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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第9章 揺らぐ真実と疑惑

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第53話 帰還と暴かれた陰謀

レオンハルトは翌日の、まだ暗いうちに馬にまたがり、首都セラフィオンへ向けて出発した。

僕は誰にも気づかれないよう家の灯りを消し、レオンハルトが遠ざかるまで、二階の窓からリオンと一緒に見送った。


「レオンハルト……どうか無事に帰ってきて。そして……三人で、また一緒に暮らそう」


それからの一週間、僕は神に、レオンハルトのすみやかな帰還を祈り続けた。


***


「リオネル、リオン! ただいま!」


「レオンハルト!」


「パパー!」


僕の心配をよそに、レオンハルトは何事もなかったかのように、すんなりと北方領ノルディアへ帰ってきた。


「レオンハルト……よかった……!」


リオンとともにレオンハルトに抱きつき、彼の無事を心から喜んだ。


「リオネル、心配をかけてすまない。やはり、私の推測は合っていたようだ。セラフィオンのグレイヴ王国監査院長は潔白だった」


「えっ! だって、彼は……」


「王太子派の人間だ。しかし彼は、末の王太子を諫める立場に徹していた。王命で周囲の人間たちに裏を取ったので、確実な話だ。本人に会って直接、確かめることもできた」


「だけど、四年前の財務監査報告書を改ざんした張本人でしょ?」


「そこが間違っていたようだ。アーロンが言っていただろう? あの報告書には、あらかじめ魔法が掛けられていたと」


「じゃあ、グレイヴ院長の筆跡はインチキだったの?」


「そうだ。そして、ヴォルン院長は首都セラフィオンへは行っていなかった」


「えっ……では、レオンハルトが国境沿いの軍部施設で見たのは……」


「ヴォルン院長で間違いないだろう」


レオンハルトのハシバミ色の瞳が大きく見開かれる。

確信があるのだと分かった。


「だけど、ヴォルン院長はレオンハルトの父上とは若い頃から親友で、仇をとるって……」


「その言葉に振り回されてきた」


「もしかして……四年前の汚職事件は、僕の父上が本当に犯人だった?」


もしそうなら、レオンハルトは何のために――。

目の前が真っ暗になり、思わずレオンハルトから距離をとる。


「……っ!」


しかしレオンハルトは僕を引き寄せ、耳元で静かにささやく。


「それは絶対にない。真犯人はヴォルン院長で間違いない。私が国境沿いの軍部施設へ監視に行ったあの夜……ヴォルン院長は隣国の役人たちと会っていた」


「それって……!」


「そうだ。クーデターを企んでいる。そのための、四年前の財務監査報告書の改ざんだ。架空の教会へ資金を流し、その金で末の王太子を抱き込み首謀者に仕立て上げた。

不正に買い込んだ北方領ノルディアの武器はおそらく……すべて隣国に売ったのだろう」


「隣国と共謀してるの?」


「隣国の一部の役人たちと繋がっているように見えた。このことを王に直接、報告した。私が首都セラフィオンに突然現れたから、王は驚いていた。しかし、私の話をすべて信用してくれた。今、極秘裏に調査が行われているはずだ。

リオネル、君たちに危険は何もなかったか」


「僕とリオンは大丈夫。家で毎日、大人しくしてたから」


「それはよかった。私も今回の帰京は、誰にも気づかれていなかったと思うが……」


「…………」


再会を喜んだのも束の間、突きつけられた残酷な真実に、僕はレオンハルトの腕の中でしばらく呆然と立ち尽くしていた。

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