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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第3章 アルクメネ会戦
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27 最悪の事態

 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月13日13時37分。


「クロウくん!」


 セレナからの通信を受けて、シグルドβが動きを止めた。


 数秒後、機体の前に長距離ブースター、グラニに乗った9騎の殲闘騎たちが現れる。

 殲闘騎たちは、グラニから降りるとシグルドβを取り囲んだ。

 シリウス所属の、殲闘騎部隊――ホールBの迎撃作戦に参加したアレックスたちの部隊だ。


「間違いない、クロウが乗った機体だわ」


 ホール多数出現の混乱に紛れて、ゼウスを抜け出した機体だったが、それを同じ艦に乗る殲闘騎部隊の人間たちが見つけ出したのは、まったくの偶然だった。


 クロウが乗るシグルドβを囲んだ殲闘騎たちの手には、レーザーライフルが握られていた。

 アレックスたちは、クロウを捕縛し、シリウスへと連れ帰ろうと考えていたが、もしクロウが抵抗をした場合に、彼を撃とうとも考えていた。


 彼には、撃たれても仕方のない理由があるのだ。


 クロウは無断で殲闘騎を持ち出した。その責任は重い。

 たとえ彼にどんな理由があったとしても、指示にない独断行動は認められていなかった。


 ◇ ◇ ◇


「クロウ、通信を開け」


 アレックスの指示に、クロウは従った。

 無表情のクロウの映像が、アレックスたちホールB迎撃部隊のパイロットたちへと届けられる。


「クロウくん、どうして艦から勝手に抜け出したの?」


 はじめに、クロウに質問したのはセレナだった。


「…………」


 しかし、クロウからの返事はない。


「何か、何か答えてよ」


 再度、セレナがクロウへと話かける。

 しかし、最初の質問同様、クロウからの返事はなかった。


「クロウくん!」


「…セレナ、気持ちは分かるけど落ち着いて」


 狼狽した様子のセレナを、カンナがなだめた。


「だって…だってぇ…うぅ…」


 セレナからの映像が消え、代わりに鼻をすする音と、小さな嗚咽がパイロットたちの耳に届いた。


 セレナはクロウとチームを組んだ経験があり、また彼の復活の際には誰よりも喜んだ人物だった。

 だからこそ、クロウが勝手に機体を持ち出したということを知って、大きなショックを受けていたのだった。

 戦闘中は、そんな様子は見せていなかったが、本人を目の前にしては心が乱れても仕方が無い。


「セレナのかわりに、ワタシから質問をさせてもらう。クロウ、アナタは自分がやったことが、どういうことか分かっている?」


 続いて、質問をしたのはカンナだった。


「…………」


 だが、カンナに対しても、クロウは沈黙を貫いた。


「何も話すことはねえってことか?」


 アレックスがいらついた感情を隠しもせず、クロウに問うた。

 しかし、クロウは何も答えない。


「…わかった、お前が何も言わねえんだったらそれでもいい。話を聞くのは俺たちじゃねえしな…事情を聞くのは担当者に任せよう。カンナ、ジョセフ。シグルドβを取り押さえてくれ」


