第52話 揺らぐ真実と別れの前夜
穏やかな日々が過ぎていく。
レオンハルトは毎日、リオンに騎士の訓練をつけてから仕事へ向かう。
僕は家事全般をこなし、レオンハルトの帰宅とともに夕飯が始まり、三人で本物の家族のように過ごした。
そんなある日。
「リオネル、内密に首都セラフィオンへ向かう」
「……っ!」
レオンハルトが突然、そう告げた。
真剣な瞳の色が、それが重大な任務であることを物語っていた。
「私が留守の間、十分に注意して過ごしてくれ。できれば、この家を出ないほうがいい。メアリーに、ときどき様子を見に来てもらう」
「例の、四年前の財務監査報告書の調査に行くの? ヴォルン院長がわざわざセラフィオンへ向かって、調べてきたんじゃなかった? 僕たちがちょうど祭りに出掛けたころだったよね」
「実は……私はあの夜、こっそり向かった国境線付近の軍部の建物の中へ入っていくヴォルン院長を見たんだ」
「えっ?」
「私も信じられなかった。彼はそこで、ある人物たちと会っていた。建物の中からその人たちが出てきて、ヴォルン院長と抱き合っていた。我が目を疑ったよ。院長はともかく、その人たちは数年前に一度見かけただけだったから」
「確かなの?」
「月夜だったから確実だ。それに、私は翌日の晩も監視に向かっただろ? 彼らはまだそこにいた。外に出て、皆で散歩を楽しんでいた」
「…………」
レオンハルトは、ヴォルン院長と会っていた人物たちの名前を明かさなかった。
僕に知らせたくない人たちなのだろう。だから、あえて聞かなかった。
だけど、胸の奥にいやな予感が広がった。
「末の王太子一行はまだ離宮にいる。リオネルのことを引き続き捜しているそうだ。気をつけてくれ」
「うん。細心の注意を払って生活するよ。レオンハルト……気をつけて」
「北方領ノルディアでは、私たちは間違った情報を与えられていたようだ。四年前の財務監査報告書も、魔法で最初から改ざんされていただろう? あのとき気づくべきだった……。王自身も勘違いさせられている。それを確認に行く」
いつになく弱気なレオンハルト。
この数週間で、祭りの夜に見た事実の裏が取れたのだろうか。
僕は思わず、彼を強く抱きしめていた。
「僕が……いる。リオンも。レオンハルトに、どこまでもついていくよ。だから……無事に帰ってきて」
「リオネル……」
「……っ!」
レオンハルトは僕を抱き寄せ、情熱的に口づけた。
僕もそのキスに応える。
レオンハルトと初めて――心が深く結びついたと実感した。




