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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第4章 悲しき戦い
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35 意外な結末

 ◇ ◇ ◇


 殲闘騎へと変化したバッタ型の姿は、異形という他なかった。

 今までのバッタ型は、殲闘騎に寄生したような容姿であった。

 しかし今は、殲闘騎という機械的なものと宇宙怪獣という生物的なものがバランスよく融合したような姿をしていた。


 装甲の上には血管のような文様が浮き出ており、その管の中を赤い光が動き回っていた。

 背中に伸びた、姿勢制御用のブースターは、その素材を鋼鉄から細胞組織へと変貌させていた。


 ミソラ達は、その変化した敵の様子を言葉無く見つめることしかできなかった。

 宇宙怪獣が殲闘騎に変化したという事実を、彼女たちの頭が理解できていなかったのだ。


 殲闘騎と化した宇宙怪獣が、ゆっくりとその顔をミソラ騎へ向けた。

 その視線を受けたミソラは、全身に寒気が走ったのを感じた。


「ミソラ、落ち着…」


 クロウは、そんなミソラの変化に気が付き、声をかけようとするが。


「け!」


 すべての文字を表示する前に、別のことに集中する必要に迫られた。


 宇宙怪獣が、一瞬にしてミソラ騎の目の前に現れたのである。

 たしかにそれは、レーダーから姿を消して、再び出現するというバッタ型お得意の技ではあったが…

 それは、今まで宇宙怪獣が見せていたどの移動よりも早かった。


「…え?」


 ミソラたちが驚く間にも、宇宙怪獣はミソラ騎を破壊するための行動を取る。

 宇宙怪獣の腕から、杭のようなものが生えた。


 それは宇宙怪獣の組織によって生成された剣であった。

 一瞬にして組み上げられ剣を、宇宙怪獣は振るう。


 対して、ミソラ騎が持つ武器はレーザーライフル。この近距離で敵より早く攻撃することは不可能である。


 機体が大きく揺れた。

 それはミソラ騎が盾代わりに使ったレーザーライフルが爆発したことにより発生した震動だった。

 宇宙怪獣の剣は、ミソラ騎を斬ることはできず、その手に持つ武器を両断していた。


 ミソラは、武器を捨てることで機体を守ることにしたのだ。

 結果、貴重な武器を1つ失うことになったが、コクピットを両断されるよりは、マシという判断だった。


 また、その行動はある意味、ミソラが次に取ろうとしていた行動を早めるきっかけともなった。

 武器の交換が必要なくなったため、ウェポンボックスから素早くレーザーブレードを取り出すことができたのだ。


 ミソラ騎は宇宙怪獣と距離を取りながらも、ブレードを構える。

 対する宇宙怪獣も、すぐに襲いかかろうとはせず、ミソラ騎の様子を伺う。

 攻撃のタイミングを測ろうとしているのだ。


 まさか、こんなところで読みあいをすることになるなんて…


 宇宙怪獣には人間ほどの高度な頭脳はないと考えられていた。

 しかし、目の前の宇宙怪獣の行動を見て、ミソラはその考えを捨てさっていた。


 少なくとも、目の前の相手に関しては人間並みか、それ以上の知性がある。

 そう考えなければ、この勝負には勝てない。


「…」


 ミソラは、シグルドに武器を構えさせたまま、相手を睨みつけた。

 宇宙怪獣もまた、シグルドを見つめている。


 それから、何秒が経っただろうか。

 もしかしたら数秒程度の時間だったかもしれないし、何分間も睨み合っていたかもしれない。


 両騎が動いたのは、ほぼ同時だった。

 2騎が互いを目指して前進する。


 その手に握られた剣が振られたのも、ほぼ同時だった。


 それぞれが持つ剣の刀身がぶつかりあった。


 宇宙怪獣は武器を両手で持ち、剣を振りかぶっていた。

 対するミソラ騎は左腕が使えないため、片腕分の力でその攻撃を受け止めなければならない。


 反動が、機体を襲う。

 押し返されたブレードの刃が視界に広がり、その光に目を細める。


 だが、ブレードの刀身は、コクピットに届くまで押し戻されることはなかった。

 ミソラ騎はなんとか宇宙怪獣の攻撃に耐えることができていた。


 コクピット内に入った光を遮断しながら、ミソラは敵の様子を伺う。


 まだ、逆転の手はあるはず!


