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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第3章 アルクメネ会戦
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22 戦い控えて

 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月13日12時30分

 長距離輸送ブースター、グラニは順調に目的地へと向かって進んでいた。

 三角錐のフォルムの周りにはそれぞれ3騎ないし2騎の殲闘騎が取りついている


 このまま行けば、あと10分で作戦宙域までたどり着くことができる。


 ミソラは、これからの戦いに備えて、シリウスから送られてくるホールの情報を確認していた。


 今回迎撃に向かうホールの大きさは1であり、現れる宇宙怪獣のカテゴリーも1から2と予想されていた。あまり脅威度は高いとはいえない。

 しかし、隊を預かる身として、ミソラは今まで以上に宇宙怪獣の情報に気を配っていた。


 そもそも、同時多発的にホールが発生するような事態は過去に例がない。また、ホールのサイズが小さくとも誰もが予想しなかったカテゴリーの宇宙怪獣が現れるということもあり得る――シリウスの乗員たちはつい最近、そんなイレギュラーな出来事に遭遇していた。


 それらの事情から、ミソラはこの戦いにおいてはどんなイレギュラーが起きても対応できるよう気を引き締めていた。


 一通り、情報を仕入れたミソラは、背もたれに体を預けると、戦闘前の最後のリフレッシュを取ることにした。


「ねえ、アンタ」


「なんだ」


 誰も居ないコクピットの中でミソラがつぶやくと、モニターに文字が浮かび上がった。


「アンタは、もう知ってるのよね?」


「…なんのことだ?」


「嘘つかないで。もうアタシの思考、読み取ってるんでしょ」


 現在、ミソラの頭の中は、2つのことでいっぱいだった。

 1つはこれからの戦闘のこと。そして、もう1つはクロウのこと。

 そして今、ミソラがクロウと話したいことは、後者の方だった。


「…知ってるよ。そもそも、あれがシグルドに乗って出て行くとこ、俺も見てたし」


「勝手に研究所を出て行って、勝手に殲闘騎に乗ってどっか行っちゃったんだってね。ずいぶんアグレッシブじゃない」


 わざとらしくため息をつく。

 それは一見すると馬鹿にしているかのようにも見えたが、その内心は違った。


 …なにやってんだろ。今はどんな態度とっても、全部コイツにばれてるっていうのに。


「心配してくれてるんだな」


「…そうよ。アンタがどう思ってるかは分からないけど、アタシはアンタが助かる方法をずっと探してた。探してたのよ…」


 思考を読み取られているというのなら、もう素直に話すしかなかった。


「アイツ…何考えてんのよ。こっちはせっかく手がかりがつかめる所まで、いけたっていうのに…」


「俺も、アイツのことはわからない。初めて見た時、行動にも不気味さしか感じなかった」


「アタシ…どうすればいいか分からなくなっちゃったよ…」


 もう一度、ため息をついた。わざとではなく自然と出たものだった。

 同時にミソラは、今自分が弱っている表情をしていることに気がついた。

 それは彼女が、今まで誰にも見せてこなかったものだった。


 もちろん、こんな顔クロウにだって見せたくはない。もし彼が生きて目の前にいたのだとしたら一生見せることのない顔だっただろう。

 しかし、ミソラにとって、今のクロウは自分の本音を話せる唯一無二の相手になっていたのである。


「あんまり落ち込むなよ」


「落ち込んでなんかない!」


 クロウは、自分のことをよく知っている。

 そのことが分かっていても、ついつい反論してしまうミソラだった。


「たしかに、俺も…残念だなとは思ってる。でも、前も言ったけど…実際そこまですぐに今の状況をどうにかしたいとも思ってないんだ」


「アンタ…どうしてそんなこと言うのよ!」


「違う、別にお前を怒らせようとか、そういうんじゃないんだ」


「じゃあ、変なこと言わないで」


「ごめん…でも、俺はミソラが今、ここまで俺のことを考えて動いてくれてたってことが知れただけでも十分嬉しかったし…だから今はそれで十分なんだよ」


「な…なに馬鹿なこと言ってるのよ!」


 予想外の発言に、ミソラは自分の顔が熱くなるのを感じた。


「ばっ、ちょっと今アタシの中見ないで!」


 そしてそれを自覚した瞬間、なんとも言えない羞恥心が、彼女の心の中に生まれた。


「…見るなって言われても、もうすぐ戦闘だぜ? いいのか?」


「いいから! とにかく、見たら殺す! 死んでても殺すから!」


「…わかったよ」


 要領を得てないのが文章からも伝わってきたが、彼はミソラとのパスを切ったらしい。モニター上に浮かんでいた文字列も引っ込められた。


 もう、なんでアタシ…アイツに嬉しいって言われただけで、こんなになってるのよ!


「ああ~もうっ!」


 頭を抱えたミソラは、一人で足をドタバタと動かして身もだえした。


 その光景は、もちろんクロウからも見えているはずだったが…彼がミソラに話しかけてくることはなかった。

 それが、彼なりの配慮だったのだろう。


 彼がミソラに話しかけてきたのは、数分が経った頃だった。


「あと1分で、目的地に到着」


 事務的な報告がモニターに浮かびあがり、ミソラは意識を戦闘へと切り替えることにした。


「すぅー…はぁー…」


 ゆっくりと深呼吸をした後…


「思考をつなげていいわよ」


 ミソラは静かにそう告げた。

 彼女の中には、もう先ほどのクロウに対する羞恥心はなくなっていた。



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