15 3日後
◇ ◇ ◇
「アイツは…クロウじゃないんですか?」
「いいえ、あの肉体は間違いなく彼のもの、つまり彼はクロウ・シノサカで間違いはないわ。ただし、その中身は彼である…少なくとも以前の彼ではないかもしれないの」
「そんな…そんなことって」
「とにかく、こっちの彼の調査は引き続き進めるわ」
ミソラを安心させようと思ったのか、柔らかな口調でルーシーは告げた。
「並行して、あなたの機体に宿ったクロウ・シノサカの調査も進める。それでいいわよね?」
「はい…よろしくお願いします」
「ちなみに、このことを知っている人間って、私とあなたの他にいるのかしら?」
「一度、セレナにはこのことを話したんですが、信じてもらえなくて」
「でしょうね。そう簡単に信じられる内容でもないでしょうし。それに彼女はここにいる彼に夢中だから…一応、しばらくはこのことは他人には言わないことにしましょう。あなたもそれでいいわね?」
「アタシもその方がいいと思っています。下手に騒ぎにもしたくないですから」
「じゃあ、3日後の午後にシリウスで会いましょう」
「ええ、お待ちしています」
こうして、2人の会談は終わった。
ミソラにとっては、シグルドにいるクロウのことで一歩前進した実感があったが、生き返ったクロウに関しては不信をさらに強める結果となった。
研究所を出た後も、彼女の頭の中はクロウのことでいっぱいだった。
「…今は悩んでもしょうがないわね」
とにかく、話が動くのは3日後だ。
その日は、シリウスの乗員たちに対する表彰式典が行われる予定になっていた。
このイベントを終えた後、ミソラはシリウスへと戻ることになる。
「息抜き…しとかないとなぁ」
このまま宿舎に帰っても良かったが、それだとずっと考え込んでしまう気がする。シリウスに戻ってクロウと話をしたい気持ちもあったが、わざわざ自分の弱みを見せるようなことをしたくはなかった。
「よっしっ!」
ミソラはホログラムモニターを立ち上げると、アレックスを選び通話を要請した。まだ、彼はジョセフと共にシューティングバーにいるはずだ。
ミソラは銃でも撃って気分転換をしようと考えたのだった。
通話に出たアレックスに合流したい旨を伝えると、彼は大喜びでミソラの参加を歓迎した。
なんでもジョセフに負け続け、飲み物をおごらされ続けているというのだ。
「ミソラが来てくれたら、俺の支払いが半分以下になる!」
「なに言ってんの、アンタにはたくさんおごってもらうからね。待ってなさい」
会話を終えたミソラは、彼らが待つシューティングバーへと向かうのだった。
◇ ◇ ◇
翌日も、翌々日もシグルドのパイロットたちは、時間を合わせて研究所に向かい、クロウを見舞った。
アレックスやジョセフはシューティングバーの、セレナは新しいシグルドや模擬戦の話をクロウへ伝えた。
クロウは相変わらず無表情であったが、彼らの話を熱心に聞いているようだった。
ミソラはそんな彼らとクロウのやりとりを眺めて過ごすのだった。
ミソラは正体不明のクロウと、なかなか話す気になれなかったのである。
休日はあっという間に過ぎていった。
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