第27話 消えた証拠と青き魔法使い
「ヴォルン院長、おはようございます」
「レオンハルト! たいへんなことになった」
「……っ!」
レオンハルトとともにヴォルン院長の部屋を訪れた僕は、院長のあわてた様子に胸がざわついた。
「どうされたのですか」
「私が首都セラフィオンから持ち出した、四年前の本物の財務監査報告書だが……魔法で改ざん箇所がすべて消えているんだ」
「なんですって!」
「……っ!」
ヴォルン院長は、巨大な机の上に例の立派な冊子を広げた。
「毎朝、欠かさず点検している。今朝、見に行くと……」
「たしかに……筆跡がすべて、リオネルの父親アルヴィオン公爵のものに変化しています。しかも、もとの数値が消え、足された数字に完全に置き換わっている……」
本当だ。どうしよう。
父上の冤罪を晴らす証拠が、全部、消えている。
「かなり高度な魔法だ。魔法院に協力を求めた」
「えっ?」
ヴォルン院長の言葉に、レオンハルトが驚いたように目を見開く。
どうしてだろう。
ザザッ――。
「んっ?」
レオンハルトが素早く身をひるがえし、たくましい腕で僕をかばった。
そのとき、カチャッと音がして、院長室の奥の扉が開く。
「ひどいなー。彼を見せないつもり?」
「アーロン、いるならいると言え」
姿を現したのは、青く長い髪の男。僕たちと同じくらいの年齢で、瞳も同じ青色をしている。
「んっ? 青い髪……ルクス神学院の天才魔法使い?」
「リオネル、知っているのか」
「皆がよく騒いでた。レオンハルトと同じくらい目立つ人物だって」
そういえば、レオンハルトのかたわらにいつもいた生徒だ。
「それは話が早い。初めまして。元の奥さんだよね? 婚約者が許可してくれるなら、リオネルって呼んでもいいかな?」
「……っ!」
今、この男はなんと言った?
では、この魔法使いが――。
アーロンはゆっくりと僕たちに近づいてくる。
その顔立ちは驚くほど美しい。
やはり、彼こそが――。




