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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第7章 月影に揺らぐ運命

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第43話 月下の抱擁

「レオン……ハルト?」


「この匂い……解除されているみたいだが……」


「……っ!」


レオンハルトは僕のそばにひざまずくと、ためらいもなく抱き上げた。


「メアリー! すぐにここを出よう」


「はい!」


「はあ、はあ……」


「リオネル、しっかり。大丈夫だ。私がいる」


レオンハルトは僕を抱いたまま部屋を飛び出した。

発情促進魔法の匂いから遠ざかるにつれ、体が少し楽になっていく。

冷たく澄んだ空気が、ほてった体に心地よかった。


「私はリオネルと帰る。アーロンに、発情促進魔法が使われていたと伝えてくれ」


「わかりました。お気をつけて」


メアリーは舞踏会場の方角へ駆けていった。

レオンハルトは僕を横抱きにしたまま裏庭へ降り立ち、そのまま歩き出す。


「はあ、はあっ……レオンハルト、だめだよ。アーロンが……」


少し落ち着いたことで、ようやく声が出た。


「大丈夫だ。息を吸って……落ち着くんだ」


「はああ……っ」


レオンハルトは僕をしっかり抱きしめたまま、馬が繋がれている場所へ向かった。


「鞍が付いている馬を借りていこう。あとはアーロンたちが誤魔化してくれる」


「はあ、はあ……いけないよ。舞踏会に戻って。アーロンが……密命が……」


「こんな状態の君を放っておけるものか。安心して。私に……すべてゆだねるんだ。あのときみたいに」


「……っ!」


月光の下、ハシバミ色の瞳が熱を帯びて輝いた。


僕はあの日の夢を見ているのだろうか。

あの、熱く燃えた二人の始まりの日の幻。


体の奥底で、ブルリと何かが震えた。

ふつふつと湧き上がる、眠っていた何か――。


真っ白になっていく意識の中で、

キラリと光る恋心が、再び動き出した。

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