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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第3章 最後の戦い
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18 対峙する者

「よかった…アンタで、やっぱり…アンタで…アンタが…ここにいて…よかった…っ!」

 彼女が涙で顔をくしゃくしゃにしながら、そう言ったのはいつのことだったか…


 そうだ…あれは――氷の星の近くで、多くの同胞が――身体を内部から焼かれた――苦しみ――シグルドのコクピットの中での――嘆き――出来事だった…


 宇宙怪獣を率いる王――以前自らをファブニールと名乗ったクロウ・シノサカは切なさと不快感が重なった記憶を追い払おうと、意識を外界へと向けた。


 現在、”彼ら”はホールを超えてここ、アスガルズ恒星系までやってきていた。

 その目的は1つ、人類の殲滅。


 20,000を超える宇宙怪獣たちが彼の周囲を飛んでいる。

 クロウは、その一団の中でも特異な姿をしていた。


 ――ドラゴンのような胴体から伸びる四枚の翼、脚はなく、二股に別れた尾を持つ。

 顔は大きく膨れ上がった球体で、真っ赤な体色と合わせて、それは熟した林檎のようにも見えた。

 彼と同じ姿をした宇宙怪獣は、存在しない。




 それには理由があった。

 数週間前、宇宙怪獣は人類に対して一大攻勢をかけ、その生存拠点のほとんどを占領することに成功した。

 生き残った人類が、アスガルズ恒星系へと集まったという情報はすぐに彼らに伝わっていた。



 この星に対する対応を決める際に、事件が起きた。

 宇宙怪獣たちの中で意見が割れたのだ。

 すぐに攻勢をかけるべき、必勝を期すためにしばらく時間を空けてから攻撃を行うべき…そんな応酬が各個体の中で繰り広げられた。

 このような出来事は、今までの宇宙怪獣たちではありえないことであった。

 彼らは今まで、ほぼ1つに近しい統一意識の元、行動していたのだから。

 きっかけは、一大攻勢。占領時の人類の捕食であった。

 人間の肉体を吸収した彼らは、情報生命体としての特性により、人類の情報を多く得ることとなった。



 結果、彼らはクロウ1人を吸収した時とは比べ物にならないほどの情報を得ることになり、その過程で個々の自意識というものを獲得するにいたったのであった。

 この発見は、宇宙怪獣たちに大いなる混乱をもたらした。


 宇宙怪獣は、その特性上、個体が得た情報はすべて他の個体へも伝達される。

 結果、吸収された個々人の記憶はすべての宇宙怪獣へと伝達され、宇宙怪獣たちは感情というノイズにまみれた記憶を引き継ぐことになったのだ。

 怒り、悲しみ、喜び、恐怖…宇宙中にいた人類の記憶の濁流。

 それをうまくコントロールする術を、宇宙怪獣たちは持ち得なかった。

 結果、これらの記憶のコントロール――制御する役目を、クロウは担うこととなった。

 あらゆる記憶・情報はクロウを通して宇宙怪獣たちへと伝えられる。


 宇宙怪獣が今まで通りの機能を果たすために――迷いなく人類を滅ぼすために――彼は宇宙怪獣たちを制御する役目を負うことになったのだ。


 その結果、彼はこのような姿へとなった。

 情報制御能力に特化したこの姿は、新たなる王の姿でもある。



 ――ああ、見えてきた。

 ――あの星には――娘が――恋人が――友人が――

 ――死にたくない…!――にくい、憎い、憎い!――


 吸収した人々の記憶が、クロウの脳裏によぎる。

 それはこの恒星系に縁のある人の記憶。

 胸の奥が、チクリと痛む。


 ――俺は、何をやっているんだろうか。


 そんな自身の迷いすらシャットアウトして、クロウは宇宙怪獣たちへと指示を出した。


 ――進め!


 ――【すべて】を終わらせろ。


 クロウの指示に従い、宇宙怪獣たちが咆哮する。

 彼らの向かう先に、無数の白い光点が浮かび上がった。


 ――シグルド。


 宇宙怪獣を滅するための兵器。

 そして、その機体1つ1つにクロウの意識が宿っている。



 人類側と宇宙怪獣側。

 今、それぞれの勢力についた”クロウたち”の戦いが始まろうとしていた。


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