33 帰還
◇ ◇ ◇
統一時間4月8日11時20分。
ドラゴン型の胴体に光が走った。体内に仕掛けられた爆弾が作動したのだ。
直後、宇宙怪獣の内側から数条の光がひらめく。光の線はだんだんと数を増やしていき、ドラゴン型の巨体は、白熱の球体に包まれた。
爆発の様子は迎撃艦シリウスでも観測できていた。
「ど、ドラゴン型の反応、消失しました! に、任務は成功です!」
オペレーターは震える声で、そう報告した。
次の瞬間、艦橋内が喜びと興奮で爆発する。
ある者は抱擁し合い、ある者はベレー帽を宙高く放り投げる。またある者は叫び声を上げた。
「艦長、やりましたね」
副長のティルスが、右手を差し出しマディに握手を求めてきた。
「ああ」
マディはティルスの右手を握りながら、頷く。
「だが、まだ報告を受けなければならないことが残っているな」
「ええ、そうですね」
2人は艦橋のホログラムモニターを見つめる。
ドラゴン型に囚われていた2人のパイロットの生死は、まだ確認できていなかった。
◇ ◇ ◇
同時刻。
シグルドパイロットたちは、ドラゴン型が爆発する様子を眺めていた。
それはまるで小さな恒星がその場に生まれたかのようにも思えるほど、大規模な爆発だった。
爆発の光がコクピットの中を照らす。シグルドによって光量が調節されていたが、それでもまぶしいと感じるほどの光だった。
爆発はやがて収まり、ドラゴン型を燃料にして燃える恒星の光も収束していく。
光の後には、飛び出すものがいなくなったホールだけが残っていた。
「ドラゴン型の反応、消失」
カンナが、静かにつぶやいた。
「それで、あいつらはどうなんだ!? ミソラたちのシグルドの反応は?」
「今探してるわ。爆発の余波でセンサーが不調なの」
アレックスの問いに、険しい表情でカンナが答えた。
現在、彼らの手元にあるセンサーからは自分たち以外のシグルドの信号は確認できていなかった。
それは、爆発によって生まれた電磁波で、センサーが本調子ではないことが原因なのか…それとも。
「アレックスも探してほしい」
「言われなくとも、やってるよ!」
「ま、待って!」
そんな2人の会話に、ジョセフが割り込んだ。
「なんだよジョセフ! お前もミソラたちを…!」
「見つけたよ! シグルドを!」
「え…!?」
「しかし、ワタシのセンサーにはシグルドの反応は…」
「違うよ! 前を見て!」
ジョセフの言葉を聞いて、アレックスとカンナが前を見る。
センサーはまだ回復していなかったが、彼らは肉眼によってそれを見つけることができた。
ドラゴン型や殲闘騎の残骸が浮かぶ宇宙の暗闇の中に1つの白い点が見えた。
ジョセフが映像を拡大する。そこにいたのは1騎のシグルドだった。
「ミソラ! セレナ!」
シグルドは爆発によって、大きなダメージを受けているようだった。
左腕は無くなり、右腕もゆがんでいる。その他のパーツも大なり小なり傷ついていた。推進器の光は頼りなく明滅を繰り返している。だが、それが彼らに希望を抱かせた。
推進器は操縦されていなければ動くことはないのだから。
「…シグルドは、生きている! ミソラたちも、きっと生きてるよ!」
ジョセフがそう叫ぶと同時に、彼らの目の前にホログラムモニターが浮かび上がった。
「こちらミソラ・アカツキ、ドラゴン型からの脱出に成功しました! みんな、ただいま!」
「こちらセレナ・ミラディ、ご心配おかけしました~!」
彼女たちの顔が浮かび上がった瞬間、6人のパイロットは機体をシグルドの元へと向かわせていた。
◇ ◇ ◇
ミソラとセレナの生存の報告は、すぐシリウスにも届けられた。
ドラゴン型撃退ですでに盛り上がっていた艦内だったが、その報告を受けると、乗員たちの歓声はひときわ高く、大きくなった。
マディは、出撃していたシグルドのパイロットたちに帰還を命じると、帽子を脱ぎゆっくりと微笑んだ。
統一時間4月8日11時30分
ガイア恒星系での戦いおよび、迎撃艦シリウスに与えられた初めての任務は終了した。
シリウス所属の殲闘騎部隊は、最新鋭のシグルド2騎を含む殲闘騎12騎喪失という大きな被害を受けたが、カテゴリー5を含む宇宙怪獣との遭遇戦、カテゴリー7の出現と、任務を通して想定外の事態が多く発生したということを鑑みれば、むしろこの程度の被害で済んだのは奇跡という他なかった。
特にカテゴリー7をたった一隻で撃退したという事実は、人類史において初めて記録される出来事であった。
ひとまず、ガイア恒星系での戦いは終わった。
歴史的な快挙を成し遂げた迎撃艦シリウスの艦内では、しばらくの間、熱狂が収まることはなかった。
作品のご感想お待ちしてます! また、ブクマ登録・評価をいただけると泣いて喜びます。




