7 黄泉からの帰還者
◇ ◇ ◇
統一時間4月9日17時00分
医務室の前には人だかりができていた。
「通してくれないか?」
マディが現れると、乗員たちが気まずそうに道を譲った。
無言で医務室の隣室へと進むマディの後ろをルーシーとビリー、そしてミソラとセレナが着いていく。
「艦長が来たってことは…やっぱり?」
「マジかよ…どうやったら生き返るっていうんだ?」
「俺…冗談だと思ってた」
「まて、まだ決まったわけじゃないだろ?」
マディが通り過ぎた後、ひそひそとした会話がミソラの耳に届いた。
「どうなってんだよ…いったい」
人間は未知のものに恐怖を抱く。
この場にいた乗員のうち、半数以上はおびえているようだった。
死者が復活するということなどあり得ない。
だが、それが自分の身近で起きていたとしたら?
そんな不気味なことが起きていいはずがない!
おそらく彼らは自分の不安をいち早く解消するために、この場に集まったのだろう。
少しでもいい、閉ざされた室内の様子を見ることができれば、そしてそこにクロウとは関係のないなにかがあれば彼らは安心することができる。
彼らは緊張した表情で、マディの背中を見つめていた。
「1度、私が中の様子を見てきます」
扉の前まで来たところで、マディは同行者たちにそう告げた。
「いいでしょう。でも、すぐに戻ってきてくださいね。私、時間を無駄に使うのは嫌いなの」
「わかっていますよ…」
マディが扉の前につけられた装置に手をかざす。
同時にロックが外され扉が開いた。
「…………」
開かれた扉の先には、少年が立っていた。
それは紛れもなくクロウ・シノサカであった。
「…っ!?」
マディの顔がこわばる。
まさか扉の前ににいるとは思わなかったのだろう。
マディの後ろにいたミソラたちも、突然の出来事に驚いた。
だが、視線だけは扉の前に立っていた少年…クロウに釘付けになっていた。
彼の姿は、ミソラたちの背後にいる兵士たちにも見えていた。
「そ、そんな…ありえない!」
「ありえないって、でも生きてるじゃん! そもそも死んだのだって何かの手違いだったんじゃないか?」
「いや、俺は確かに見たんだよ。コクピットから出てきた時、あいつはすでに…」
ある者は悲鳴をあげ、ある者は歓声をあげていた。彼らは思い思いの反応で、廊下を賑わせた。
ミソラは生き返ったクロウを見た瞬間、心臓が飛び出るかと思うほど驚いていた。
しかし、ギャラリーの熱狂によってすぐに冷静さを取り戻していた。
結果、彼女はクロウをまじまじと見つめ…
これは…本当クロウなの?
彼に対して強い違和感を覚えていた。
確かに目の前にいるのはクロウに間違いはなかったが、彼の反応がどうしても以前のクロウにかぶらないのである。
アイツなら…そう、こんな人だかりを見たら、嫌そうな顔をするはず。
だがクロウはぼうっとした表情でギャラリーの様子を眺めているのみである。
その瞳には何も映っていないようにも見えた。
それがさらに違和感を加速させるのであったが…
ミソラが、もっとクロウを見ようとする前に…
「クロウくん!」
ミソラの横にいた少女…セレナがクロウに抱きついていた。
「クロウくん! 今まで、ずっとなにしてたの~!」
セレナは、大粒の涙を流しながら叫ぶ。
「でも、ほんと、よかったよ~! クロウくんとこうして、また会えるなんて! ほんとのほんとによかった~!」
それはおそらく、セレナの心からの言葉だった。
ずっと共に訓練してきた間柄だからこそ、セレナは純粋にクロウが生きているということが嬉しかったのだろう。
彼女の喜びの涙は、生き返ったクロウを恐ろしいもののように眺めていた乗員たちの心にも、影響を与えたようだった。
誰かが拍手をした。
1人、2人…とその数が増えていき…やがて、それはその場にいた大多数の人間にまで波及した。
クロウは言葉を発さぬまま、周囲の人間と自分の胸で泣くセレナを眺めたあと、ゆっくりとセレナの頭を撫でるのだった。
結果、セレナはさらに泣くことになり…ミソラはそんな2人の様子を、なぜか複雑な気分で眺めることになるのだった。
統一時間4月9日17時05分
こうして、クロウ・シノサカの復活は艦内に周知されることとなった。
マディたちは艦内に混乱が起きるのではないかと恐れたが、このセレナの行動の効果によってか、大きな混乱もなくクロウは乗員たちに受け入れられることになるのだった。
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