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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第1章 終わり、そしてはじまり
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5 初陣

 ◇ ◇ ◇


【ヒュプノス・タナトス恒星系】


 統一時間4月6日21時00分。

 9騎の殲闘騎(スレイヤー)が、シリウスから発進した。

 中央に配置されたのは3騎の最新鋭殲闘騎(スレイヤー)シグルドだ。

 シグルド隊のパイロットは全員、今回の戦闘が初めての出撃となるが、その操縦には新兵特有の危なっかしさは感じられなかった。


 エインヘリアルシステム――パイロットの思考波を読み取り機体制御全般に反映させる装置による恩恵である。

 シグルドに搭載されたこのシステムにより、高い適正値を持つ兵士は、1年という短い訓練期間で、ベテラン兵なみの挙動を殲闘騎(スレイヤー)に取らせることが可能になっていた。


「シグルド隊は、カドモス隊に先行して敵陣に突っ込み、トカゲ型の数を減らすわ! セレナはアタシとコンビネーション!」


 隊長はミソラ・アカツキ。新兵ながら迎撃艦シリウス内の演習順位1位の彼女は、全宇宙で7番目に高い、エインヘリアルシステムの適正値を持っていた。


「りょ~かい!」


 僚機パイロットのセレナ・ミラディは艦内順位3位。

 彼女は第一期シグルドパイロット訓練生の中でエインヘリアルシステムの適正値が81名中78位であり、抜群の適正を持っているわけではなかったが、持ち前の戦闘センスにより訓練生時代から高い評価を得ていた


「クロウは死なないよう、離れた所から援護射撃でもしてなさい!」


「了解」


 そしてクロウ・シノサカ。彼の評価は、セレナの評価を真逆にしたもの、と言えば分かりやすいだろうか。

 彼の適正値は全宇宙の中で1位であった、それも2位以下を圧倒的に引き離す数値である。しかし、その戦闘センスはお世辞にも優れているとは言えない――言葉を選ばなければ未熟としか表現できなかった。

