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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第4章 ドラゴン型侵入作戦
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29 囚われのシグルド

 ◇ ◇ ◇


 ――セレナ!


 ミソラの思考がクロウの中に入ってくる。


 ――助けなきゃ!


 彼女の願いに応じて、クロウは機体の各部へと命令を下す。

 一方で、彼の中にある冷静な部分がシグルドに対して、ある計算を行うよう指示を出していた。


 もし、セレナを助けに行った場合、無事に帰ってこられる可能性は…


 1パーセント未満。

 計算結果を見たクロウは後悔した。


 だが、そんなことを考えても仕方がない。

 シグルドはすでにセレナ騎を救うために、来た道を引き返していたのだから…


 ◇ ◇ ◇


 セレナ騎は、ドラゴン型の胴体部…首元の部分まで落ちていた。


「セレナ、無事!?」


 セレナ騎の元へと到着したミソラは、パイロットの安否を確認する。


「ミソラ…どうして! なんで先に行かなかったの!?」


「アンタを置いて、行ける訳ないでしょ!」


「でも…私の機体は、もう…!」


「大丈夫。アタシの機体は無傷だから。アンタを連れていける」


「……うん」


 ミソラは、セレナ騎のステータスを確認する。

 脚部、推進器全損。左腕損傷…その他行動に支障を来す損傷が数十箇所…

 セレナ騎はすでに殲闘騎としての機能を喪っていた。


 セレナをアタシのシグルドに乗せるとして…


「おい! ミソラ、セレナ! 大丈夫か!?」


 ミソラが脱出の算段を立てているところで、アレックスから通信が入った。


「セレナのシグルドはダメだけど、セレナは無事。そっちは?」


「ああ、俺たちはもうすぐ出口だ。だけどやべーぜ。気管を移動してる間にもさっきセレナがやられたのと同じような攻撃が来やがる…」


「もしかして、誰か…!?」


「いや、それは大丈夫だ…どの機体も無傷。ただ、この道、どんどん通りにくくなってる」


 アレックスから、気管の情報が送られてくる。

 先ほどカンナが偵察機で得た情報と比べると肉のワイヤーの数が増えていた。


「それは一応俺たちが通った時のデータだ。もしかしたらワイヤーの数はもっと増えてるかもしれねぇ」


「そう…わかった」


 状況はどんどん悪くなっているということか。


「こいつの口から出たら、艦長に相談してみるよ。お前たちが出ねーとドラゴン型を倒すこともできねーしな」


「アレックスありがとう。でも、それはいいわ」


「…なんだって?」


「アタシたちは自力で脱出する方法がないか考えてみる。だから、アタシたちの脱出を待たずにドラゴン型を仕留めるって判断が下されても、艦長に文句は言わないで」


「おい! 死ぬ気かよ!」


「そんなつもりはない。ただ、アタシたちの任務を忘れないでって言いたいの。カンナ」


「なにかしら」


「今の通信、聞いてたわよね?」


「ええ。ワタシはアナタの言うとおりにするわ」


「おい、カンナ! それはミソラたちを見殺しにするって…!」


「違うわよ。何度も言わせないで。アタシたちはアタシたちで脱出の方法を考える。死ぬ気はないから。」


「……わかったよ」


 アレックスのことだ、全然納得はしていないのだろう。

 だが、彼はこの任務の重要性も理解はしていた。


「ミソラ、ワタシたちはこれから艦長に現状を報告する。艦長の命令が出たら、その内容を伝えるわ。あと、必要な情報があれば連絡して」


「ありがとう。助かるわ」


「ええ、また後で会いましょう」


「うん」


 そうして、通信は切れた。


「ミソラ~!」


「なに、泣いてるのよ」


「だって、だって~!」


「まだアタシたちは生きてる。だから、何か無いか方法を考えましょ。アタシたちがいれば、きっといいアイディアが浮かぶはずだから!」


「うん」


 ミソラはこんなところで死ぬわけにはいかないのだ。

 ここで死んでしまったら、自分を救ってくれた、アイツに申し訳が立たない。


 絶対に、生きて帰る。


 ミソラは決意を新たにすると、脱出方法を考え始めるのだった。


 ◇ ◇ ◇


 【ガイア恒星系 第11惑星近郊】


 統一時間4月8日10時30分。

 迎撃艦シリウスでは、6騎のシグルドがドラゴン型の体内から脱出したことを確認した。


 2騎、足りない…

 マディはすぐにシグルド隊へと通信を送った。


「こちらカンナ・キサラギ。目標体内への爆弾設置作業を終えて、ただいまドラゴン型から脱出しました」


 シグルドパイロットたちの顔がホログラムモニターに浮かび上がり、カンナがパイロットを代表して応答した。


「ミソラ騎とセレナ騎が出てきていないようだが…」


「はい。状況について報告いたします」


 カンナは静かにドラゴン型体内で起きた出来事について説明した。

 簡潔、だが無駄のない報告を聞いて、マディは頷いた。


「そうか…セレナ騎を助けようとして、ミソラ騎も…」


 マディの横に立つ、副長のティルスが気まずそうに下を向いた。


「アカツキ君は、自分たちのことは気にするなと言ったんだな」


「ですが、まだあいつらは死んでません!」


 その様子を見て、アレックスが怒鳴り声をあげるが。


「アレックス」


 カンナの一言で、黙り込む。


「現在のホールの拡大状況は?」


「はい、現在の直径は100メートル。現在の速度だと…あと1時間後にはドラゴン型がホール外に出ます」


 マディの質問に、オペレーターが答えた。

 次元振動砲の影響により、ホールの直径の拡大は加速度的に進んでいた。


「…そうか」


 ドラゴン型がホールを出る前には、とどめをささねばならない。

 たとえ、それまでに彼女たちが脱出できなかったとしても…


「最大でも50分だ。11時20分には爆弾を起動する」


 マディは判断を下した。


「キサラギ君。ドラゴン型体内に残る2人にそのことを伝えてやってくれ」


「…かしこまりました」


 無論彼とて、パイロットを喪いたくない。

 50分というのは、彼が任務を失敗しないギリギリの範囲で、待てる最大の時間だった。


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