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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【驚動編】 第1章 争いの中で
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4 ヴァルハラ

 ◇ ◇ ◇


 統一時間11月2日 12時00分。

 戦いの傷跡が残るアリアドネの宙域では、急ピッチで復旧作業が進められていた。

 小型の作業艇が宇宙デブリを運んでいく、その奥では近くの恒星系からのやってきた増援艦隊が宇宙港への入港作業を行っていた。


 一方のミソラたちは、この惑星から離れる準備を完了していた。

 彼女たちを迎えに来た高速輸送艇へシグルドを乗り込ませると、自らも人員輸送用のモジュール区画へ入り、固いシートに座り込む。


「さらばアリアドネ、もう2度と来ないことを祈っているぜ…」


 隣の席に座ったアレックスのつぶやきを聞き終えるか終えないかのうちに、船は超長距離ワープを開始していた。


 窓が白く光り、彼女たちはアリアドネをあとにした。


 ◇ ◇ ◇


【トアース恒星系 トランジットポイント】


 統一時間11月2日 16時15分。

 高速輸送艇は、数度の超長距離ワープを行った後、トアース恒星系へと到着した。

 アルゴナイタイ恒星系での作戦に向けて、部隊の本部へと合流するためである。


 彼女たちは、ここトアース恒星系で本部と合流する手はずになっていた。

 このトアースは昨年開拓船団が初めて通過した、比較的新しい宙域であったが、その重要性は低いと言えた。


 この恒星は数多くの惑星を抱えていたが、そのどれもが人類の植民に適したものではなかった。さらに恒星は不安定であり、表面爆発を繰り返すために恒星風に乗った熱や岩石が、この宙域を通る開拓船を襲ったのだ。

 住むに向かず、通るにも向かずな、旨味のない場所なのである。


 だが、そんな場所であっても比較的過ごしやすい宙域はある。それがこのトランジットポイントであった。

 近くに浮かぶ惑星が恒星からの風や熱を防ぐため、開拓者たちはこの場所で休息を取り、トランジットポイントとして設定したという。


 ミソラたちがこの宙域に訪れた際、周りには艦艇は一隻もいなかった。

 当たり前である、わざわざこんな場所に選んで跳んでくる艦はいない。

 しかし、だからこそ、ミソラたちはこの場所に来るように言われていたのであった。


 ◇ ◇ ◇


 統一時間11月2日 17時00分。

 トランジットポイントに光が走った。

 同時に巨大な艦の反応が、ミソラたちが乗る輸送艇に届けられた。


 迎撃艦母艦ヴァルハラである。

 全長2キロメートルを超すこの巨大艦は、銀河連合が持つ最大の艦艇であった。

 次元振動砲を複数回放つことが可能であり、また、超長距離ワープもインターバルなしで使用可能。さらに、4隻の迎撃艦とドッキングした状態で航行が可能な能力も持っていた。現在、ミソラたちが所属する特務殲闘騎部隊の本部でもある。


 比較対象のない宇宙空間では、物体の大きさを正確に把握することは難しい。

 しかし、この艦に関してはその巨大さから、輸送艇との大きさの違いを容易に認識できた。

 ヴァルハラがワープアウトした瞬間、輸送艇の視界を巨大な壁―が覆ったのである。それはヴァルハラの装甲の一部分であった。


 輸送艇は即座にヴァルハラへと信号を送る。それを受けて、ヴァルハラのハッチが開かれた。

 輸送艇ごと艦内に収容され、ミソラたちの任務は完了した。


 ◇ ◇ ◇


 ヴァルハラはその巨大性を生かして、艦内での工場設備を有している。

 本部に戻ったミソラは、その足で艦の後部にある工場区に訪れていた。


 殲闘騎たちが壁に並んでいる。すべて艦内で作られたシグルドたちであった。

 調整区画、武装区画を超えながら、ミソラは相手の姿を探す。


 そして、工場区の中心、殲闘騎組み立て区で目的の相手を発見した。


「博士」


 ミソラが声をかけると、博士――ルーシー・ノイマンがミソラの方へ振り向く。


「あら、帰ってきていたのね。怪我はなかったかしら?」


「ええ、おかげさまで」


「あと、彼の様子はどうかしら…?」


「そちらも、問題ありません」


「よろしい、後で様子を見に行くわ」


「はい、よろしくお願いします」


 ルーシーは部隊の協力者として、この艦に乗り込んでいた。

 彼女の業務は、銀河連合軍唯一のサンプルであるクロウの研究、そして対宇宙怪獣用の新兵器の開発であった。

 宇宙を縦横無尽に駆け回るという部隊の特性上、彼女はヴァルハラに自らの研究室を開き、そこで研究開発を進めることにしたのであった。


 自分の本拠地で新兵器が作れたとしても、生産して前線に届けるまでに時間がかかる、ならば私が前線で開発をすればいいのではないか、というのが彼女の言い分であった。


「それじゃ、あなたの目的は…またあれを見に来たのかしら?」


 そして現在、ミソラはルーシー主導で進めているあるプロジェクトに関わっていた。


「ええ! 出来上がりが楽しみで」


「まったく、飽きないわね…まぁ、別に構わないけれど」


 力強くうなずくミソラに、苦笑しながらルーシーはホログラムモニターを呼び出し、浮かび上がったパネルを操作する。


 同時に、彼女たちの目の前に一騎の殲闘騎がせり上がってきた。


「組み立ての進捗率は現在80パーセント。さっき、次の作戦については聞いたけど、それまでにならコクピットの移行、その後の調整含めて対応可能よ」


 ルーシーの説明を聞きながら、ミソラは目を輝かせた。

 彼女たちの前に立つのは新しい殲闘騎シグルドⅡであった。


 完成後、ミソラに与えられる、人類最強の殲闘騎である。


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