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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第3章 ガイア恒星系の戦い
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22 ミソラの提案

 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月8日01時55分

 マディは艦橋を出ると、作戦室へと向かっていた。

 これから艦内の役職者と共に、カテゴリー7の対策会議を開かねばならなかった。


 追い詰められた状況が、彼の歩みを重くさせる。

 しかし、いくらゆっくり歩いたところで、作戦室にはたどりつくし、それまでの間に彼がカテゴリー7を打倒するアイディアを浮かぶわけではない。


 今日の会議は長くなりそうだな。

 

「マディ艦長!」


 ため息をつき、部屋に入ろうとするマディを、誰かが呼び止めた。

 声がした方を向くと、そこにはパイロットスーツに身を包んだ、ミソラの姿があった。


「アカツキ少尉か…その格好はどうしたんだね?」


「すみません、先ほどまで機体に異常があったので…ハンガーにいました」


「そうか、シグルドの調子は…よくないか?」


「いいえ、大丈夫です。ちょっと照明にトラブルがあっただけで…」


「ふん、その程度で君を呼び出すとは、担当者には文句を言ってやったほうがいいな」


「はい、アタシの方から、しっかりと伝えておきました」


「…それで、私に何の用だね?」


 マディは作戦室のドアを見ながら、彼女に訪ねる。

 それは暗に会議が近いことを伝える態度だったが…


「カテゴリー7撃退作戦の意見具申に参りました」


 ミソラは、マディをまっすぐ見つめると、そう宣言するのだった。


 ◇ ◇ ◇ 


 統一時間4月8日02時10分

 迎撃艦シリウスの作戦室では、重苦しい空気が流れていた。

 会議に参加した役職者たちは、皆不機嫌そうな表情で作戦室正面に立つ少女を見つめていた。ミソラである。


 彼らが対策会議のために作戦室を訪れた時、彼女は艦長に対して意見具申をしていた。会話から漏れ伝えてくる内容を聞く限り、ドラゴン型を撃退する案を思いついたようだが…

 そんなことあるわけないだろう。というのが、この部屋にいるほとんどの人間の意見だった。

 彼らとて、かの宇宙怪獣が出現してから、無駄に時間を過ごしていたわけではない。艦のデータベースから情報を集め、自分の知識を動員して、効果的な策はないか考えていた。しかし、出てくる案をシミュレーターにかけても、返ってくる答えは戦闘後数時間以内に艦隊が全滅するという結果のみ。

 現在の戦力で、カテゴリー7は倒せない。それが彼らの下した結論だった。

 彼らは皆、この若い新兵の意見は艦長に一蹴されるものだと思っていた。


 しかし、彼女は今、彼らの前に立っている。艦長が彼女の作戦案に対して賛成したというのだ。

 本来それは望ましい出来事ではあるのだが…彼らのプライドが素直に話を聞こうとする意思を邪魔していた。


 ◇ ◇ ◇ 


 雰囲気は最悪ね。


 ミソラは、作戦室の椅子に座った面々の顔を見ながら、そんなことを考えた。

 彼らの気持ちもわからないでもないミソラである。急に新兵が…しかも戦術部署にもいない若者が意見具申に来たら、誰だってよい気分にはなれない。


 だが、ミソラは伝えなければならなかった。

 生き残るために…シグルドの中にいる誰かが考えたカテゴリー7の打倒法を。


「お時間をいただきありがとうございます。今回はカテゴリー7ドラゴン型の撃退案を提案させていただきます」


 ミソラは作戦室の面々に一礼すると、ホログラムモニターへ作戦案――シミュレーターの映像を表示した。

「おい、次元振動法の射出座標が間違っているんじゃないか?」


 モニターを見て、砲撃長のミゲルが指摘する。

 次元振動砲の指定座標は、威力の減衰を避けるため、ホールの拒絶領域にかぶらないように設定されていた。


「いいえ、これであってます」


「だが、これではドラゴン型の全身を捉えられないため、仕留められる確率が下がることになるのでは?」


「はい。その通りです」


「話にならんな。それではドラゴン型を倒すことなどできないではないか」


 呆れたように首をふるミゲル。


「いいえ、大丈夫です。この作戦では次元振動砲による撃退を想定していません」


「なに?」


「この作戦では、外部からではなく内部からカテゴリー7を破壊する方法を取ります。次元振動砲はあくまでカテゴリー7の口を露出させるために使用するんです」


 ホログラムモニターに新しい情報が表示される。

 次元振動砲が放たれ、シミュレーター内のカテゴリー7の顔の表皮が消し飛んだ。


「過去の戦闘データから、カテゴリー7は外部からの攻撃に対しては、高い再生能力が確認されていますが、内部からの爆発には弱い」


「第1次太陽系会戦か…」


 副長のティルスがつぶやく。まだ次元振動砲も無い時代にドラゴン型を撃退した会戦だ。

 この戦いは、人類側の敗北に終わったが、ドラゴン型を倒すことができたことが唯一の功績だった。その撃退は一隻の小型の戦闘艦艇により行われた

 駆逐艦スバル――その艦は戦闘の際に、運悪くドラゴン型に飲み込まれてしまった。宇宙怪獣の体内に入ったことで生還を諦めた彼らは、せめて一撃でもと艦を自爆させることを選んだのだ。結果、それが原因でドラゴン型は撃退された。


「もちろん、今回の作戦ではこの艦をドラゴン型の体内に入れようなどとは考えていません。殲闘騎を使います」


 モニター内に6つの光点がついた。


「高性能爆薬を装備した殲闘騎隊をカテゴリー7の体内へと投入します。シグルド部隊はドラゴン型の体内に爆発物を設置し、口が再生する前に体内から脱出。その後、爆弾を起動し目標を破壊します」


「なるほど…ドラゴン型の体内であれば、拒絶領域による影響も受けないか」


 ティルスの発言に、マディが頷く。ホールの拒絶領域はドラゴン型の体表によって遮断されるため、体内の爆発に対しては無力だということを、この2人は知っていたようだ。


 いつの間にか、会議に参加していた者たちはミソラの話を熱心に聞くようになっていた。そして彼女が話終えた時、彼女の作戦案に反対する者は誰もいなかった。

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