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北の監査官は別れたオメガ妻に未練があるらしい  作者: 茉莉 あまね
第2章 震える手と優しい手

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第10話 新婚の余韻と三か月の寂しさ

レオンハルトは初夜を終えると、早々に北方領ノルディアへ旅立ってしまった。

僕は、ひどく拍子抜けしてしまう。もっと新婚生活を楽しめると思っていたからだ。


しかし、レオンハルトのノルディア行きは、本来の予定よりだいぶ遅らせていたらしい。僕との結婚式があったためだ。


彼は出発ぎりぎりまで僕の手を握り、発情期でもないのに新婚初夜を迎えて恥ずかしさの頂点に達していた僕を、大いに困惑させた。

いつも以上に無口になり、いや、押し黙って夜具の陰に隠れる僕を、彼は根気強く見つめていた。


「ああ……いま思い出しても顔から火が出る。事後に平然と話ができる人間って、どういう神経をしているんだろう」


初夜の翌日、レオンハルトは僕にさまざまなプレゼントを贈ってくれた。

高価な服や装飾品、手鏡やレースの肩掛け、希少な本、ぬいぐるみ、人形まで――ありとあらゆる品が揃っていた。


よくぞ短期間でこれほどの数を、と思ったが、よく考えてみれば、レオンハルトは愛するオメガとの結婚をずっと想定していたのだ。

義父の話では、彼が監査官になったあとに結婚する予定だったらしい。それが二年も早まり、用意していたリストから慌てて選んで購入したのだろう。


「だって僕は……お人形やぬいぐるみで遊ぶような年齢じゃないからね」


この贈り物を受け取るはずだったオメガは、きっとかわいらしい女の子だったに違いない。

クマを模した巨大なぬいぐるみを抱きしめながら、僕は少しだけ嫉妬を覚える。


「だけど、いまは……僕のものだもんね。えっへん」


優越感に浸るなんて、本来ならあるまじき行為だ。

でも今の僕は、新郎がそばにいない寂しさを、たくさんのぬいぐるみや人形で埋めようとしていた。婚約式の舞踏会場から勝手に持ち出したコマドリの砂糖菓子も、枕元に置いてある。


レオンハルトが帰ってくるまで、あと三か月。

おとなしく待っていようと、僕は心に誓った。

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