第14話 雪原に生まれた小さな光
「リオネル……では、我が子を孤児として育てるつもりなのか」
「はい……罪人の一族の末裔である僕の子供は、出産と同時に必ず引き離されてしまいます。ですが、秘かに出産し、その後で孤児院に預ければ……いつもそばにいられます」
「そうだな……それしか方法はない。ではリオネル、子供が生まれるまで絶対に人前に出ないように。私たちが全力で君を支える」
「神父さま……ありがとうございます」
涙をこぼしながら、僕は目の前の神父に深く頭を下げた。
***
北方領ノルディアでの生活にようやく慣れ始めた頃、突然、体調不良に見舞われた。
オメガの医者に診てもらったところ、うれしいことに――僕は妊娠していた。
二年間、一度も妊娠できなかった僕が、離婚した途端に子供を授かった。
「これも……運命なのかもしれない」
どうしても我が子と離れたくない僕が考えついたのが、教会の孤児院で育てるという計画だった。
意を決して上司である神父に打ち明けると、彼は僕の意向をすぐに理解し、協力を約束してくれた。
神父もオメガで、この教会はオメガだけで成り立っている。
世間から虐げられているオメガの同胞は、僕にとてもやさしかった。
「僕の赤ちゃん……僕の唯一の希望……」
何もない大地を真っ白な雪が覆い尽くす、凍てつく北国の冬。
絶望のふちにいた僕を、小さな命が救ってくれた。
***
チュリー、チュルチュル、チュリリリ、チュリチュリ――。
おぎゃああーっ!
翌年――コマドリがさえずる中、僕は元気な男の子を出産した。
レオンハルトによく似た、ハシバミ色の髪と瞳を持つ子供だった。
「この色のままでは、父親がすぐに特定されてしまいます。神父さま……子供の髪色と瞳の色を変える魔術をお許しください」
「わかった。そうしなさい」
「ありがとうございます」
僕は息子にリオンと名付け、魔法で黒髪と黒い瞳に外見を変えた。
「ママー……ママー!」
僕だけを求め、抱きつく我が子。
天使のように愛らしい。
「リオン……君は……なんてかわいいんだろう。レオンハルトに……パパに会わせてあげたい」
僕にもレオンハルトにもよく似たリオンは、とても元気で、よく笑う明るい子供だ。
教会の奥にある誰も来ない一室で、二人だけで静かに暮らした。
「でも、これでは……僕の子供時代と何も変わらない。そろそろ、皆の中に入れてあげないと」
リオンと他人になるのは、身を切られるような苦しみだ。
けれど、リオンは何の罪も犯していない。
監禁のような日陰の生活を続けさせるのは、あまりにもかわいそうだ。
将来のことを考えても、教育上よくない。
神父と話し合い、リオンが三歳になる頃、僕は断腸の思いで我が子を手放した。
リオンには、僕が母親だということを絶対に隠すよう、よく言い含めた。
誰にも見られないように子育てをしたので、リオンさえ黙っていれば、僕らが親子だと知る者は神父さまと医師だけだった。
その直後だ。
僕の元夫――レオンハルト・ヴァルターが、婚約者とともに、北の監査官として赴任してきたのは。




