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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【驚動編】 第1章 争いの中で
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2 戦場の支配者

 ◇ ◇ ◇


 ミソラ・アカツキの登場から数秒後、5騎の殲闘騎が戦場に現れた。

 超長距離ワープによる、空間跳躍である。


「こちらカンナ、ワープ完了。こちらはいつでもいけるわ」


「アイン、カンナに同じ」


「ツヴァイも同様」


「同様…」


 カンナ・キサラギ、アイン・ブラウン、ツヴァイ、ドライのブラウン3姉妹。

 そして、アレックス・ジャックマンが搭乗するシグルドたちである。


 彼女たちのシグルドは――ミソラ騎がそうであったように、そのどれもが角張った重装の追加装甲を身につけていた。殲闘騎用の多段階超長距離ワープ装置、その試作品である。


 この装置の開発により、殲闘騎による単独での超長距離ワープを、待機時間なく連続して4回行えるようになっていた。


 ミソラたちは、アリアドネでの戦闘を知り自らの母艦を発進。

 ワープの限界回数4回を使用して、この宙域まで跳んできたのであった。


「こちらアレックス…ちょっとタンマ、気持ちわり…」


 超長距離ワープの連続使用は、体調に影響を与える。

 ミソラの部隊に所属するアレックスは、その影響を受けやすい体質だった。


 彼からの通信を受け取りながらも、ミソラは話を進めることにした。


「こちらミソラ。状況は見ての通りよ。敵はウミヘビ型が24匹。こちらの戦力は、アタシたちと旗艦クレタのみ…」


 ミソラは、かつて巡洋艦スキュロースが浮かんでいた宙域を眺めた。そこにはすでにウミヘビ型の攻撃で鉄屑となりつつある巡洋艦の残骸が浮かんでいた。


「…できるかぎり飛ばしてきたつもりだけど、ここまで減っていたなんて」


「ええ、でも1人でも生き残っていたという状況に感謝しましょ」


 アリアドネ防衛艦隊はその戦力をほぼ無力化されていた。

 しかし、彼女たちが到着するころには、艦隊が壊滅しているという予測がでていた状況であった。一隻でも残っていたというのは、比較的良い結果だったとも言える。


「…アタシはスキュロースの周りにいるヤツらを蹴散らす。まだ、生きてる人間がいるかもしれないしね。カンナはアタシの援護。アインとツヴァイは艦を援護しながら、近づいてくる敵を撃ち落として」


