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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第1章 終わり、そしてはじまり
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6 ファイブオーバー

◇ ◇ ◇


 怪獣の強さはカテゴリー1から7で分類される。

 この数値は宇宙怪獣の大きさ、攻撃手段によって決められていたが、1は訓練を終えた新兵が対処可能。2は戦闘に慣れた兵士なら対処可能…といった風に兵士には認識されていた。


 今回の出撃では、6騎のカドモスが出撃していた。

 予測されていた敵の等級はカテゴリー2のワイバーン型が3体。それは熟練兵が集まるシリウス隊の6騎であれば、余裕で対応できる戦力であった。


 統一時間4月6日21時33分。

 戦闘を終えたシグルド隊は、カドモス隊の戦闘宙域に向かっていた。

 その道中で彼らは戦闘の痕跡を発見した。


「なによ…これ」


 そこには宇宙怪獣の死骸と、β隊に所属していた3機のカドモスの残骸が浮かんでいた。

 到着前から各機体のステータス情報を見ていた彼らは、当然このことを知ってはいた。しかし、情報として知っているのと、実際に破壊された友軍機を見るのとでは、そのショックの度合いが変わってくる。


「ミソラ、早く援護に行こう。カドモス隊は今も戦っている」


 3人の中でも、比較的冷静でいられたのはクロウだった。

 友軍の、それもさっきまで顔をつきあわせていた人間の死だ。悲しくはないが、それでも今は戦場にいるという意識の方が強い。


「わ、わかってるわよ!」


 それまで呆然と残骸を眺めていたミソラだったが、彼の言葉で冷静さを取り戻したようだった。


「α隊は現在宇宙怪獣と戦闘中よ。油断せずいきましょう!」


 彼女はシグルドを残りの友軍機――現在戦闘中の3騎がいる方へと向ける。


「それと…クロウ」


「なんだ」


「相手はβ隊を全滅にしたヤツよ。アンタは自分の身を守ることに徹しなさい」


「…わかったよ」


 クロウは頷きながら答える。

 ミソラの言葉はもっともだ。

 カドモスの損傷を見たクロウたちは、この3騎が1体の宇宙怪獣にやられたということを突き止めていた。その宇宙怪獣はカテゴリー2を倒したカドモス隊に襲いかかり、その反撃を寄せ付けずに全ての機体を撃退したのだ。

 そして、その宇宙怪獣は現在、彼らが合流しようとしているカドモス隊と交戦状態にある。

 詳しい名称は分かっていないが、熟練兵が乗るカドモス3騎を相手取って勝利する宇宙怪獣のカテゴリーは決して2で収まるものではないだろう。

 カテゴリー1ならいざしれず、カテゴリー2と戦って勝てる自信の無いクロウには戦闘をしろと言うのは酷である。だからこそミソラは、クロウへ消極的な行動をするよう、忠告したのだった。

 

 しかし、彼はその時、はじめて自分のふがいなさに対して、いらだちを覚えた。


◇ ◇ ◇


 カドモスα隊は1体の宇宙怪獣と対峙していた。

 

 宇宙怪獣は腹の前に巨大な房を2つつけた、巨大なトノサマバッタのような姿をしていた。

 鈍重そうな見た目に反し、その動きは速い。カドモス隊は3機で背中を預け合い、攻撃に耐えていた。


 それは仕方がないと言えば仕方がないのかもしれない。

 しかし、その外観は当初確認されていたカテゴリー2のワイバーン型とは異なるものだった。それどころか、この宇宙怪獣は未だ人類が遭遇したことのない種類のものだった。


「ちっ…生きて帰らなきゃ、命名もできんというのに…」


 コクピットの中で、ゴードンが舌打ちをする。

 彼らは艦に無事帰還したら、この怪獣の命名をバッタ型にしようと決めていた。


 バッタ型はゴードン騎に対して、執拗に攻撃を繰り返していた。なぜ彼を狙うのかは分からない。もし宇宙怪獣に知能があるとすれば、隊長騎を狙っているということになるが…

 そこまでの知能を持った個体はカテゴリー5以上と認定されていた。3騎の殲闘騎(スレイヤー)で対応するのは不可能だ。対応するならば最低でも9機、理想を言えば12機以上の殲闘騎(スレイヤー)が必要になる。

 

 バッタ型がゴードン騎の懐に入り込む。


「…ここまでか」


 ゴードンは相手の動きに対応できなかった。

 彼は目をつぶると、その最後の瞬間を受け入れようとするが…

 ゴードン騎とバッタ型の間…距離にして数メートルの隙間を光の粒子が通り過ぎた。


「こちらシグルド隊、これより援護を行います!」


 ◇ ◇ ◇


「ちぇっ…外したか~」


 セレナが悔しそうにつぶやく。

 ゴードン騎のピンチを救ったのは、彼女のレーザーライフルだった。機体と怪獣の隙間を通す精密射撃だったが、彼女は怪獣に直撃すると確信しながら、撃っていた。

 

 クロウはカドモス隊のステータスを確認する。所々に傷を受けているようだった。


「シリウス隊か…!」


 ゴードンからの通信が、シグルド隊の面々へと届く。

 それはブリーフィングの時には聞けない、ハッキリとした声量で再生された。


「はい、援護に参りました! 我々で宇宙怪獣を殲滅しましょう!」


「よし、ではシグルドはα隊の生き残り2騎をつれてこの宙域から離れろ!」


「…りょうか…隊長、今なんて!?」


「お前たちは去れと言ったのだ! この相手は危険だ!」


「なら、なおさら…!」


「わからんのか、今の我々ではこいつをどうすることもできん! 今シリウスに救援要請を行っている。彼らが到着するまで、こいつからは逃げるんだ!」


「ですが、アタシたちはシグルドに乗っています! この機体なら…!」


「ならんっ! んんっ!」


 それが、ゴードンの最後の言葉だった。

 セレナ騎の射撃を警戒してか、バッタ型はゴードン騎から離れた場所にいた。そのはずだった。だが、照準に捉えていたはずの宇宙怪獣は、姿を消し…

 数秒後、ゴードン騎の目の前に現れた。

 反応する間もなく、宇宙怪獣の胴体から生えた器官はゴードン騎を飲み込んでいた。


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