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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【始動編】 第3章 ガイア恒星系の戦い
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14 氷の惑星のそばで

■第3章 ガイア恒星系の戦い


 ◇ ◇ ◇


【ガイア恒星系第11惑星近郊 ホール出現予測宙域】


 統一時間4月7日19時00分

 ガイア恒星系第11惑星近郊への短距離ワープを成功したシリウスは、そのまま艦を進め、カサンドラシステムが予測したホールの出現宙域へと到着した。


 艦のすぐ近くには、巨大な氷の星が浮かんでいる。

 ガイア恒星系第11惑星ケト――恒星ガイアからの距離があるこの星の表面温度はマイナス200度にもなる。もちろん人類は住んでいない。

 しかし、この惑星に人は住んでいなくとも、この恒星系には人が住む星が4つ存在する。

 宇宙怪獣の出現は、この恒星系に住む100億を超える人々の命を脅かす危険性があった。


 そして現在、この宙域には黒い穴が開いている。

 宇宙怪獣が出現する、異空間へと繋がる穴、ホールだ。

 見る場所から見れば、白い星の一部分に黒い染みがにじんでいるようにも見えるだろう。


 ◇ ◇ ◇


 迎撃艦シリウスのブリーフィングルームでは、21名の殲闘騎パイロットが集まっていた。


「現在、ホールの拡大は収まりつつある。カサンドラシステムの予測通り、サイズは2となるだろう」


 ゴードンに代わり、殲闘騎隊の新隊長となったビラーゴがそう告げると、室内正面に浮かぶ巨大ホログラムモニターにホールの映像が流された。

 宇宙空間にぽっかりと開いた平面の黒い穴は、合成映像のようにも見える。


「宇宙怪獣の出現期間は20時から22時頃まで、出現数は70から100程度と予想されている。カテゴリーの予測は1~3だ」


 ホールはある程度の大きさまで広がった後に収縮をはじめ、やがて消える。

 宇宙怪獣が現れるのは、ホールの大きさが最大になってから、その直径が20メートル以下になるまでだ


「我々の任務は、ホールから現れる全ての宇宙怪獣の撃破だ。1匹とも逃してはならん」


 作戦内容を、ビラーゴは無表情で読み上げる。

 前隊長のゴードンほどではなかったが、ビラーゴもまた寡黙な人物であった。

 ゴードンとの一番の違いは、その声質だった。もごもごと何を言っているのかが聞き取りづらかったゴードンと比べ、ビラーゴは低いなりによく通る声をしていた。


「部隊は2騎編成が1、3騎編成が5、4騎編成が1の計7隊とする。カテゴリー3以上の敵と出会った場合は、必ず部隊単位で応戦するように」


 ミソラは、目の前に浮かぶホログラムマップを確認する、彼女とセレナで編成するシグルドγ隊は、艦の右側に配置されることになっていた。


「今回の戦闘は、この艦が初めて命じられた任務だ。当初の想定よりも戦力は減ってしまったが、これでも十分に対応できると私は確信している。宇宙怪獣どもに、私たちの力を見せつけよう」


「「おお!」」


 前回のブリーフィングと同じように、威勢のいいかけ声が室内に響いた。


 ◇ ◇ ◇


 統一時間4月7日 19時54分

 ホールはその大きさを最大まで広げた。

 同時に、平面のように見えたホールの中心から、異形の怪物が次々と飛び出す。


 同時刻。

 ミソラはシグルドに乗り込んだ。

 いつものように、強くレバーを握ると、即座に機体の生体認証が始まる。

 認証、承認。


 同時に、エインヘリアルシステムとの接続を開始する。

 接続、完了。


「セレナ、準備はいい?」


「うん、大丈夫」


 僚機のセレナに確認を終えると、ミソラはシグルドを艦のカタパルトへと移動させる。

 数秒の後、発艦許可のランプが灯った。


「よろしくね。シグルド」


 ミソラは、新しい愛機にそう語りかけると。


「ミソラ・アカツキ…シグルド、出ます!」


 宇宙の闇の中へと、機体を発進させた。



 ミソラの機体に続いて、セレナ騎がシリウスから飛び立つ。

 2騎のシグルドは、機体を艦の右側へと移動させると、先行するカドモス隊の後ろに続いた。

 その時、ミソラはあることに気がついた。


 さっきよりも機体の反応がいい?


 それは、ミソラの錯覚ではなかった。

 彼女は機体のステータス画面を目の前に表示する。

 数時間前の慣熟試験の時よりも、エインヘリアルシステムとの接続が良好になっていることが分かる。


 もしかして、アタシの声を聞いてくれたのかな? なんてね。


 そんなことを考えながら、ミソラは機嫌をよくするのだった。


 ◇ ◇ ◇


 ――もしかして、アタシの声を聞いてくれたのかな? なんてね。


 …分かってくれるもんなんだな。

 ミソラの思考を受け取り、クロウは頬を緩めた。

 同時に、彼女から送られてくる命令を捌いていく。前回よりも、手際よく。


 この数時間の間で、クロウが優秀になった…というわけではない。

 次から次へと押し寄せてくる思考の波を、クロウはまだ捌ききることができないでいた。

 だが、必要な情報というものが何かを、理解することはできるようになっていた。


 慣熟訓練とその後の自主練で、ミソラがどういう思考をし、どういう動きを機体に求めるのかをクロウは学習していた。

 それさえ分かれば、彼女の思考内容から、シグルドの操縦に関わる要素だけを抽出し、機体の動きに反映させることはできる。


 …まだ、完璧ではないけど。これで足は引っ張らないはずだ。


 クロウは自分の存在が消滅することよりも、ミソラを死なせることを恐れていた。

 同僚であり、自分の操縦主である彼女が死ぬことがあれば、その瞬間をクロウは誰よりも近くで見せつけられることになる。

 その瞬間を見るのが、クロウはたまらなく嫌だったのだ。



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