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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第10章 レオンハルトへの疑惑

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第54話 連行の朝、崩れゆく日常

ドンッ、ドンッ、ドンッ!


「レオンハルト・ヴァルター! 謀反の容疑で連行する!」


「……っ!」


レオンハルトが帰宅してすぐ、リオンを交えた三人で食事をしている最中、家の扉が激しく叩かれた。

気づけば、家は憲兵たちに包囲されていた。


「い、いつの間に……!」


僕は急いでリオンを抱き上げる。


「リオネル! リオンと一緒に二階へ隠れろ。私が連行されてしばらくしたら、神父さまのところへ行け。今いちばん信用できるのは、あの方だけだ。教会にいれば、末の王太子も手出しできないはずだ」


「……わかりました」


レオンハルトは拘束される覚悟なのだ。

悲しみと絶望が一気に押し寄せてくる。


不安と恐怖が交錯する中、僕はリオンを抱いたまま静かに二階へ避難した。

扉を叩く音は止まらない。

僕が二階の寝室へ入ったのと同時に、レオンハルトが静かに扉を開ける気配がした。


ダダダダーッ――。

大勢の憲兵たちが雪崩れ込む音が響く。


僕はリオンを抱きしめたまま、寝室のクローゼットの中で恐怖に身を縮めた。


大声でレオンハルトの罪状が読み上げられる。

レオンハルトはすぐに連れ去られた。

彼らは全員、歩いてこの家に来たようだ。

行進していく音が遠ざかっていく。


入ってきたときと同じぐらい唐突に、家の中が静まりかえった。


「…………」


クローゼットの中でリオンを抱きしめたまま、僕は震えていた。

悲しみと恐怖で、しばらく動けなかった。


「ママ……?」


「リオン……ごめんね。また……教会へ行くよ」


リオンの呼びかけで我にかえった。

彼を腕の中からおろし、立ち上がる。


「うん……わかった」


リオンはすぐに異変を察したようだ。

例のコマドリの砂糖菓子だけを握りしめ、素直に僕についてくる。

二人で一階へ下り、外の様子をうかがいながら扉を開けた。


「……よかった。誰も見張っていない」


家の外には誰もいなかった。

目的はレオンハルトだけだったようだ。


僕はリオンの手を引き、誰にも見つからないよう裏道を通って教会へ向かった。

胸の中は不安でいっぱいだ。


「レオンハルト……どうか無事でいて。神さま……どうか彼を助けてください」


祈りながら、リオンと二人で慎重に歩みを進めた。


***


教会に着くと、僕とリオンは神父さまに事情を話し、かくまってもらった。


「レオンハルトさまほど清廉潔白な役人はおられない。なにかの間違いだ。神に祈りながら、帰りを待ちましょう」


「……はい」


当初、カーヴェル副院長が言った言葉――


『王家が分裂を始めた今、誰も信用できないわよ。私たちも例外じゃないわ』


――が、現実になってしまった。


「うぅ……」


激しい悪寒が走る。


「ママ……?」


「リオン、大丈夫だよ」


不安そうに見上げるリオンをしっかりと抱きしめる。


だけど、僕の心に射した暗い影を振り払うことは――どうしてもできなかった。

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