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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【驚動編】 第1章 争いの中で
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3 第1特務殲闘騎部隊

 ◇ ◇ ◇


 統一時間11月1日 23時30分。


 所々に浮かんだ残骸たちが戦闘の面影を残していたが、アリアドネの海は一応の平穏を取り戻していた。


「ふぅ…終わった終わった…」


 宇宙港に設けられた休憩室に入るやいなやアレックスがソファに倒れ込む。

 彼と共に部屋に入ったカンナが、その姿を見て眉をひそめた。


「アレックス、行儀が悪いわ」


「いいだろー、ここんとこ働きづめだったんだから」


 惑星アリアドネ近郊で発生した宇宙怪獣と人類との戦いは、人類側の勝利で幕を降ろした。


 救援に駆けつけた彼らは、ウミヘビ型が惑星アリアドネに到着する前に、それらを全て仕留めることに成功した。その後も、生存者の救出作業を手伝い、やっと一息つけたのがこの時間なのであった。


「そう言って、カンナだってソファにがっつりダイブしたいとか思ってんだろ?」


「…ワタシはそんなこと、考えてない」


 そんなやりとりをしていると、休憩室の扉が開き、アイン、ツヴァイ、ドライの3人が入室した。

 その手には、殲闘騎パイロットたちへの食事が乗ったトレイが載せられている。


「ご飯をもらってきたわ」


「お、いいねー腹ペコだったんだ!」


 ソファから起き上がったアレックスは、ドライが持つトレイの上から食事が入った包み紙とカップを取り上げる。


「アレックス…ぎょうぎわるい」


「まーまー、小さいことは気にすんなって! あと、持ってきてくれてサンキューな!」


 ドライの指摘を気にせずに、アレックスは包み紙を開き、中に入っていたバーガーを食べ始める。


「んっ、これめっちゃうめーぞ、ドラちゃん、早く食った方が良いぜ!」


「わかってる…」


 ドライたちは、テーブルにトレイを置くと、包み紙を1つずつ取り、食事を始めた。


 ◇ ◇ ◇


「みんな、お疲れさま」


 ミソラが休憩室にやってきたのは、それから10分後のことだった。

 彼女の登場に、パイロットたちは食事の手を止める。


「あー、そのまま食事を続けててけっこうよ。ミーティングはその後にしましょう」


 ミソラは手にもった四角い筐体をテーブルの上に置くと、トレイから最後の包み紙を取った。


「いただきます」


 包み紙を広げて、中のバーガーをほおばるミソラ。

 それに合わせて、他のパイロットたちも食事を再開する。


 ◇ ◇ ◇


 彼女たちが食事を終えたのは、ちょうど日付が変わった頃だった。


「じゃ、ミーティングを始めましょ」


 ミソラのかけ声で、ソファに寝っ転がっていたアレックスがテーブルまでやってくる。

 全員が椅子についたのを確認すると、ミソラは四角い筐体につけられたスイッチを押した。

 筐体に光が灯り、ホログラムのモニターが浮かび上がった。


「今回の戦闘の結果は、各自見てるわね」


 ミソラの確認に、全員が頷く。


「アタシたちの到着で…戦闘には勝利できたけれど、この宙域に配備されていた防衛艦隊の10隻のうち、生き残ったのは旗艦1隻のみ、186騎いた殲闘騎は180騎が喪失、生き残りの6騎も大破という状態よ」


 筐体のホログラムとは別に、空中に浮かび上がったモニターを見ながら、ミソラは苦虫を噛んだような表情をした。


「もしかして、俺たちはしばらくここに滞在しなきゃなんない…とかじゃないよな?」


「今近くの惑星たちから増援艦隊が送られてきているから。その心配はないわ。ただ、艦隊の第一陣が到着する12時間後までは待機する必要があるわね…とは言っても、アタシたちの迎えが来るのもそれぐらいの時間だから予定通りよ」


「オーケー、なら安心だ。次の場所にいけねーなんていうのは、御免被りたいからな」


「自由に動けないのでは、この部隊が存在する意味もないからね。そこはよく考えてるみたいよ」


 ミソラたちは現在、第1特務殲闘騎部隊に所属していた。

 この部隊は、人類の勢力圏内すべてを対象に、強力な宇宙怪獣が出現した場合の対処を行うため、またある宇宙怪獣を討伐するために、半年前に設立された新部隊であった。


 強い権限を持たされたこの部隊は、最新の装備も惜しみなく投入されている。

 彼らがこの宙域に訪れるまでに使用した多段階超長距離ワープ装置もその1つであった。


 この装置によって、殲闘騎単独での超長距離ワープを行った彼らであったが、

 装置にはエネルギーの充填機能はついてきていない。またエネルギー補充には専用の設備が必要であるため、彼らが帰路につくためには迎えの輸送艇が到着するのを待つ必要があった。


「今言ったように、迎えは12時間後、それまではこの部屋か仮眠室で待機して。もし宇宙怪獣が現れたら対処することになるけど…艦隊が来て、迎えが来たら、アタシたちはこの場を離れるわ」


