第47話 守られる理由、揺らぐ心
僕は目と髪を魔法で黒く変色させ、レオンハルトの愛人親子として、リオンとともに彼の家に居座ることになった。
申し訳ないことに、アーロンはフェルナー法務官のいる寮へ移り住んでしまった。
食事や身の回りの世話は、すべてメアリーがしてくれる。
「僕のやることは、なにかないの?」
心身ともに落ち着いた頃、僕はレオンハルトに尋ねた。
「リオネルは、しばらくここでじっとしていてくれ。私は、舞踏会が行われた離宮の小部屋に、誰が発情促進魔法を仕込んだのか捜査中だ。私たちを見て逃げていった人影についてもだ。いくら打診しても調査してくれないから、私が自ら調べている最中だ」
「レオンハルトは、発情促進魔法にすぐに気づいたの?」
「あ、ああ……あの魔法を解除したのはリオネルか」
「うん。どこかで嗅いだことがある気がして、すぐにわかった。誰でもできる解除方法だし」
「そ、そうか」
レオンハルトがあわてている。どうしたんだろう。
「それと……あの魔法を仕込んだのは、たぶん王太子だ。あの部屋に男が二人入ってきたとき、片方がそう呼ばれていた」
「なんだって! では、やはり……」
レオンハルトが深刻な顔つきになった。
「王太子に嫌疑が掛かっているの?」
「いいや。だが……上がこれだけ庇っている相手だ。しかも、回廊の先にあったのは末の王太子が滞在している宮殿……リオネル、怖かっただろう。私が常にそばにいる。安心してくれ」
ハシバミ色の瞳が僕をまっすぐに見つめる。
心配してくれている気持ちが伝わってくる。
「だけど、レオンハルトには大切な仕事が」
「リオネルのほうが大事だ。四年前は助けられなかった。でも、今なら……」
「……っ!」
その先を聞くのが怖くて、目を伏せた。
「あ、あのっ! レオンハルトが行った調査の結果は?」
話を逸らす。
「……ヴォルン院長からは、まだ返事がない。首都セラフィオン王国監査院グレイヴ院長の筆跡の件もまだだ。アーロンは、四年前の報告書の魔法が解けずにいる」
「そうなの。時間が掛かるんだね」
「アーロンはともかく、ヴォルン院長には再度確認をとってみるよ。舞踏会の件に掛かりすぎて忘れていた。思い出させてくれてありがとう」
そう言って、レオンハルトはすぐに出掛けていった。
「ふううーっ……」
アーロンという婚約者がいるのに――。
レオンハルトの真意が、まるでわからない。
しかし、カーヴェル副院長との仲が本当だとしたら――。
レオンハルトは他のアルファと同じように、同時に何人も愛せる男なのだろうか。
「それでも、僕は彼が……」
胸の痛みとともに、レオンハルトをどれほど愛しているのか――
その恋心の深さに、僕は驚かされていた。




