第59話 告白の先にあるもの
「で、では、ヴォルン院長がリオンを……?」
「安心しろ。リオンは人質だ。丁寧に扱われるはずだ。我々はすぐに国境へ向かおう。レオンハルトはリオネルと馬で行け」
「はい!」
愕然とする僕の手を引き、レオンハルトが歩き出した。
「あ、あのっ、待って!」
僕は歩みを止め、ノルディア領主アーヴィン・ロウを振り返った。
「リオンが息子だと……どうして、わかったんですか?」
「……あの子は君たちにそっくりだ。気づいていないのはレオンハルトくらいだろう」
「えっ? 今、なんと? リオネル……どういうことだ。まさかリオンは?」
レオンハルトが僕に向き直り、信じられないという表情を浮かべる。
「教会担当の監査官であるカーヴェル副院長がこの四年間、教会に従事していたリオネルと、わざと距離を取っていた理由はそれだ。彼女はリオネルの元夫レオンハルトの親戚の、元婚約者だ。リオネルと懇意にして不正を疑われるのを嫌ったのだろう。
だがカーヴェル副院長は、リオネルのことを常に気に掛けていたはずだ。とつぜん現れたリオンという孤児の事情を察していたのだろう。だから今回、孤児院の事業に力を貸すことにしたんじゃないのか。リオンを見たら、なおさらだ」
「……っ!」
アーヴィン・ロウがカーヴェル副院長の想いを推察した。
彼の推測は、おそらく当たっている――。
なんてことだ。僕とレオンハルトだけが気づいていなかったなんて。
では、アーロンも?
わざわざリオンの髪と目の色を変えたのに――。
隠そうとした努力がまったく意味をなしていなかったことに、愕然とする。
ルクス神学院では一番だったくせに、なんてまぬけな顛末なんだろう。
心の中で、自分自身を叱咤する。
「リオネル……本当に? リオンは私の……!」
レオンハルトが僕の両肩をつかみ、問いただす。
もう言い逃れはできない。
僕は小さく息を吐き、レオンハルトを見上げた。
「本当だ。リオンは……僕とレオンハルトの子供だ。離縁してすぐに妊娠がわかった。勝手に産んで……ごめんなさい」
「なにを言うんだ! 私は……おぉっ……リオネル! どうもありがとう。人生で、こんなにうれしいことはない……。一人で産んだのか? 私がもっとしっかりしていれば……リオネル、本当に申し訳なかった。これからは、君と息子のリオン、三人を大事にして、一緒に暮らしていきたい」
「レオンハルト……」
レオンハルトが僕を抱きしめた。
このような状況でなければ、心からうれしい。
だけど、僕はさきほどレオンハルトから衝撃的な告白を受けたばかりだ。
それに、ヴォルン院長の話がすべて嘘だとも思えない。
僕はどうしたら――。
うれし涙を流すレオンハルトとは対照的に、僕の心の中に嵐が吹き荒れていた。




