23 作戦開始
■第4章 ドラゴン型侵入作戦
◇ ◇ ◇
【ガイア恒星系第11惑星近郊】
統一時間4月8日8時00分。
カテゴリー7ドラゴン型の宇宙怪獣は、その身をホールに捕らわれたままであった。しかし、休むことなく体を動かすことで徐々にホールを広げ、その前脚を宇宙空間に出すことに成功していった。
平面から胴体を飛び出させたその光景は、壁に掛けるトロフィーのようにも見えた。
先ほどの戦闘で生き残ったワイバーン型が、ドラゴン型の顔の近くを飛んでいた。殲闘騎よりも大柄なワイバーン型だが、ドラゴン型と比較すると小鳥程度の大きさだ。事実、ワイバーン型の大きさはドラゴン型の顔程度よりも小さい。それほど、ドラゴン型は巨大なのである。
あと14時間後には、ドラゴン型はホールから出ることになる。この宇宙怪獣がこの宙域で自由に動けるようになった場合、ガイア恒星系にすむ人々は、その命を喪うことになるだろう。
同時刻。
迎撃艦シリウスでは、この宙域最後の作戦が始まろうとしていた。
整備ハンガーでは、ミソラが新人整備兵から武器の説明を受けていた。
「このパイルバンカーは威力は高いですが、正確に対象に撃ち込まないと威力が半減します。あと、杭には高性能爆薬が仕込まれてますから、誘爆させないように注意してください」
新人整備兵の説明を聞き終えた後、データを受け取る。
パイルバンカー。至近距離で杭を撃ち込むこの兵器は、本来障害物を破砕するために使われるため、対宇宙怪獣での作戦で使用される機械は少ない。
しかし、今回はこのパイルバンカーが作戦成功の要となる兵器となっていた。ドラゴン型内部でこの兵器を使い、体内に高性能爆弾を仕込んだ杭を埋め込むのだ。
「あと…コンテナに関しては急造で作ったものになります。こちらもワイバーン型の攻撃を受けた場合、爆発の可能性がありますので、取り扱いには注意してください」
「わかったわ。ありがとう」
ミソラは、機体の横に用意されたコンテナを見る。このコンテナの中には上半身だけとなったシグルド――以前ミソラが乗っていたものが、格納されていた。
こちらの機体にも爆弾が搭載されている。ドラゴン型の体内まで運び込み、遠隔操作によって奥深くまで移動させる予定になっていた。
パイルバンカー攻撃でドラゴン型が落ちなかった時の保険として用意されたのだ。
「…複雑ですか?」
「なにが?」
「いや、自分の機体が爆発されるってことが…嫌なのかなって思って…いてっ!」
不安そうな表情でミソラを見る少年の額を、ミソラは中指ではじいた。
「なに言ってんの。アタシには、もう新しい相棒がいるんだから」
本心を言えば、少し抵抗はあった。
ミソラにとっては、爆弾として使われるシグルドは1年以上のつきあいがある機体なのだ。愛着もある。
しかし、だからこそ…
「…この子には、有終の美を飾らせてあげるわ」
ミソラはコクピットに入ると、息を整える。コクピット内には前回の戦闘時には存在しなかった機器が搭載されていた。シグルドの遠隔操作ユニットだ。
爆弾を搭載したシグルドの遠隔操縦は、彼女が行うことになっていた。
「生きて帰れるように、精一杯やりきってくるわ!」
「はいっ!」
左右の操縦桿を力強く握る。
認証、承認。
エインヘリアルシステムとの同期を開始。
接続、完了。
発進準備を終えたミソラは、シグルドをカタパルトまで移動させる。
数秒の後、発艦許可のランプが灯った。
アンタの作戦、乗っかってやるんだから。最後まで頼んだわよ!
ミソラは、愛機の中にいる誰かへとそう語りかけると。
「ミソラ・アカツキ…シグルド、出ます!」
機体を発進させた。
黒い宇宙の中に、純白の騎士が飛び出す。
ミソラは遅れて発射されたコンテナをつかむと、ワイヤーを使って機体と結びつける。
「ミソラ~、待ってたよ~!」
ミソラが飛び出した先には、すでに7騎のシグルドが待っていた。
どの機体も、特殊装備――パイルバンカーを身につけている。
「俺たちが、今回の作戦の要だ! しっかり決めてこうぜ!」
「アレックス…今回の作戦指示を出すのはアナタではない。ミソラがとりまとめるべき」
「わかってるってのカンナ! ほら、隊長、指示をくれよ!」
今回の作戦に限り、シグルド隊は1つの部隊にまとめて運用されることになっていた。
その隊長は、作戦発案者でもあるミソラだ。
「…アレックスが言ったように、今回の作戦の成否はアタシたちにかかってる。失敗は許されないわ。だから…アタシたちの実力を精一杯出しきって、生きて帰りましょう」
「「了解!」」
「じゃ、待機地点までいくわよ!」
ミソラのかけ声と共に、8騎のシグルドが進み始める。
強大な敵が待つ、戦場へと。
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