話だ? 私とリオネルの継母の家族が、真夜中に密会? ここでか? レオンハルト、いったい何を言いだすのだ……わかったぞ。君たちは、アーロンの魔術に掛かっているに違いない」


「アーロン? ヴォルン院長……アーロンが、なぜそのようなことを?」


レオンハルトがヴォルン院長に詰め寄る。


「四年前の財務監査報告書が魔法で改ざんされていた件……私は最初から、アーロンが怪しいと感じていた。だから、あえて彼に担当させたのだ。国一番の魔法使いであるアーロンが、すぐに解除できない魔法などあるはずがない。おかしいと思わないか?」


ヴォルン院長が馬車の中で僕に話した内容と同じ疑問を、レオンハルトに投げかけた。


「時間をかけた魔法なので、すぐには解けないと説明していたじゃないですか」


「レオンハルトはアーロンの親友だ。だから、彼を見る目が曇っている。もういちど訊く。アーロンが簡単な魔法を解けないのはおかしくないか?」


「そ、それは……っ!」


ヴォルン院長の説明に、レオンハルトは反論できない。


「リオンは君たちの子供か? 二人によく似ている。誰が見てもすぐにわかる。アーロンも気づいたはずだ」


「では、リオンは……私たちの息子は」


「おそらく、魔法で私に変装したアーロンが誘拐したのだろう」


僕とレオンハルトは、あまりの展開に言葉を失った。


「ヴォルン院長! だとしたら、リオンは今どこにいるのですか」


レオンハルトが訊いた。


「それはわからない。だが、アーロンは怪しい。彼は隣国へ魔法の修行に行っていた。そのとき、隣国のスパイになったのだろう」


「しかし、ヴォルン院長! 私たちは今日、別院で領主と一緒でした。そしてさきほど、この部屋の窓から顔を出した領主を見ました。アーロンが変装していたとしても、離れた場所で同じ人物が存在できるわけがありません」


「まだわからないのか? アーロンはおそらく……馬車でリオンを誘拐し、その直後にノルディア領主になりすまし、君たちをたばかったのだ。リオンは別院の中にいる可能性が高いぞ。人質としてな」


「そんな……リオン……」


ヴォルン院長の説明を聞き、僕は絶望的な気持ちになった。

レオンハルトは、アーロンにずっと騙されていたのだろうか。

レオンハルトに従い、こんなところまで来てしまったことを、僕は激しく後悔していた。


「レオンハルト、僕はリオンを捜して別院に戻る!」


「リオネル、待ってくれ。アーロンが……とても信じられない……」


踵を返し部屋を出ようとした僕を、レオンハルトが抱きとめた。


「現実を受け入れられないのはよくわかる。私も最初は信じられなかった」


動揺する僕らのうしろで、ヴォルン院長が話し出す。


「レオンハルトが……私とリオネルの継母家族が会っていた姿を見たというのも、アーロンに見せられたまやかしだろう。彼はここ一か月ほど、まともに通勤していなかった。

今日の会議は“隣国のスパイについて”、秘密裏に急遽、開かれた。ほぼアーロンで間違いないだろう。彼は不正に入手した武器を隣国に横流ししていた。その件を不問にすることで、隣国からアーロンの名を聞きだす予定だ」


呆然とするレオンハルト。

無理もない。長年の友情が壊れようとしているのだ。


だが、それよりも――リオンが心配でならない。


どうか……無事でいてくれ。

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