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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第7章 月影に揺らぐ運命

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第41話 月影の侵入者

「はあっ……だ、誰だ? ぁっ……」


現れたのはメアリーだった。

舞踏会へ向かって歩いてきたところらしい。助かった。

僕は、彼女が目の前に来た瞬間、声をかけた。


「はあぁーっ……メアリー」


「リオネルさま……ですか?」


メアリーは大きく目を見開き、驚愕の表情を浮かべる。

しかしすぐに、僕が発情していることを悟ったようだ。


「リオネルさま、鍵をかけて部屋の奥に隠れていてください。すぐにレオンハルトさまをお呼びして参ります」


「はあっ……でも、レオンハルトにはアーロンが……」


「大丈夫です。すぐに行って参ります」


メアリーは迷いなく、舞踏会場へ向かって駆けていった。

僕は急いで扉を閉め、鍵をかけると、部屋の奥の暗がり――棚の横へ身を潜めた。


コツ、コツ、コツ、コツ――。


「……っ!」


複数の靴音が近づいてくる。

レオンハルトかと思ったが、音の方向は舞踏会場のある大広間ではなく、メアリーたちメイドの詰め所の方角からしてくる。


しかも、男の靴音――。

僕は息を殺し、緊張で体を強張らせた。


ガガッ!


「鍵が掛かっているぞ」


「この部屋は、中からしか掛けられません」


「では……獲物が掛かったということだな」


「……っ!」


低く残酷な声音。

僕は荒い息が漏れないよう、両手で口を押さえた。


「どうにかして開けろ! 上質なオメガの匂いがプンプンする」


「はい、ただいま!」


ガンッ! ガーンッ!


「ぅっ……」


剣の柄で扉の鍵を叩き壊そうとしている。

全身が汗でびっしょりだ。

このままでは襲われるのは時間の問題。

必死に体を縮め、棚の陰に隠れる。

そんなこと、無意味だとわかっているのに――。


リオンの笑顔が脳裏に浮かぶ。

最悪、もう二度と会えなくなるかもしれない。


ガキンッ! ドンッ!


「王太子さま、開きました」


「しーっ! 名前を呼ぶでない」


「……っ!」


どうしよう。

アーロンが注意しろと言っていた、末の王太子だ。

彼が魔法で罠を仕掛け、オメガを狙っていた――。


「ぅぅっ……」


王家の、それも王太子に襲われたら、生きて帰れるはずがない。

僕は死を覚悟した。


リオン、レオンハルト……ごめんなさい――。


目をつむり、神に祈る。


「フフ……発情の匂いだ。おや? 部屋の奥に誰かいるな」


「わたくしめが連れて参ります」


「待て。かなり弱っているようだ。私が行く。フフフフ……フフ……」


「……っ!」


恐怖で体が凍りつく。

そのとき――突然、風が吹き込み、月光が射し込んだ。


扉の前に立ち塞がったのは、

金色の長い巻き毛と、青い瞳を持つ美丈夫だった。

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