10 最後の作戦
【アスガルズ恒星系第一惑星オーディン第一宇宙港】
オーディン一の収容面積を誇るこの宇宙港には、現在銀河連合の軍艦が所狭しと並べられていた。
その中には、銀河連合宇宙軍の旗艦となったヴァルハラも含まれていた。
アリーヨが艦内にある執務室へと戻ってきたのは、会議が終わってから1時間後のことだった。
地上から宇宙港に戻るには、それなりの時間がかかる。
しかし、彼はあらゆる特権を使って、誰よりも早く、宇宙へと上がり自らの住処へと戻ってきていた。
それは無論、自らの仕事のためである。
「シノサカくん、いるかい?」
アリーヨは執務室に入るなり、机の上に置かれた筐体へと声をかけた。
「お疲れ様です。司令」
1秒の間もなく、筐体からクロウの声が返ってきた。
「そんなことはないさ」
そう軽口を叩くアリーヨの顔には、疲労の色が見て取れる。
だが、彼は自らの体調を気にする前に、クロウに告げなければならないことがあったのだ。
「シノサカくん」
「やります」
「…まだ、僕はなにも言ってないんだけどね」
「わかりますよ。ヴァルハラ内に残されていたドキュメントは、読みましたから」
その言葉に、アリーヨは苦笑する。
「やれやれ、この艦のセキュリティは穴だらけ…ってことかな」
「僕にとっては…ですかね。なんせ僕は人間じゃありませんから」
「うん? まぁ、そうか」
人間じゃない。という言葉に引っかかりを感じつつも、アリーヨはうなずく。
「それで司令。僕を呼んだということは…」
「ああ、そうだ。君に頼み事がある」
「やります」
「…詳細は聞かなくてもいいってことだね?」
「はい。さっきも言ったように…」
「君にはすべてお見通しってわけだ」
やれやれ、アリーヨは首をすくめる。
そして、一拍の間のあと、表情を引き締めた。
「君には辛い思いをさせることになる。それでも…本当にいいんだね?」
「もちろんです。僕には…それが、これ以上人類の被害を少なく済ませる方法ですから」
その答えを聞き、アリーヨは筐体に背を向ける。
そして…
「君自身は人類の数に含まれてないと、君もそう言うんだね」
クロウに聞かれないよう、静かにそうつぶやいた。
◇ ◇ ◇
統一時間12月1日 00時00分
銀河連合はアスガルズ恒星系に残った全ての人類に対して、開拓不可能中域――シャングリラへの移住命令を発布した。
移住開始は1週間後の12月8日。
生き残った全人類は、ヘビの道の入り口へとワープし、そこからシャングリラを目指し長い旅路へとつくことになる。
人類は故郷を捨て、新天地へと向かうことを決めたのであった。
クライマックス直前で、更新が遅くなり申し訳ございません。
最後まで書き切ろうと思いますので、なにとぞ応援よろしくお願いいたします。