 とはいえ、彼もシグルドのパイロットだ。エインヘリアルシステムの恩恵により、“新兵に毛が生えた程度”の操縦はできていた。


 シグルド隊の後にはカドモスα、β隊が続く。


 殲闘騎(スレイヤー)カドモスは、現在人類が最も数多く運用している主力殲闘騎(スレイヤー)だ。

 その外観はシグルドが騎士に例えられるのに対して、鎧武者に近いと表現するのが適切かもしれない。


 エインヘリアルシステムを搭載しないカドモスは、新兵がまともに動かすことができるようになるまで3年はかかると言われている。

 現在シリウスにいるカドモス乗り達は、全員5年以上の実戦経験を持つ者で占められていた。


 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月6日21時25分。

 カドモス隊に先行して宙域を進んでいたシグルド隊は、17体の宇宙怪獣を確認した。


「全部トカゲ型か~ワイバーン型はどこにいるんだろ~」


「残り3体はカテゴリー2だって話だったわよね。レーダーに反応はないけれど…これは運が良いわね」


「先に片付けられるもんね~」


「そう! カドモス隊が追いつくまでに、アタシ達であのトカゲどもを一掃するわよ!」


「「了解」」


 答えて、クロウは前方に現れた宇宙怪獣に意識を集中する。

 トカゲ型宇宙怪獣――その姿はぶよぶよになった紫芋に、太さが異なる5本の触手が生えたものと言えば分かりやすいだろうか。

 クロウは何故この宇宙怪獣がトカゲ型と呼ばれているのか理解できなかった。きっと命名者は目が悪かったか、発見当時酔っ払っていたに違いない。


 ミソラ騎が放ったレーザーライフルの1射が、戦闘開始の合図だった。

 一瞬にして、1体の宇宙怪獣が蒸発する。

 その光景を見届ける前に、2騎のシグルド――ミソラ騎とセレナ騎が宇宙怪獣の群れへと突撃していた。

 機体背面のウェポンボックスから、ミソラは突撃槍を、セレナはハルバートを取り出すと、手近にいた宇宙怪獣に襲いかかった。

 突き刺し、切り裂き、その勢いを止めずに次のターゲットへと襲いかかる。

 それは人に獣の魂が宿ったかのような動きだった。

 宇宙怪獣たちはシグルドの攻撃に対応することができずに、その数を減らしていく。


「セレナ!」


「はいよ~!」


 ミソラのかけ声が――正確には彼女の思考が、僚機のセレナ騎へと伝わる。

 セレナ騎がハルバートを使って、ミソラ騎へと伸ばされていた宇宙怪獣の触手を断ち切った。

 その間、武器をレーザーライフルへと持ち替えていたミソラ騎は、自身に攻撃をしかけた宇宙怪獣にレーザーの奔流をお見舞いする。

 攻撃を受けた宇宙怪獣は抵抗することもできずに、爆発した。


 戦闘開始から3分が経つ頃には宇宙怪獣の数は5体まで減っていた。


 クロウはミソラの指示通り、彼女たちが起こす嵐を遠目から眺めていた。

 しかし、ここまで来て何もしないというのもきまりが悪い。


「1体位は、落としておかないとな…」


 クロウ騎がレーザーライフルを構えると、ミソラ騎から離れた場所に浮かぶ宇宙怪獣を照準に捉え、トリガーを引いた。

 レーザーは宇宙怪獣の胴体に当たり、その身体の一部を消し飛ばしていた。


「へえ、アンタでも、宇宙怪獣は落とせるもんなのね」


「ぱちぱち~」


「お前ら、絶対バカにしてるだろ…」


 その時、シグルド隊の面々は油断していた。

 いくらエリート部隊の一員、最新鋭機のパイロットに選ばれたと言っても、彼らは戦場を知らない新兵だ。

 出撃前の軽口も、緊張をほぐすためのもので、皆一様に緊張はしていた。

 だが、実際に相対した相手は拍子抜けするほどに弱かった。


 なんだ、宇宙怪獣なんて、たいしたことないじゃないか。


 そう考えるのも、仕方がない。

 しかし、その油断によって、彼らは異変に気がつくのが、遅れていた。


「ミソラ、セレナ、なにかがおかしい!」


 はじめ、異常に察知したのはクロウだった。


「なに? 自分が宇宙怪獣を倒せるなんて、おかしいとでも言うんじゃないんでしょうね?」


「違う。カドモス隊の合流が、遅いんだ」


 そこで、ミソラたちも異常に気がつく。

 当初の作戦では、シグルドを突出させ戦場を攪乱。後ほど合流したカドモス隊と協力し、残存している宇宙怪獣を撃退することになっていた。


 この宙域で、戦闘を開始してから4分が経っていた。

 先行していたシグルド隊に対して、カドモス隊が追いつくには十分な時間だ。しかし、彼らは未だ戦場には到着していなかった。


「カドモス隊の位置は!?」


「俺たちの後方2万!」


「状況は!?」


「今確認する!」


 宙域の地図を!


 クロウがそうシグルドに命じると同時に、彼の前にホログラムのマップが表示された。

 このマップには各殲闘騎(スレイヤー)の状況が映し出されるようになっていた。

 マップを見たクロウは、息を飲む。

 カドモス隊のステータスは6機とも、戦闘中となっていたのだ。


「カドモス隊も戦闘中だそうだ! 敵の情報は不明!」


「ここにいなかったカテゴリー2が、カドモス隊を襲ったってこと~?」


「とにかく、こいつらを片付けて、援護に向かうわよ!」


 クロウの報告を聞き、ミソラ騎とセレナ騎の攻撃の手が早まる。

 彼女らにとって、もはやカテゴリー1など容易に殲滅できる相手になっていた。


 1分後、ミソラ騎の持つハルバートが宇宙怪獣を両断し、戦闘が終了した。


「カドモス隊の状況は!?」


「依然、戦闘中のままだ」


「わかった、さっさと援護に行って。残りもアタシたちで仕留めちゃいましょ」


「りょうか~い。でも、敵はカテゴリー2でしょ~? なら、私たちが到着するまでには終わってそうだよね~」


「そうかもしれないけどね…ま、行くだけ行きましょ」


 戦闘後の高揚感からか、ミソラとセレナは軽い調子で、そんな会話を交わす。

 だが、クロウだけはこの状況に対して、胸騒ぎを抑えられないのだった。


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