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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【鼓動編】 第2章 首都星ゼウス
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10 銀河連合軍艦隊司令部

 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月9日 22時15分

 1隻のシャトルが宇宙港を飛び立った。

 シャトルにはマディやミソラなど、司令部への呼び出しを受けた者、ルーシー・ノイマン博士、そして軍の研究施設へと移送されるクロウ・シノサカが乗っていた。


 ミソラはシャトルの窓から今から降り立つ惑星を眺めた。

 首都星ゼウスは青い惑星だ。全面積の約70パーセントが海で囲われているという。これ人類が生まれた惑星、地球がかつて最も美しかった時代の海と陸地の割合にほぼ等しいと言う。


 ――ゼウスが首都星に選ばれたのは、在りし日の人類の故郷とその姿がそっくりだったからだ。


 そんな言い伝えが残るほど、このゼウスという惑星は地球と似通った姿をしていた。


 シャトルが小刻みに揺れ出した。ゼウスの大気圏へと入ったらしい。

 振動を感じながらも、ミソラは窓から見える青い海から目を離さなかった。

 ずっと、ずっと…



 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月10日 8時30分

 ミソラは艦長のマディ、副長のティルスと共に銀河連合軍の艦隊司令部へと訪れていた。

 マディが受付の士官に名前を告げると、彼らは艦隊司令長官のオフィスへと行くよう伝えられた。


「緊張しているかね?」


「ええ…まぁ」


「艦隊司令長官は良いお方だ。安心するといい」


 エレベーターの中で、マディは顔を強ばらせるミソラにそう告げたが、彼女の緊張はなかなかとれそうになかった。

 なんせこれから会う相手は艦隊司令長官であり、銀河連合に3人しかいない元帥である。

 ミソラは艦隊司令長官の姿を映像でしか見たことがなかった。恰幅のよい初老の男性であったが、その鋭い眼光が今でも印象に残っていた。


「入りたまえ…英雄諸君」


 部屋をノックしたマディに対して、返ってきた第一声はそれだった。室内に入ると、ミソラの記憶通りの人物が彼女たちを出迎えた。

 銀河連合軍宇宙艦隊司令長官グラン・コロン元帥。宇宙で3人しかいない元帥の1人だった。


「報告書は見させてもらったよ。驚くべき戦果だねマディくん」


「ありがとうございます」


「司令部内でも大盛り上がりだった。君たちにあの時の様子を見せてあげたいな」


 そう言うと、グランはくっくっくと愉快そうに笑った。


「そして君が、今回の作戦を考えたミソラ・アカツキ中尉かね?」


「えっと…中尉、ですか?」


「おっと、すまないすまない、先走ってしまった。そうだ、君はこれから中尉になるミソラ・アカツキくんで間違いないね?」


「は、はい!」


「君はあの新型殲闘騎のパイロットだそうだね…いやー、若いのによくやってくれた。君みたいな若者がこの軍にいるというだけで、人類の未来は明るいな」


「あ、ありがとうございます」


 それから彼らは、グランの要望で作戦の詳細を説明することになった。

 グランはミソラたちの話を時に真剣に、時に笑いながら聞くのであった。

 その様子は、おとぎ話を聞く子供のようであり、この会談を通して、ミソラはグランに抱いていたイメージがずいぶんと脚色されていたのだということを知った。彼はミソラにとって親しみを感じられる人間だった。


「ところで、アカツキ中尉に宇宙怪獣…特にガイア恒星系に出現したカテゴリー2の話を聞いてみたいのだが」


 ひとしきり、ドラゴン型の話を終えた後、グランは次の要望を出した。

 この話題はミソラにとっては意外だった。

 グランはドラゴン型の話についてではなく、ワイバーン型などの低位の宇宙怪獣について、情報を得たいと言ったのだ。


「ふむ、特別不思議なところはなく、一般的なカテゴリー2だった…ということか」


 10個ほどの質問を投げ、その答えを聞いた後グランは口元を隠しながら頷いた。


「グラン司令長官、カテゴリー2の宇宙怪獣について…なにか気になることでも?」


 マディはグランの態度は何か引っかかるものを感じているようだった。


「ああ、いや…これは宇宙怪獣全体に言えることなんだがね。最近不思議な噂…いや、行動が増えてきているんだ」


「不思議な行動…ですか?」


「ああ、最近宇宙怪獣の…特に低カテゴリーの宇宙怪獣の挙動が変わってきているのさ」


 グランがそうつぶやくと同時に、ミソラたちの前にホログラムモニタが浮かびあがる。モニタには複数のグラフが表示されていた。


「今までのやつらは群れ単位で行動することはあっても、その行動に連携という概念は薄かった。だが、これはここ1ヶ月の我が軍と宇宙怪獣の戦闘記録なんだがね…宇宙怪獣のカテゴリーに対して、殲闘騎の損耗率が上がってきているのだよ。上位のカテゴリーが潜んでいた…という場合を除いたグラフがこれだ。カドモスの損耗率が増えているのが分かるだろう?」


 宇宙怪獣はその大きさ、攻撃手段によって強さがカテゴライズされる。

 カテゴリー2であれば戦闘に慣れた兵士なら1騎の殲闘騎でも対応が可能だと認識されている。また、これは1対1の戦いの場合の認識であり、集団戦であればカドモスとカテゴリー2の撃墜対被撃墜比率は5対1程度だと言われていた。

 つまりカドモス1騎が撃墜される間に5体のカテゴリー2が落とされるということである。

 だが、最新のグラフではその比率が現在3.5対1になっていると示していた。


「奴らは、コンビネーションという概念を知り始めているようなんだ。考えたくはないがね、この数値の変化は偶然ではないだろう。今後の作戦にも大きな影響が出るかもしれん」


 グランの話は、驚くべきものであった。

 宇宙怪獣について、知性らしきものはあると推測はされていた。だが、それはカテゴリーの高いものに限られていた。低カテゴリーの宇宙怪獣は知能が無く…あったとしても低脳であるため、


「司令長官は、この原因をなんだとお考えなのですか?」


「さあな、学者たちの間でも意見が割れておるくらいだからな、わしもまだこれといった結論は出せておらん。だが、これだけは言える。今宇宙怪獣は変わってきておる」


 その瞬間、グランの目つきが鋭くなった。


「今後、既成概念を覆すような宇宙怪獣が出てくるかもしれん。前線で戦う君たちにはぜひこの点を注意して、職務に当たって欲しい」


 それは、銀河連合の宇宙艦隊を統べる者らしい迫力だった。


「か、かしこまりました」


 その迫力は、マディが圧倒されて数秒返答が遅れるほどであった。


「うん、まあ、なにか気になることがあれば司令部へと報告をしてくれ」


 マディの返答を聞き、微笑んだグランからはすでにその迫力は無くなっていた。しかし、その眼光は未だに鋭いままだということをミソラは気づいていた。



・展開等疑問点がありましたら、お気軽にご連絡ください!

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