プロローグ
■驚動編 プロローグ
恒星間超長距離ワープ航法の発見により、人類はその勢力を広げ続けていた。
そして今日もまた、新たな惑星が人類のものとなろうとしている。
【テセウス恒星系 第1惑星アリアドネ】
北方宙域開拓船団が、惑星アリアドネを発見したのは統一時間4月29日のことであった。
開拓船から放たれた無人観測艇は、アリアドネの大気圏内へと侵入し、そのデータを集め終えたのが4月30日。
そして現在、統一時間5月1日。
アリアドネが浮かぶ、静かな宇宙の海原に集まった500隻の開拓船から、それは発射された。
環境浄化装置。
直径1メートル程度のカプセル型のこの装置は、惑星の開拓を行う上で欠かせないものであった。
成分分析によって判明した、人類が住む上で障害になる成分を、この装置によって取り払うのである。
環境浄化装置の働きは大きく3段階に分けられる。
1段階目は大気の浄化。
装置はアリアドネの大気圏に入ると、2つに割れ、中の粒子を大気へと拡散させる。粒子は大気中の分子と反応すると、大気中の成分や気温などを人類に適した形へと変化させていく。
2段階目は地上の浄化。
地上へと落下したカプセルは、落下の衝撃により破損すると、急速にその外殻を分解させる。
分解され粉となった外殻は、風に飛ばされていく。
そして、地面に付着すると地上にある毒素の成分を変化させ、また潜在的に脅威となりえる在来の動植物たちも除去していく。
1段階目の大気浄化によって、打撃を受けていた動植物群は、ここでほぼ全滅することになる。
30分もしないうちに、惑星の浄化はその工程の80パーセントを完了させる。
最終段階は、種まきである。
これは比喩でもなく、文字通り植物の種子が蒔かれるという意味だ。
種子は、カプセルの外殻が分解することでその姿を大気に晒す。
第2段階までで、大きく性質を変えた大気によって、種子は発芽し地中に根を伸ばす。
この植物は、最新の遺伝子工学によりデザインされたものだった。
植物は地に根付いた後、急速に成長すると大地深くに残った毒素を吸収し、無害なものへと変化させる。
その後、再び種子を作り、周囲に種子を飛ばし拡散し、枯れる。
このサイクルは1時間という短い間隔で繰り返されていく。
植えられた種子は1世代を経るごとに、その形質を変化させていき、やがて多種多様な地球型植物へと変貌する。
そうして、浄化が始まってから24時間が経つ頃には、惑星アリアドネは立派な地球型惑星へと変化されるのである。
この装置の働きは、開拓船の船橋から確認できるようになっていた。
現在の惑星浄化率は88パーセント…
環境浄化の成功確率99.9パーセント。
船内のコンピューターの予測を見て、開拓船団の船団長は惑星の浄化が成功したことを発表した。
同時に、各開拓船内で歓声があがる。
人類はまた1つ、その居住地を増やしたのである。
開拓船の船員たちが、食堂へと集まっていく。
開拓が無事完了したことを祝って、宴を開くのが宇宙の開拓者たちの習わしだった。
彼らの宴会は、翌朝まで続く。
そうして、その翌日には惑星の開拓を行う100隻の船を残して、さらなる旅へと出るのである。
一時的に数を減らす船団ではあるが、大きな問題はない。
1ヶ月後には開拓を夢見る若者や、過去に発見した惑星の開拓を終えた船員たちが開拓船に乗り、安定化した航路をワープし、この船団に合流する手はずになっているのだ。
結果、彼らはその開拓者精神がつきない限り、宇宙の海原を進み、人類の生存が可能な惑星を作り続けていくことになる。
彼らの開拓は終わることはない。
人類の欲望が、尽きない限り…
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