 ミソラの言葉に全員が頷く。

 事務連絡を終えたミソラは、ここでドリンクを一口飲んだ。


「それじゃ、今後のアタシたちの行動について説明するわね。クロウ、準備はいい?」


 ミソラが筐体へと話しかける。


「いつでも大丈夫だ」


 ミソラの問いかけに、筐体から電子音声が流れた。

 筐体は、ミソラのシグルドにいるクロウとの直接通信を行うための装置であった。

 このことに、周りのパイロットたちからリアクションはない。

 それはすでに見慣れた光景になっていたのだった。


 彼の存在は、現在彼らがいる第1特務殲闘騎部隊設立時に、ミソラとその協力者であるルーシー・ノイマン博士の発表によって、彼がこうなったいきさつを含め、部隊内に認知されていた。


 クロウ・シノサカはその意識を、シグルド内部の思考粒子に転写して死亡した。


 この発表を経て、クロウは特務大尉待遇として原隊に復帰し、ミソラが関わる戦闘でのパイロットたちのサポートと、宇宙怪獣の分析を担当することになっていた。


 この発表に、はじめはうろたえたパイロットたちであったが、今では当たり前のものとして扱われていた。


「クロウ、データを出してちょうだい」


 ミソラの言葉に従い、筐体から別のホログラムが浮かび上がる。

 そこには今回の戦闘で戦った宇宙怪獣――ウミヘビ型の映像が映されていた。


「今回の戦闘で、現れたウミヘビ型だが、従来確認されたものよりも強力であったというデータが取れた。個体の強さもそうだが…半年前から確認されている組織的な行動力が格段に上がっている」


 クロウの説明と同時に、次々とデータが映されていく。


「んで、あいつとの関連性はあるのか?」


「ああ、おそらく。今回の行動にもやつが関わってる可能性は高い」


 アレックスの問いに答えながら、クロウはホログラムに宇宙図を映し出した。

 そこにはいくつかの光点が示されている。


「これが最近やつの出現が確認されたポイントだ。未確認のものもあるだろうが…やつが現れた恒星系、その近辺で凶暴化した宇宙怪獣の出現が確認されている」


 光点のうちの1つが、赤く輝いた。

 それはこの場所から1光年離れた箇所に存在する恒星系であった。


「2週間前、ラダマンテュス恒星系でやつの出現が確認されている…開拓船団が襲われて抵抗むなしく全滅…おそらくはこの時になにか影響を与えたんだろう」


「なるほど…じゃあ、こいつの出現ポイント近くで張ってれば、俺たちは凶暴化した宇宙怪獣どもと戦えるってわけだな」


「おそらくは…現状、やつの出現と宇宙怪獣の凶暴化に関連性が見いだせるといって良いからな」


「それで、この次に宇宙怪獣が現れそうなポイントはどこなの?」


「この先のヒュプシプレー恒星系近辺だ。1週間前に、やつが現れてここを通行していた開拓船団を襲っている」


 クロウの言葉と共に宇宙図の1点に光が灯った。

 ここ、テセウス恒星系が発見された後に見つかった恒星系であった。


「じゃあ、ワタシたちが次に行くのは、このヒュプシプレー恒星系の近くにある有人惑星ってことかしら?」


「いいえ、違うわ」


 カンナの問いに対して、クロウの代わりにミソラが答えた。


「ヒュプシプレー恒星系の近くにある有人惑星がある場所は、パルテノス恒星系だけど…そこには別の部隊を向かうことになっている。クロウの分析を経て、アタシたちは本部から別の宙域に向かわせてもらうことになったの」


 ミソラの言葉と共に、筐体に浮かぶ宇宙図に光点が追加された。


「ここは…?」


「アルゴナイタイ恒星系…現在北方開拓船団が最も進出している、最前線の恒星系…次にヤツが現れると予想される場所よ」


 ミソラの言葉を補足するように、宇宙図の光点が順番に光り始める。


「ヤツは比較的大規模な開拓船団を襲う。そしてこの近辺でもっとも大きな船団がいるのが、この宙域なの」


「…なるほど。確かにあいつが現れた宙域の近辺では、凶暴化した宇宙怪獣が現れる。でも、その場にあいつは現れない」


「でも、アタシたちの目的は…ヤツの駆除でしょ? なら、先にヤツが現れるべき場所に張っておくべきだと思うのよ」


 ミソラの説明を聞き、異論を唱える者はいなかった。


「本部に戻り、準備ができ次第、アタシたちはアルゴナイタイの開拓船団に合流するわ。そして、今度こそヤツを…ファブニールを墜とすわよ!」


「了解!」


 ミソラのかけ声に、全員が答える。その声には、それぞれの決意が込められていた。

 それはファブニール――クロウ・シノサカを乗っ取ったバッタ型と呼ばれる宇宙怪獣、その打倒に向けた決意であった。


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