「わかったわ」


「了解」


「…了解」


「…ドライはアレックスと組んで、アリアドネに向かおうとする敵を叩いて。アレックス、もう大丈夫?」


「…ああ、まだちょっと気持ち悪いけど…機体を動かす分には問題ねぇ」


 体調的には万全とは言いがたい、沈んだ声が返ってくる。

 だが、その芯には決意のようなものが込められていた。


「そう、じゃあ頼んだわよ」


「…オーライ」


「全騎、ボトルオフ!」


 ミソラのかけ声と共に、シグルドを覆っていた外装、その胸部の装甲が前方に開く。同時に肩部も上側に開き、内部に格納されていたシグルド本体が装甲の隙間から飛び出した。

 多段階超長距離ワープ装置を取り外したのである。


「全騎、戦闘開始!」


 ミソラのかけ声と共に、6騎の殲闘騎が動き始めた。


 ◇ ◇ ◇


 巡洋艦スキュロースを襲った7匹のウミヘビ型は、艦からの抵抗がなくなると、その頭部に付いた触手でスキュロースの装甲材を食べていた。


 宇宙怪獣の生態系は、未だ不明な点が多い。

 だが、このウミヘビ型と呼ばれる四肢のない不気味な怪物に限っては、鋼材を摂取し、その表皮の硬度を上げる特性を持つことが確認されていた。


 細かく枝分かれした触手の先端が、鋼材をこそぎ落とす。

 鋼材は、他の触手に絡め取られ、ウミヘビ型の口へと入っていく。


 だが、彼らの食事の時間は乱入者によって終わることになる。


 1匹のウミヘビ型の頭部を、3本の鉄杭が貫いた。

 突然の出来事に、頭部を貫かれたウミヘビ型が反応する。


 つられて、他の宇宙怪獣たちも攻撃が来た方向を見るが。

 相手はすでに目の前まで迫っていた。


 光の刃、ミソラ騎のレーザーブレードが振られ、1匹のウミヘビ型が両断される。それが戦いの合図だった。


 体の向きを変えたウミヘビ型たちは、シグルドへと攻撃を開始した。


 シグルドから向かって右側のウミヘビ型2匹の頭部から光線が放たれた。

 さらに、左側のウミヘビ型はその巨体を機体へと向けて突撃させてくる。


 ミソラ騎は、腰をひねって光線を避ける。

 同時に、背面のウェポンボックスからハルバートを取り出すと、突撃してきたウミヘビ型の頭部へと叩き付けた。


 頭部を割られたウミヘビ型は、体をビクンと一度振るわせると動きを止める。

 だが、突撃の慣性までは止まらない。

 シグルドは、ウミヘビ型の頭部へと脚を乗せると、そのまま突撃の勢いを利用して、宇宙怪獣の包囲から離脱した。


 ウミヘビ型の視線が、シグルドへと集中するが。

 その隙に、もう一騎のシグルド――カンナ騎による攻撃が始まる。


 1発、2発、狙撃銃から放たれた極太のレーザーが、ウミヘビ型の胴体を焼く。


 戦闘開始から数秒のうちに、3匹の宇宙怪獣が屠られていた。


 ◇ ◇ ◇


 ミソラは、戦場の支配者となっていた。

 彼女は宇宙怪獣の光線を避け、突撃してくるウミヘビ型にハルバートの刃を叩きつけながら、その突進の衝撃をうまく使って、また次の獲物へと飛びかかっていた。


 その動きに隙はなく、あったとしてもカンナ騎の援護によって、宇宙怪獣たちは攻撃のチャンスを奪われる。


 本来カテゴリー3は、ベテランパイロットが操る複数の殲闘騎によって対等に戦えると言われている強さを持つ。

 事実、ウミヘビ型はアリアドネの防衛艦隊を1騎も残らず撃退していた。


 だが現在、カテゴリー3のウミヘビ型は、ミソラとカンナのコンビによって、ただやられるがままの状態となっていた。


「次、右からウミヘビ型がやってくる。だから、左へ機体を動かして避けてくれ」


 そして、その状況を作り出している存在はミソラ騎の中にいる。


「2秒後、背後から跳んできたウミヘビ型が来る、カンナに援護を」


 その声は、機体の内部から発せられたものだった。

 より正確に言い表すならば、機体に取り込まれたある少年、クロウ・シノサカの意識体から発せられたものだった。


「カンナ!」


「了解」


 ミソラの合図を聞いたカンナの援護射撃によって、ミソラ騎の背後にいたウミヘビ型が消滅する。


「ナイスアシストよ」


「そちらこそ、ナイス指示ね」


 ミソラとカンナは、互いをたたえ合うと、再びウミヘビ型との戦闘を開始した。


「アンタも、よくやったわ」


 戦闘を再開しながら、ミソラの意識がクロウの元へと飛ばされてくる。


「どういたしまして…次、右から光線が飛んでくるぞ」


 クロウは答えながら、指示をする。

 その通りの攻撃が、ミソラ騎を襲った。


 シグルドは、攻撃を難なく交わすと、お返しとばかりにネイルガンを撃ち返す。

 鉄杭が宇宙怪獣の頭に突き刺さり、ウミヘビ型は身をもだえさせた。


 宇宙怪獣は、彼の予想通りに攻撃をしかけてきていた。

 正確には、クロウがシグルドの演算システムを利用することで、宇宙怪獣の攻撃を予測し、それをミソラに伝えていた。


「他の状況はどう?」


 周囲の敵を全て掃討し、ミソラはクロウに問いかけた。


「問題なし。アインとツヴァイは艦を危なげなく守ってる。アレックスたちは4匹と戦ってるけど、5分後には終わらせられるだろ」


 彼らの意思疎通は、ほぼインターバルなく行われていた。

 数ヶ月前から、文字ではなく思考通信を使ってのやりとりを行えるようになっていた。


「よし、じゃあアレックスたちの援護に向かうわよ」


「マジかよ…別に行かなくたって…」


「いいの!」


「はいはい…」


 ミソラの指示を聞きながら、クロウはアレックスたちが戦うウミヘビ型の行動予測を立て始める。

 同時に、ミソラの思考を読み取り、さらにシグルドの機体制御が最適な状態で維持するようコントロールを続けた。


 だんだんと、人間っていう感覚から離れてる気がする…

 演算ユニットがはじき出したデータをにらみ、コクピット内の状況ものぞき、かつレーダー情報も確認するという行為を同時に行いながら、クロウはそんなことを考えていた。


 クロウはつい半年ほど前までは、ただの人間の少年だった。

 だが、殲闘騎に乗っている時に戦死したことでシステムに意識を転写されてしまったのである。


 機体に意識を宿したばかりの頃は、機体制御もままならない状況だったのだが、現在は機体制御を行いながら、機体のシステムを稼働させるまでになっていた。

 よくここまで成長したと嬉しく思う反面、人間には不可能なことをやり続ける自分に複雑な気持ちも抱いていた。


「クロウ、まだアレックスのとこに着くまで時間あるわよね?」


「…クレタの艦長につなげばいいんだな?」


「ええ、スキューロスの中に生き残ってる人間がいるかもしれないから、救命艇を出してもらいたいの」


 だが、それでも彼は機体の中で、機体のシステムの一部としてあり続けることを選んでいた。

 自分――シグルドを操るミソラを死なせないために。


「了解」


「ありがと」


 ミソラの笑顔を見ながら、通信をつなげる。


「艦長、こちら特務殲闘騎部隊のミソラ・アカツキです。お話があります…」


 クロウは演算データを眺める傍ら、彼女の話す姿を見ていた。


 なんでなんだろうなぁ…


 彼は、死ぬまで彼女のことなどただの口うるさい同僚としか思っていなかった。

 だが、現在の彼は、強くミソラのことを信頼していた。

 そして、彼女のために、自分ができることを全てやろうとしていた。


 ミソラ・アカツキ。

 それが自分の肉体を失い、意識だけの存在となったクロウが、唯一失いたくないものなのだった。


作品のご感想お待ちしてます! また、ブクマ登録・評価をいただけると泣いて喜びます。

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