 アレックスは諦めたようにため息をつくと、カンナとジョセフへ指示を出した。


「抵抗するなよクロウ。お前の狙いが何かは知らないが…もし抵抗したら、俺たちはお前を撃たなきゃならねえ」


 カンナ騎とジョセフ騎が、ゆっくりとシグルドβへと近づく。


 クロウは抵抗するそぶりも見せずに、機体を制止させていたが…


 2騎のシグルドが手に届く範囲まで近づいた時、彼の機体が光った。


「なっ!?」


 シグルドβに搭載されたフラッシュが使われたのだ。

 コクピットが光で満たされ、クロウに意識を向けていたパイロットたちは視界を封じられる。


「クロウ…てめぇ、抵抗したなっ!?」


 こうなっては仕方がない。

 アレックスは急いで光量を調整すると、銃を構えるが…

 照準の先には、もうクロウが乗るシグルドβはいなくなっていた。


「あいつ…どこに?」


 アレックスは、慌ててクロウの所在を確かめようとするが…


「アレックス! 前!」


 ジョセフの叫び声が届いた。

 顔を上げたアレックスが見たのは、自機の目の前に浮かぶシグルドβの姿だった。


「こいつ…いつの間に!?」


 レーダーには反応は無かったはずである。

 理解不能な出来事に、アレックスの判断力が鈍った。


 だからこそ、彼はシグルドβの攻撃を避けきれなかった。

 シグルドβの左手に握られていたレーザーブレードが、アレックス騎の右腕を斬り落とす。


 レーザーライフルを失ったアレックスは、反撃をできず、機体を引くことしかできない。

 しかし、その行動も読まれていた。


 シグルドβは推進器を噴かせると、アレックス騎へと突進したのだ。

 結果、殲闘騎が集まっていたエリアから、アレックス騎とクロウが操るシグルドβが離れていく。


「ぐああっ!?」


 衝撃で、コクピットが揺れる。

 アレックスは、残った左腕でレーザーブレードを抜こうとするが、クロウは驚くべき速度でその動きに対応した。


 左腕にレーザーブレードが突き立てられた。

 それはアレックスのシグルドがブレードの柄を掴むよりも早かった。


 その早さに、アレックスは絶句する。

 機体を動かす早さが、根本から違っていたのだ。

 こんな動きを、彼は殲闘騎に取らせることなど不可能だった。


 両腕を破壊され、シグルドは抵抗する力を失った。


 こいつは…本気で俺を殺そうとしているのか?


 その時、恐怖がアレックスを襲った。

 それは宇宙怪獣との戦いでは感じたことのないものだった。


 クロウ、お前は…仲間を殺すのか!?


 シグルドβがブレードを振り上げる。

 アレックスは攻撃を避けようとするが、恐怖のせいで思考がうまくまとまらない。


「な、なんで、動かねーんだよ!」


 その結果、機体の操作を補助するエインヘリアルシステムが効果を発揮できなくなる。

 機体が思うように動かず、アレックスの焦りは加速した。


 その間にも、ブレードの刃はシグルドの装甲を切り裂こうと近づいていて…


 アレックスは自身の最期を確信し、目を見開いた。


「……っ!」


 しかし、彼に最期は来なかった。

 再び、クロウのシグルドβが姿を消したのだ。


「また…消えた?」


 直後、アレックス騎の目の前をレーザーが通っていく。

 それは味方騎から放たれたものだった。

 アレックス騎を襲う、クロウを狙ったのである。


 間一髪で死を回避したアレックスだったが、今起きた出来事が信じられずにいた。


「あいつ…狙撃を避けるために…?」


 俺を殺すよりも早く、自分がやられると察して逃げたのか?


 そんなことが可能なのだろうか?

 少なくとも、アレックスにはできない。

 きっと、シリウス一殲闘騎の操縦が得意なミソラであっても不可能な芸当だろう。


「化け物…かよ」


 ただ一言だけ、そう言うのが精一杯だった。


 その時だった…


「クロウくん、駄目! いやあああああ!」


 セレナの叫び声がコクピットに響いた。

 その叫び声で、アレックスは我に返る。


 嫌な予感を感じながらレーダーを確認すると、アラートと共にモニターが開く。

 そこには味方騎のうちの1騎が、撃墜されたという情報が書かれていた。


「あ…あ…!?」


 その名前を見て、アレックスは声を失った。


 ◇ ◇ ◇


 ミソラたちホールC迎撃部隊は、ホールBがあった宙域まであと数分のところまで来ていた。

 距離が近づいたことにより、シグルドがホールB部隊の情報を受信する。


 ミソラは、緊張した面持ちでその情報を調べるが…


「え…?」


 表示された情報を見たミソラは、そこに書かれた情報を信じることができなかった。

 なぜならば、考えうる範囲で最悪な出来事が書かれていたのだから。

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