15 コンビネーション
◇ ◇ ◇
【ガイア恒星系第11惑星近郊】
統一時間4月7日 19時58分。
白い惑星が浮かぶ、暗い宇宙空間に無数の光が瞬いた。
迎撃艦シリウスを発進した殲闘騎部隊と、ホールから出現した宇宙怪獣の群れが、戦闘状態に入ったのだ。
レーザーライフルから発せられた光が、宇宙の闇の中を駆けていく。その射線上にいた宇宙怪獣は灼熱に焼かれ、小さな光球を作り消えた。
はじめの戦闘は、あっけないほど簡単に終わった。
殲闘騎部隊の前に現れた3体の宇宙怪獣は、先行していたシグルドα隊の射程に入ると同時に、その命を散らしていた。
宇宙怪獣を仕留めたシグルドパイロットの喜びの叫び声が、ミソラの乗る機体まで届いていた。
数秒の後、カドモス隊の熟練兵が浮かれるパイロットたちを怒鳴りつけた。
「馬鹿野郎! まだ始まったばかりだろうが!」
アタシたちも、あんな感じで浮かれてたな。
その一連の通信を聞き流しながら、ミソラは初出撃の時の自分を思い返した。
あの時の自分は、どれだけ幸せ者で愚か者だったのだろうか。
シグルドのレーダーが接近する敵影を捉えた。
ミソラは、セレナ騎へと迎撃のサインを送ると、機体を敵の群れの方へと向けた。
◇ ◇ ◇
2騎の殲闘騎で編成されたシグルドγ隊は8体の宇宙怪獣と遭遇した。
敵の姿が判別できた瞬間に、クロウは照合データをミソラへと送る。
ワイバーン型4、ヘビ型2、ヘビ型亜種が2、カテゴリーは全て2だ。
ワイバーン型は先日の戦闘でも現れた宇宙怪獣だ。細長い胴体には2つの巨大な羽型の刃がついている。トカゲ型と比べると元となった生物の特徴を捉えていると言えるだろう。見た目通り、近接での戦闘を得意としている。
ヘビ型の外観は、ワイバーン型から羽型の刃を取ったと言えば分かりやすい。つまり、羽型の刃を持っていない個体だ。近距離での戦闘を不得意とする分、光線を使った攻撃を行う。一撃の威力が高いため油断のならない相手だ。一方のヘビ型亜種は。光線の威力が低い分、散弾のように広範囲に光線を飛ばすことが可能だった。
「先にヘビ型を潰す。優先順位は亜種が先ね」
「了解」
ミソラは簡潔に指示を出すと、戦闘態勢に入った。
手近にいたヘビ型に向けて、レーザーライフルの一撃を放つ。
相手が反応したのは、ほぼ同時だった。
ヘビ型も光線を放つ。2つの閃光がぶつかり合い、小規模な爆発を起こした。
――ちっ、トカゲ型のようにはいかないかっ!
直後、ミソラが乗るシグルドに向かって、複数の光線が放たれる。
他のヘビ型たちが仲間の攻撃に追従したのだ。
ミソラの脳内に回避という言葉が浮かぶと同時に、クロウはその思考を機体の駆動系の動きへと反映させた。
シグルドは落ちる木の葉のような動きで、襲い来る光線の雨をひらひらと避けていく。光弾が数発、装甲をかすったが、大きなダメージはない。
クロウはセレナの思考通りに機体を動かせたことに胸を撫で下ろしたかったが、そんな暇はない。
次の指示が、機体に下されていた。
「セレナ!」
「おーけー!」
ミソラと宇宙怪獣とのやりとりを終えると、セレナ騎が機体を加速させ、1体のヘビ型亜種へと近づく。その手にはハルバートが握られていた。
光弾を打ち終わった直後のヘビ型亜種は懐に飛び込んできた殲闘騎に対応することができなかった。
セレナ騎は易々とヘビ型の胴体を両断すると、他のヘビ型から光線が放たれる前にその場を後にする。
一方ミソラも、セレナが敵の注意を引きつけている間にヘビ型に近づきレーザーライフルの一撃を見舞いしていた。
一瞬のうちに2体の宇宙怪獣が、宇宙の藻屑となった。
◇ ◇ ◇
ミソラが操るシグルドの操作を、クロウは補助していた。しかし、2騎の流れるような連携を体験して息を飲む。
ミソラとセレナのコンビネーションが優れていることは知っていた。彼女たちは訓練生の時から2人で班を組むことが多かったし、模擬戦では2人のコンビネーションの前にクロウは何度も敗北していた。
それは、お互いの操縦技量に対して、絶対の信頼を持っているからこそ行える技だった。
――セレナなら、あそこにいるヘビを狙うはず。なら、アタシはその間にセレナに気を取られたヤツをたたく!
再び、ミソラの思考が流れ込んでくる。
ミソラが予測した通りに、セレナは機体を動かしていた。ミソラもその予測に基づいて、エインヘリアルシステム――クロウに指示を出していく。
ミソラの戦闘予測はほぼ完璧だったが、1つ問題が残されていた。
クロウがまだ彼女の戦闘時の思考について来れていなかったのだ。
シグルドがレーザーライフルを構えると、セレナ騎へと向かうワイバーン型に照準をあわせる。
トリガーが引かれ一条の閃光が銃口から放たれた。
それはワイバーンの胴体を貫く一撃となるはずだったが、レーザーはワイバーン型の翼を貫くに留まっていた。
――激しい動きになると、反応が遅れる!
すまない…次は、もっとうまくやってみせる。
相手に伝わらないことは十分承知で、クロウは謝った。
そして、彼女の思考をより深く理解するために、感覚をとがらせていく。
ミソラが、逃げようとするワイバーン型に再度照準を合わせると、トリガーを引く。
クロウはワイバーン型の動きを読み取ると、咄嗟に機体の動きを修正する。
…今度は狙い通りの場所へレーザーが着弾した。
――次!
ミソラの思考を読みながら、クロウは機体制御を感覚的に覚えていく。
そして、宙域にいた8体の宇宙怪獣を仕留め終わる頃には、ほぼ完璧にミソラの望むように、機体を動かせるようになっていた。
作品のご感想お待ちしてます! また、ブクマ登録・評価をいただけると泣いて喜びます。