 だが、そんな彼女を待ち受けていたのは、驚異的な現象だった。

 宇宙怪獣が持つ剣、その先端が伸びはじめたのだ。


 それは、小型の触手のように自由に動けるようだった、一直線にコクピットめがけて伸び始める。


「うあああああっ!」


 その動きを把握するよりも早く、ミソラの手が動いていた。

 彼女の操縦に従い、シグルドの左腕が触手とコクピットの間に入り込む。


 触手が左腕を貫くが、その先端はシグルドの右脇下を通過した。

 動きをずらされたせいでコクピットを貫くことに失敗したのだ。


 だが、この代償でシグルドの左腕は完全に機能停止に追い込まれる。


 シグルドはレーザーライフルに続いて、片腕までもを失っていた。

 変化をしてからほぼ無傷の宇宙怪獣と比べると、そのダメージ量の差は開くばかりである。


 どうする…どうすれば!


 機体のステータスを確認しながら、ミソラは逆転の一手を考えるが…

 再び、機体が揺れた。


 コクピットへの攻撃に失敗した触手が、ミソラ騎の右腕に攻撃をしたのである。

 触手はその形状を槍のような形から、刃状のものへと変化させていた。


 そして、その刃をもって、シグルドの右腕を両断したのである。


「…そんな!」


 これで、ミソラ騎は両腕を失った。

 もう、武器を使うこともできない。


 2騎の戦闘の勝敗は決した。


 宇宙怪獣の右腕が振り上げられる。

 そこには、形を元に戻した剣が握られている。


 対するミソラには、もう打つ手が残っていない。


 こんなところで…終わるの?

 仲間を殺されて、クロウの体も奪われたままで、アタシは死ぬの?


 だが、そんな彼女の元へ、一通の通信が届いた。

 それは情報を受け取ったクロウが、即座にミソラへと届けたものだった。


「これ…は」


 それを見たミソラは、最後の賭けに出ることにした。


「うおおおおおお!」


 思いっきり蹴り上げるように、機体の足を上へと出す。

 シグルドの右足のつま先が、宇宙怪獣の右手へとぶつかった。


 再び、剣の先端がシグルドのコクピットを狙おうと動き始めるが。


「今だ!」


 触手がコクピットに届く前に、ミソラ騎は宇宙怪獣に背を向けて全速力で戦場を離脱しはじめた。


 もちろん、宇宙怪獣はそんなシグルドの背中を追おうとするが…

 直後、全身を無数のレーザーが貫いた。


 宇宙怪獣は、攻撃に対して反応することもできず、ミソラ騎を追うこともできずにその全身に無数の穴を開けていく。


「この宙域で戦闘している殲闘騎パイロットへ、こちらは銀河連合軍惑星ゼウス防衛艦隊所属の駆逐艦スピカである。支援要請を受けて、ただいま戦場に到着した!」


 それは戦闘前に、アインを通して支援要請を出していた銀河連合軍の艦であった。

 ミソラ騎が宇宙怪獣と対峙している間に、この空間にワープアウトしたその艦は、ミソラ騎の危機を見て、宇宙怪獣に対して攻撃をはじめたのであった。


 それはミソラ騎を巻き込みかねない危険なものであったが、そんな攻撃を行ったのは、艦の存在に気がついたクロウがとっさに放った通信が原因であった。


「私は避ける。今すぐに攻撃を」


 その文章を見て、艦長は即座に攻撃の指示を出していた。

 結果、ミソラは味方の攻撃を避けることができ、攻撃に気が付かなかった宇宙怪獣は艦から放たれた無数のレーザーによって、その身を焼かれていた。


 ミソラと宇宙怪獣の戦いは、明らかに宇宙怪獣が優勢だった。

 あのまま戦いを続けていても、確実にミソラは負けていただろう。


 しかし、勝負においてはミソラたち人類が勝利をすることとなった。


「支援…感謝します」


 攻撃を受けた宇宙怪獣を横目に、ミソラは自身のピンチを救ってくれた艦に礼を言った。


「いや、こちらこそ危険を承知のうえで攻撃要請を出した上、類まれなる技能で本艦の砲撃を避けた、貴官の腕前に感服する」


 こうして、ミソラと宇宙怪獣の戦いは終わった。

 その幕切れはあっけないものであった。



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