第48話 王太子の影と逃避行
「王太子が僕を捜している?」
「ああ、そうだ。銀の髪に水色の瞳を持つ美しい神父見習い……リオネル以外にいないだろう。色を変えておいて本当によかった」
帰ってきたレオンハルトの口から、思いもよらない情報がもたらされた。
「でも、レオンハルト、どうして? 僕はあの夜、王太子に容姿は見られてないよ」
「だとしたら、舞踏会場か回廊でリオネルを見初めたのだろう」
「ぇぇっ……」
青天の霹靂だった。
あの夜、目撃した、末の王太子の冷酷な目付きと声音――思い出しただけで体が震える。
「リオネル、大丈夫だ。私がいる。絶対に君を守り抜く」
「レオンハルト……」
レオンハルトの手が、そっと僕の手に重なる。
体温が上がり、胸がドキドキしてくる。
ハシバミ色の瞳が僕をとらえ、目が離せなくなる。
「発情促進魔法が仕掛けられた部屋……あれはリオネルを狙ったものだったのだろう」
「でも、たまたま僕があの部屋に入っただけで」
「ヴォルン院長に頼まれたと言ったな。院長に確認してみたら、勘違いだったと謝ってきた。その直前にも、同じようなことがあったな」
「ヴォルン院長はあの夜、そうとう混乱していたみたいだね」
「敵を前にして、さすがの院長もあわててしまったのか……しかし、彼は軍部専門の監査官として若い頃から名を馳せてきた。仕事に関しては冷静沈着で有名だ。これしきのことで取り乱したりするかな」
「でも、ヴォルン院長もお年ですし」
「報告書の調査も時間が掛かり過ぎているように感じる……そうだ! 明日、国境近くの町で祭りがある。ピクニックで行った場所、軍部の施設のすぐそばだ。リオンを連れて泊りがけの旅行に行こう。王太子避けもできるしな」
「ぇっ……いいのですか。仕事は?」
「あの夜から長期の休暇をいただいている。ときどき職場に顔を見せてはいるがな。では、決定だ。馬車を手配してくる」
「ぁっ、レオンハルト!」
僕の返事を待たず、レオンハルトは行ってしまった。
「ほんとに……いいんだろうか」
しかしレオンハルトの決定にはあらがえず、僕はその日のうちに旅の支度を整え、翌日、国境目指して三人で出発した。




