第17話 北国に眠る陰謀
「そ、それは……まずいんじゃないですか。僕は……」
「汚名返上のチャンスだ。うまくいけばアルヴィオン家を復興できる。首都セラフィオンへの復帰も可能だ」
「僕は、このままこの土地で生きていきます」
強く首を横に振り、断る。
僕にはもともと野心などない。
それに、出しゃばればリオンに害が及ぶ可能性がある。それだけは絶対に避けたい。
「リオネルは私よりも優秀だった。その才能を、こんな最北の僻地で埋もれさせるのはもったいない。私が王に直訴して実現した採用だ。だから、これは王令だ。リオネルに断る権利はない」
「……っ!」
レオンハルトの瞳が、有無を言わせぬ光を宿す。
かつての彼は、こんな男だっただろうか。
「しかし……」
「一緒に監査院に来てくれ。皆に紹介する」
「ええっ!」
「リオンも連れていこう。孤児院の実情を訴えるチャンスでもある」
「リオンはだめです!」
「なぜだ? とても人懐っこい性格だ。人がいても泣かないだろう? なあ、リオン?」
「うん! 僕も行きたい! かんさ……」
「王国監査院の別院だ。もともとはこの地に、ルミナリア王国監査院の本部があった。私たちの一族が陥れられた陰謀の中枢かもしれない場所だ」
レオンハルトの瞳が厳しい光を帯びる。
彼はリオンを抱いたまま、僕をじっと見つめた。
「レオンハルト……?」
「リオネル……協力してくれ。私と君、そして私たち一族の未来がかかっている」
「で、では……!」
ハシバミ色の瞳がさらに輝く。
「そうだ。私は四年前、私と、私の妻だったリオネル……両家の一族を陰謀により追いやった者たちを罰すべくやってきた。この北国に証拠があると確信している」
「だけど……いまさら」
レオンハルトは王国監査院で立派に出世した。
貴族の婚約者もいる。
過去は忘れたほうが、彼のためだ。
僕のことも、もう――。
「リオネル……頼む。君の協力が必要だ。二人で悪を暴こう。ルミナリア王国の未来のために!」
「……っ!」
未来は、リオンの世界でもある。
ハシバミ色の瞳に見つめられ、僕は首を縦に振るしかなかった。




