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6.だれも気づかない(4)
好きなはずのカレーの味が全くしなくて、私は、泣きそうになる。お母さんが心配するから、お姉ちゃんをじっと見つめることもできないのに、先ほどからお姉ちゃんは、すごい勢いでカレーを食べ続けている。
私が怯えた様子なことにいつ日か気づいてしまったらしい、その、怖いもの。お姉ちゃんの中に潜むものは、私の様子に次第に意識を向け始めた。
ちらっと顔を上げる度に、らんらんとしたお姉ちゃんなのにお姉ちゃんじゃない瞳とかち合う。それは、本当に楽し気に輝いていて、ひとみの奥に気色が浮かんでいるようだった。手に取るようにわかる気がする。
この怖いものは、今、私の様子を見て、心のそこから愉快に、楽しんでいるんだ。まるで、おもちゃを手にしてしまった子供みたいに。全くの無邪気な顔をして。私を壊そうとするんだ。
恐ろしい予感に私は、ますます身体を縮めてかたかたと身体を震わせる。もうすでにカレーの味など解らなくなっているけれど、この食卓の歪さにも耐えられなくなり、気持ち悪くなってしまっていて、とてもここにいることが苦痛に思えてきてしまっていた。
お母さんは、いつもいつまでも、お姉ちゃんの異変に気づいてはくれないし、私は、こんなに怖い思いをしいているのに。




