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そろそろと、お姉ちゃんが震える手でスプーンを掴むと、大きくお口を開けてカレーをかちゃかちゃと掻き込む。大層あわてて、でも本当においしそうに夢中になって。小さなご飯粒が飛び跳ねて、カレーが飛び散って。小さな飛沫が飛び散って、何かと思ったら、お姉ちゃんの唾液だった。わたしは、あんまりな光景に、口をあんぐりと空けて、お姉ちゃんの食事の仕方をまじまじと見つめる他ない。
お母さんは、そんなお姉ちゃんの様子を何も思わないのか、特に気にしない態度で、わたしの方にばかり注意をする。
「美鶴、冷めてしまうからぼーっとしないで食べなさい。いつものようにあなたが空想に浸る癖を母さんは何も悪いことだとは思わないわ。それどころか、あなたの長所だと思ってるの。けれどね、美鶴、母さんは、お食事の時くらい、母さんのお料理のことを忘れてもらいたくないのよ。いつものあなたはお食事時だけはそのようなことはないのに、今夜はどうしたの?何か不安なことがあるのなら、母さん何でも相談に乗るわ。だから、ご飯が終わってからお話してほしいの」
とうとう、そんな風にお母さんを心配させてしまった。わたしは、なんと答えてよいか解らなくて、ふるふるとお母さんの言葉に首を振るしかない。




