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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第2章 逃亡
116/126

8 絶望の中で

 ◇ ◇ ◇


 統一時間11月17日 18時00分


【アスガルズ恒星系内 緊急時用トランジットポイント】


 虚空の宇宙に光が走り、次の瞬間500隻を超す艦船が姿を現した。

 それは迎撃艦母艦ヴァルハラを中心とする特務艦隊、そして数日前彼らの援護によって救われた北方開拓船団の生き残りたちであった。


 ヴァルハラが、新たに首都星となった惑星オーディンへと向かって動き始めると、後ろに続く船たちもそれに続いた。そのどれもが傷つき、汚れており、つい数日前に新たな惑星を探しに旅に出た船たちとは、誰も思わないだろう。


 何の情報も持たずに、この列を見たものは、きっとこう思うはずだ。

 これは敗残者たちの列なのだと。


 ◇ ◇ ◇


 2日前に軍司令部より下された命令を受けてからというもの、ヴァルハラの艦内では殺伐とした雰囲気が充満していた。


 銀河連合所属の全ての艦艇は、12時間の間に避難民を救助し、オーディンへと集結するように。


 それは、無茶な命令であった。

 12時間で、避難を完了させることなど不可能なのだ。

 特にオーディンは開拓船団の救出に出ていたところで、この命令を受けたため、開拓船団の生き残りである600万の人々以外に、誰も救助することができなかったのである。


 その事実は、艦内の――さらには開拓船団の人々をいらだたせた。

 その結果か、道中無断で艦隊を離れる船が何隻も現れる事態まで起きていた。


「俺たちの生まれ故郷を救わない軍に、従う必要なんて無い!」


「俺たちの仕事は宇宙を開拓することだ! 宇宙怪獣どもの侵攻を受けない理想の惑星を、今から見つけ出してやる!」


「どうせ死ぬなら、せめて故郷を見てから死にたい」


 離脱者の言い分は、大きく3つのものにわけられた。


 離れていく船を、アリーヨや船団の人間達は止めることができなかった。

 警告を出したところで、誰も話を聞かなかったのである、結果、80隻近い船が艦隊を離れてしまった。


 同じような出来事が、他の艦隊でも起きたということを、アリーヨを含めて銀河連合の高官たちは知っていた。


 だが、誰もが口をつぐみ、それ以上のことは言わなかった。


 そうしなければ、さらなる離脱者が生まれ、人類の損失が増えるということを、皆分かっていたからである。


 状況は最悪であった。

 たった数時間のできごとで、人類はその勢力の半分以上を失ったのである。

 昨日までの栄光はどこにもなく、人々の希望は、安寧は打ち砕かれたのである。


 だが、それでも一部の人間はわずかな可能性を信じ――もはや存在しないかもしれない希望にすがり、船を進ませるのであった。


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