第49話 祭りの灯りと別れの予感
「わあああーっ!」
馬車が祭り会場の町に到着すると、待っていましたと言わんばかりに、リオンが勢いよく飛び出していった。
「リオンは、こういう華やかな場所は初めてだもんね。あっ、こら! 走ったら危ないよ」
リオンに続いて馬車を降りた僕とレオンハルト。
祭りの華やかさに、思わず目を見張った。
にぎやかな音楽、色とりどりの衣装をまとった人々。
ダンスを踊る人々、舞台の上で手品を披露するピエロ。
屋台には湯気を立てるおいしそうな料理が並び、
紙や布で飾られた広場は、まるで夢のようにきらびやかだ。
どれもこれもが明るく楽しげで、リオンの興味を強く引いた。
きゃーきゃーと歓声を上げ、転げ回って喜んでいる。
「私が抱いていこう。これだけ人が多いと迷子になる。リオネルも」
「……っ!」
レオンハルトはリオンを肩車し、さらに僕の手を取った。
「ぁ、あの……」
「大丈夫。このような辺鄙な田舎町に知り合いはいない。いても、この前のように自然にふるまえばいい」
「はい……」
僕はレオンハルトに言われるまま、リオンと一緒に祭りを楽しんだ。
リオンは初めて見るピエロに驚き、風船をもらって大喜び。
おいしい菓子パンを食べ、ベリーのジュースに舌鼓を打つ。
とりわけ嬉しそうだったのは、レオンハルトと旅行に来られたことだ。
“パパ”“パパ”と抱きつき、甘えっぱなしだった。
「フフ……リオンはすっかり祭りが気に入ったみたいだね」
「リオネル……私は森の向こうにある国境を見てくる。君はここで、リオンとリンゴのパイを食べていてくれ」
「そう……気をつけてね」
レオンハルトは突然そう告げると、町外れの深い森へ向かって歩き出した。
酔っ払いが酔い覚ましに行くような、ごく自然な足取りで。
無事に戻ってきますように――。
僕は神に祈った。
「ママー! パパは?」
「……ちょっとお散歩してくるって。もっとパイを食べようか」
「うん!」
僕とリオンは野外に設置されたテーブルに座り、祭りの食事の続きを始めた。
レオンハルトと接するようになってから、リオンはとても元気になった。
彼に騎士としての訓練を受けるたび、身長も体重もぐんぐん伸びている。
最近では、たくましいほどだ。
これでオメガだなんて、とてもごまかせないほど成長が著しい。
「いずれアルファだとバレるかも……そのときは、レオンハルトにリオンを託して、僕は……」
それが愛する息子のためだ。覚悟していた。
「今回の事件がはっきりしたら、そのときこそ」
レオンハルトと永遠にお別れする。
身を切るような苦しい選択を、この先、僕は迎えることになるのだろう。




