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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第5章 証拠なき冤罪

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第26話 婚約者は昔馴染み、らしい

またもやレオンハルトの操る馬に乗り、僕は王国監査院別院へ向かった。


「……あの、みんなが見てるよ。やっぱりまずいんじゃない?」


「リオネルがキレイだから見とれてるだけだ。フードをもっと深く被れ」


真っ白な神父服のフードを、レオンハルトが引っ張って僕の顔を隠す。


「でも……!」


そういうことじゃないんだ。

レオンハルトには婚約者がいる。元妻とのスキャンダルは出世に響く。

首都セラフィオンにこのことが知れたら――。


「心配性だな。ヴォルン院長たちは、リオネルを助手にすることを承知している。それに、君は馬に乗れないだろ?」


「そ、それは……そうだけど。レオンハルトの婚約者が」


「彼のことは気にしなくていいと言ったろ。同僚を職場に送るだけだ。なにが悪い?」


レオンハルトが周囲をねめつけると、皆が真っ赤になって目を逸らした。

町の人々は僕に見とれているんじゃなくて、レオンハルトの勇姿を見ているだけだと思う。


「ん? あれ? レオンハルトの婚約者って……男性?」


「ああ。昔馴染みだ。リオネルも知っているかもな」


「ぇっ?」


僕がレオンハルトの婚約者を知ってる? しかも僕と同じ男――。

複雑な気分だ。てっきり女性だと思っていたから。

異性だったら、あきらめもつくのに。


あれ? でも今、昔馴染みと言った?

だとしたら、レオンハルトがルクス神学院にいた頃、結婚しようとしていた相手かもしれない。


なおさらだ――絶対に、会いたくない。


***


王国監査院別院に到着すると、レオンハルトは僕の腰をつかみ、わざわざ馬から降ろしてくれた。


「あ、あの、自分で降りられるから!」


「つい習慣で……これくらい、いいだろう? 落馬したらたいへんだ」


「だ、だれが落馬なんか……ぁっ」


いや、一度落馬しそうになったんだっけ。

まだ新婚ホヤホヤの頃で、それ以来レオンハルトは、僕が馬に乗るとき、すごく慎重になった。


「あの……送ってくれて、どうもありがとうございました」


「礼なんていいよ。敬語もなしだ。まずはヴォルン院長のところへ行こう。なにか情報が入っているかもしれない」


「うん!」


レオンハルトのあとに続き、僕は王国監査院別院の壮麗な建物の中へ入っていった。

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