30 シグルドVSシグルド
◇ ◇ ◇
ミソラの一撃は、シグルドβが乗る長距離輸送ブースターグラニを貫いた。
高エネルギーのレーザー弾が直撃したことにより、ブースターは暴走状態に陥り、やがて爆発した。
ミソラは、爆煙から飛び出す機体を見た。シグルドβだ。
グラニがやられたことに気がつき、すぐに飛び降りたのだろう。
シグルドに宿る方のクロウから、データが送られてくる。
目標に目立った損傷はなし。
「反応はピカイチってことね」
戦闘の映像を見ていたので、ある程度予想はできていたことだが、実際に動きを見て、その反応の高さを実感する。
「相手にとって不足なし! 行くわ!」
グラニを失ったことでシグルドβと、ミソラたちの距離は急速に縮まっていた。
ミソラはタイミングを見計らうと、グラニから飛び降りた。
そしてそのまま一直線に、シグルドβへ向かう。その手にはレーザーブレードが握られていた。
「クロウー!」
すれ違いざまに、一閃。
しかし、ミソラが振るったレーザーブレードの光刃はシグルドβには届かない。
相手もまたブレードを取り出していたのである。
刃同士がぶつかり合い、火花が散る。
はじめの一撃を外したミソラ騎は、両腕で相手を押して距離をとった。
相手も距離を取ろうと考えていたようで、機体を引かせる。
二騎の間に数十メートルの距離ができた。
体勢を整えたミソラは、再びシグルドβに斬り込もうとするが…
「…っ!」
脳内に警告が響く。
突撃するよりも早く、シグルドβは武器をレーザーライフルに持ち替えていた。
咄嗟に、回避行動を取る。
レーザーが機体すれすれの場所を通り抜けていく。
クロウのバックアップが無ければ、今の攻撃は避けられなかっただろう。
だが、一撃目を回避しても、次々と光の弾丸がミソラ騎を襲う。
それは無計画に放たれたものではなく、ミソラの回避先をあらかじめ読んで撃たれたものだった。
「…なんて早さなのよっ!」
ギリギリのところで、光弾を避け、時にはブレードで弾きながら、ミソラは毒づいた。
「でも…相手はアタシだけじゃないんだから!」
シグルドβめがけて、レーザーが飛んできた。
ミソラが撃ったものではない、ツヴァイが乗るシグルドが離れた場所から狙撃したのだ。
直撃コース。
しかし、シグルドβは機体を軽くそらすと攻撃を避けた。
必要最低限の動き。時間にしてコンマ数秒の動作。
それだけで致命となる一撃を回避したのだ。
だが、このコンマ数秒の隙を、ミソラとクロウは見逃さなかった。
「隙ありぃ!」
シグルドβが射撃体勢を整える前に、距離を縮める。
先ほどはつばぜり合いが起きたが、今回は武器を持ち替える猶予は与えない。
懐に入り込まれたシグルドβは、攻撃を避けることができない。
確実に相手にダメージを与える一撃。
しかし、シグルドβはまだ抵抗する手段を持っていた。
機体がまばゆく光る。
敵の目をくらます、フラッシュだ。
これを使われると、視界を奪われたパイロットは一時的に行動が取れなくなる。
先ほども、アレックスたちがクロウが乗るシグルドβを捕らえようとした際に、使われたものだった。
しかし…
「同じ手が、通用すると思うなっ!」
ミソラはすでに、その手を読んでいた。
フラッシュが放たれる直前に、コクピット内のセンサーの感度を落としていたのだ。
ミソラは手元を狂わすことなく、レーザーブレードを振った。
その斬撃は、今度こそシグルドβを両断する。
はずだった。
ブレードが、光の残像を描きながら空を切った。
「かわされたっ!?」
ミソラが確認しようとする前に、彼女の脳内にレーダーの情報が映し出される。
シグルドβの反応、消失。
攻撃が届かなかったことに、ミソラは舌打ちをする。
やつには、この手もあったのだ。
どんな方法を使っているのか分からないが、一時的に殲闘騎のレーダーからも、視界からも消える超高速での移動。
相手を見失ったミソラは、追撃に備えるが…
レーダーにシグルドβの情報が再度表示された。
だが、ミソラの近くに、相手はいない。
「アイン!」
シグルドβが再び現れたのは、ミソラやツヴァイから離れた場所にいた、アイン騎の目の前だった。
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