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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第2章 首都星ゼウス
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20 出港

 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月13日10時30分。

 オリュンポス星団内にある恒星系の宇宙港では、次々と軍艦が出港していた。

 その艦種は、宇宙戦艦から迎撃艦、そして小型の駆逐艦まで様々である。


 彼らはワープ推奨宙域であるトランジットポイントまで急行すると、星団内に現れたホールから出現するであろう宇宙怪獣の迎撃のため、各々指示された宙域へとワープしていった。


 小型のホールは、出現する宇宙怪獣のカテゴリー自体は低いものの、拡大が早い。展開を終えたホールからは宇宙怪獣が出現するため、それぞれの艦は現場に急行する必要があった。


 出港した艦が、列をなしてトランジットポイントへと進む姿は、まるで蟻の行列のようだった。


 ◇ ◇ ◇


 同時刻。

 惑星ゼウスの宇宙港からも、大小様々な軍艦が出港しはじめていた。

 各艦の出港スケジュールは分単位で組まれていたが、なにぶん急な出撃命令であったため、計画通りの出港ができずにいる艦が多く存在した。


 早く出撃しなければ、宇宙怪獣がこの星団の中に浸食するというのに…!


 この時、艦に乗っていた多くの乗員たちが、このような苛立ちを覚えていた。

 そんな混乱する艦の行列の中を、一騎の殲闘騎が通り過ぎていった。


 シグルドβ、つい先日配備され始めたばかりの新型殲闘騎である。

 白銀の機体が単騎で行動している光景は、平時であれば目立ったことであろう。

 だが、ホール多数出現の混乱にある中、この不可思議な殲闘騎の行動に目につける者はあまり多くはなかった。


 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月13日11時40分。

 マディはじめとしたシリウスの乗員たちが、自らの母艦に到着したのは、宇宙港の混乱が収まりはじめた頃だった。


「シグルドが単騎で出撃しただと!?」


 艦橋につき出港の準備に追われていたマディの元に、そんな情報が届けられたのは、12時を過ぎたあたりだった。


「出撃命令も出てないのに、勝手に出て行った馬鹿ものは誰だ!?」


 怒りを隠そうともせず、マディはそう問うた。

 無断での兵器使用は、理由によらず即軍法会議ものである。

 それくらいのことは新兵であっても知っているはずだ。

 そんな非常識者が、自分の艦の乗員の中にいたということが、彼には許せなかったのである。


 普段は冷静なマディの激情に触れた下士官は、おびえながらもその人物の名前を口にした。


「クロウ・シノサカ中尉です…」


「シノサカ中尉…だと? それは何かの間違いじゃないのか? 彼は研究所にいるはずだが…」


 しかし、下士官は研究所からクロウが脱走し、このシリウスに乗り込んだのち、シグルドに乗って艦を離れたという報告を、研究所のデータや、宇宙港での乗船データと共に提示した。


「そんな…ありえんだろ」


 彼の疑問はもっともであった。研究所から脱走することも、勝手にシャトルを利用することも、艦に乗り込みシグルドを奪うことも、本来ならできないはずなのだ…


「それが…シノサカ中尉は不思議な力を持って、それらの障害…セキュリティを突破したらしく…」


「オカルトの話は、死人が生き返ったというものだけで十分だったんだがな…」


 下士官の報告を聞いて、マディは頭痛を感じた。

 この艦の艦長になって以来、トラブル続きの状態に最近頭痛を覚えるようになっていた。


「とにかく、今の我々は一兵士を探すよりも、重要な任務がある。この話は後に考えるとしよう」


 眉によったしわを、人差し指の先でほぐしながら、マディはそう結論を出した。

 また、クロウの乗艦チェックを行った乗員とシグルドβを目の前で奪われたアランに対しては、後ほど話を聞くまで謹慎室へと入るよう指示した。



 統一時間4月13日12時00分。

 混乱の中、シリウスは宇宙港を出た。

 彼らにはオリュンポス恒星系内の惑星近郊に現れた3つのホール、そこから出現する宇宙怪獣の迎撃が命じられていた。

 長く辛い戦いが今、幕を開けようとしていた。




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