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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第3章 最後の戦い
125/126

17 発進

 ホールが拡がり、次々と宇宙怪獣たちが姿を現す。


 トカゲ型、サラマンダー型、ワイバーン型…そして、群れの中には人類が未だ確認していない種類のものも含まれていた。

 その数は現在20000。拡大していくホールを見ると、その規模はさらに拡大すると予想される。それは過去例を見ないほどの物量だ。


「第1024避難部隊は定刻通りにこの宙域を離れられるよう、準備を進めてくれ。大丈夫。君たちがいなくなるまでは持ちこたえてみせるさ」


 アリーヨは、残された避難部隊の責任者にそう告げると、通信を切った。


「多いわね」

「まぁ、予想はしていたさ。彼らがこの1週間の間、どうして僕たちを襲わなかったのか…その理由を考えればこれくらいの規模が現れるのも不思議じゃない」

「備えていたってこと?」

「おそらくは…だが、備えていたのは彼らだけじゃない。そうだろ? シノサカくん」


「はい」


 2人だけしかいない司令室に、3人目の人間の声が響く。

 クロウ・シノサカ。

 エインヘリアルシステムにその意識を宿した青年の声だ。


 彼は司令室に置かれた通信機を使って、アリーヨとルーシー両者との会話を可能としていた。

 司令室で議論された内容は、クロウの意識が宿る全ての機体へと即時に共有され、またクロウからの報告も全て司令室へと届くよう設定されていた。


「宇宙怪獣の数は現在2万から2万5千程度。その数は時間経過と共に増えることが予想される。しょっぱなから時空振動砲を撃ってもいいが、ホールは射程外にあると来た…となると…」

「引きつけて、応戦する必要がある。ということですね」

「正解だ。現段階での最優先事項は避難艦隊が無事にヘビの道にたどり着くまでの時間稼ぎだ。すぐにドンパチを初めて相手を刺激するのもよくはない。ということで、急造ではあるけれど、5万規模くらいまでは対応できる作戦案を考えておいた。相手の動きを見つつ細かい修正はするけれど、まずはこの案に従って行動してくれ。」

「了解です」


 短い返答の後、通信機が沈黙する。

 クロウの意識が、機体の方へと向けられたのだ。


「頼んだよ。シノサカくん。無理はしすぎない程度に、頑張ってくれ」


 その言葉はクロウに届いているかはわからない。

 だが、アリーヨは真面目な表情でそう呟くのであった。


 ◇ ◇ ◇


 人工惑星内に設けられたハンガーではシグルドたちが出撃シークエンスに入っていた。

 シグルド、シグルドβ、そして最新式のシグルドⅡ。

 その機体1つ1つに、クロウ・シノサカの意識が宿っていた。


 自動化されたハンガーでは、機械的かつ効率的に殲闘騎の準備が行われている。

 アリーヨの作戦に従って、装備が換装され、準備が終わった機体から、順次カタパルトへの移動を始めていた。


 最初の一機目は、シグルドⅡ。

 それは偶然にも、ミソラ・アカツキが愛機としていた【最初のクロウ】が宿った機体であった。


 クロウは機体の最終チェックを行いながら、数日前に交わしたパイロットたちとの会話を思い出していた。

 クロウは人口惑星に到着した後、他の機体に宿る自身の意識と情報の共有を行い、全てのパイロットたちとの会話を記憶していたのであった。


 彼を激励する者、感謝を述べる者…

 彼らとの思い出を再生し終えたクロウは、カタパルトの先に拡がる宇宙の深淵を見つめた。

 そして、最後の1秒で…

「だから…アタシを泣かせるようなこと、しないでよ」


 ある少女と交わした言葉を思い出す。


 ――ミソラ。

 あいつは、今は無事なんだろうか。


 同時に、発進のサインが表示され、機体は戦場へと飛び立つのであった。

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