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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第4章 悲しき戦い
72/126

34 変化

 ◇ ◇ ◇


 ミソラ騎が持つ、レーザーライフルから放たれた粒子が、バッタ型の触手を蒸発させる。

 はじめに放たれた16本の触手は、その数を半分まで減らしていた。


「次!」


 攻防一体に使える触手を失ったことで、バッタ型の守りが薄くなる。

 その隙をついて、ミソラはさらにライフルからレーザーを放った。


 光の粒子は、バッタ型の胴体に直撃するコースを取っていたが、宇宙怪獣の反応がレーダーから消えたことで、宇宙の彼方へと飛んでいく。


 同時に、ミソラのシグルドの背後にバッタ型が現れるが…


「予想済みよ!」


 大振りな触手の攻撃を、ミソラ騎は難なく回避した。

 再び、バッタ型への攻撃のチャンスが生まれるが、シグルドを後退させる。


「わかっちゃいたけど、ストレスがたまるわね…!」


「我慢だ我慢」


 ミソラとクロウがバッタ型と戦う際に取った基本戦術は、ヒットアンドアウェイであった。


 バッタ型が隙を見せた時、もしくは隙ができた時に攻撃をし、ゆっくりとダメージを与えるようにする。


 深追いはしない。確実に体力を削っていく。

 これはもちろん、今までの戦闘の教訓を活かしてのものだった。

 バッタ型にはレーダーから反応を消す能力がある。

 シグルドが危険を承知で攻撃を行ったとしても、姿を消されて避けられ、手痛い反撃を受ける可能性があった。


 また、このような戦法を取る理由として、そもそもシグルドは左腕をほぼ使えない状態で戦っているということも挙げられた。

 触手に貫かれた左腕は、かろうじて動かすことはできたが、武器を持つことなどはできない。また、武器の交換をする間には無防備になってしまう。

 そういった理由から、一気に勝負をしかけるようなことは難しかった。


 だからこそ、確実な戦法を取ることにしたのだ。

 結果として、その判断は今のところは、正しいと言えた。


 シグルドははじめに左腕に攻撃を受けた以外は、バッタ型の攻撃を全て避け、また着実に相手にダメージを与えていた。


「油断するなよ。こっちは一撃でもやられたらアウトなんだからな」


「わかってる!」


 だが、圧倒的にシグルドが優勢というわけでもない。

 ヒットアンドアウェイという戦法上、1回1回で与えられるダメージはそこまで高くはない。一方でバッタ型の攻撃力は高く、攻撃が当たれば一気に流れを持ってかれかねない。

 これまで、ダメージを受けてこなかったシグルドだが、紙一重で攻撃をかわすという場面も何度もあったのだ。


「次!」


 バッタ型と距離を保たせながら、ミソラはシグルドの武器を持ち替えさせる。

 レーザーブレードを握ったシグルドは、機体を反転させると、再びバッタ型へと近づいた。


「アイン!」


 触手がシグルドを迎撃しようとするが、機体に触れる前に爆発する。

 アイン騎が放ったレーザーライフルの弾丸が、直撃したのだ。

 それはあらかじめミソラが指示を出しておいたものだった。


 触手を突破した直後、ミソラの脳内に警告音が流れた。

 回避行動を取ると、バッタ型が放ったレーザーライフルの弾丸が、機体をかすめていった。


 シグルドは、そのまま直進するかと見せかけて、はじめ機体を襲った触手を断ち切り、その場を後にする。

 これで、バッタ型が持つ巨大な触手の本数は7本となった。


「ありがとう!」


「いえ、指示のおかげ」


 ミソラが礼を言うと、アインはいつも通りの態度で返答した。


「それよりも…早く敵を殲滅しましょう」


「ええ…そうね」


 今までの攻撃を通して、クロウは触手の動きの分析を終えていた。

 敵の守りの要である触手は、巨大な分その動きが大振りだった。

 また、その動きにはパターンのようなものもあったため、ここまで数を減らせれば、突破も容易に思われた。


 そろそろ、止めを刺すことを考えるか…

 焦らず、冷静に…


 ミソラがそんなことを考えた時であった。


 ◇ ◇ ◇


 はじめに、変化に気がついたのは、クロウであった。

 彼はシグルドの中で、次の攻撃案を考えるべく、バッタ型の分析を続けていた。


 シグルドβと融合した分、機動力が下がったようだな。


 そう結論づけるクロウである。

 バッタ型は、前回の戦闘と比べても、その動きが鈍くなっていた。


 融合の後、触手を展開して体も大柄になり、体が大柄になったのが原因だろう。

 なにより――原理は不明だが、重量も増しているようだった。


 動きが緩慢になった分、懐には入りやすい。

 レーダーを欺ける時間もわかってきた。

 あとは、どう攻略するかだ…


 そんなことを考えていると、ふとバッタ型が今までにない動きをし始めた。

 触手を、本体の方へと戻し始めたのだ。


 何をするつもりだ…?


 シグルドのレーダーと観測装置を使って、バッタ型の様子を見たクロウは、そこで変化に気がついた。


 ◇ ◇ ◇


「ミソラ、気をつけろ!」


 ミソラが、クロウからのメッセージを読んだのと、バッタ型の変化が始まったのは、ほぼ同時だった。


「…あれは、なによ?」


 メッセージを見た後、バッタ型に視線を戻したミソラは、宇宙怪獣の行動に絶句した。

 バッタ型が、触手を使って自らの胴体を貫いていたのだ。


 触手たちは、バッタ型の胸部につり下がった房の間を狙うようにして、その鋭い先端を胴体に突き刺していく。

 バッタ型は、その事態に口を開き、苦悶の表情を浮かべているようにも見えたが…


「違う、あれは自分を傷つけてるんじゃない!」


 ミソラの元に、クロウからの分析結果が届いた。


「細胞を、再構築しているんだ!」


 すべての触手が、バッタ型の胴体に突き刺さった。

 同時に、触手たちの茎がポンプのように動き出し、本体へと向けて自らの細胞を移動しはじめた。

 はじめ殲闘騎の胴体ほどの太さを持っていた触手たちは、細胞を移動するにつれて、徐々にその直径を細くしていく。やがて、枝のように細くなり、霧散した。


 また、本体の前方にあった特徴的な房も、しぼんでいく。


 そうしてバッタ型、その姿を変貌させた。


 2本の腕に、2本の脚。胴体の先には頭が1つ。

 その姿は、今まで現れたどの宇宙怪獣よりも人間らしい姿をしていた。


 否。

 人間よりも、さらに近い言い方がある。

 積層された装甲、鎧をまとった人間のように見える、その姿はまるで殲闘騎のようであった。


「なによ…これ。こいつ、なんなのよ?」


 ただし、元となったシグルドβの面影は残っていない。


 頭部には二本の角が生え、顔は口が突き出るように飛び出していた。

 口が開かれると、そこには鋭い歯が並んでいる。


 その姿は、西洋の騎士というよりは、鎧を身にまとった龍人のような姿をしていた。

 そう、それは宇宙怪獣が生み出した、まったく新しい殲闘騎の姿であった。



・宇宙怪獣【バッタ型】については、【始動編】6~7話を御覧ください。

・作品のご感想お待ちしてます! また、ブクマ登録・評価をいただけると泣いて喜びます。

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