第25話 パパと呼ばれた朝
「リオネル、おはよう!」
「おはよう……ございます」
翌朝。早朝の掃除と礼拝を終え、孤児院に顔を出した僕は仰天した。
約束の時間よりずっと早く、レオンハルトが到着していたのだ。
しかも、子供たちと楽しそうに遊んでいる。
子供は好きじゃなかったのでは……?
レオンハルトのいろいろな面が見えて、僕は驚いた。
でも、違う顔を見せる彼が嫌ではない。
むしろ、魅力が増していく。
「レオンハルトは誰のパパなの?」
年長の子が無邪気に尋ねた。
「私は誰のパパでもないよ」
「だったら、僕のお父さんになってよ!」
「ダメー! レオンハルトは僕のパパなの!」
リオンが、とんでもないことを言い出した。
「だって、誰の父親でもないって言ったよ」
「でも、僕だけのパパなのー!」
リオンはレオンハルトに抱きつき、そのまま泣き出してしまった。
「おいおい、どうした?」
レオンハルトはリオンを抱きしめ、背中をやさしく撫でる。
「リオン! こんなこと……いままで言ったことないのに」
僕は慌ててリオンを引き離そうと近づいた。
いままで僕と二人きりで暮らしていたから、大勢の子供の中に入るとわがままを言ってしまうのだろうか。
いまのうちに注意しておかないと――そう思った。
しかし、僕がリオンを受け取ろうとした瞬間、レオンハルトがそれを制した。
「リオネル、いいよ。リオンのパパってことにしておこう」
「でも……」
「皆、リオンより年長だ。かまわないよ。私に似ているようだしな」
「ぇっ……」
ドキリと心臓が跳ねる。
「ノルディア領主アーヴィン・ロウが言ってただろ? 雪狼の店主も家族だと誤解した」
「……レオンハルトが、それでいいなら」
よけいなことを言わないように、それだけを気をつけた。
息子の髪と瞳の色を黒く変えておいて、本当によかったと思う。
リオン本人はけろっとして、またレオンハルトと遊び始めた。
僕のドキドキはおさまらない。
息子であることが、もしもバレたら――。
「あ、あの、すぐに出掛ける準備をします!」
それだけ言うと踵を返し、二人から離れた。
泣きそうだ。
うれしいのか、不安なのか、自分でもわからない。
でも――
レオンハルトといられるしあわせだけは、心の奥でしっかりと感じていた。




