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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第2章 逃亡
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7 人類の…

■第2章 逃亡


 ◇ ◇ ◇


「サンタ・マリアから全人類の同胞へ、サンタ・マリアから全人類の同胞へ、こちら極限宙域開拓船団代表、ヤバ・ターニェン! ゼウス出航から17年と59日目にして、我々はヘビの道をついに突破した!」


 統一時間11月15日

 その通信はヘビの道と呼ばれる通過困難区域から、17年前に人類生存圏として記録されていた宙域へと向けて、全チャンネルを使って送られていた。


「そして1番大切な報告をしたい…17年前、私が言った言葉。ヘビの道の先にあると話した人類の居住可能惑星…シャングリラについてだが。ああ、あったとも…だが、それは1つではない。我々は7つの惑星を発見した!」


 その声は、喜びと興奮と感動が混じりあったもので、かすかに震えていた。


「ああ、こんなことになるなら、17年前の私は大規模船団を用意して出航すべきだった。総数が30万にも満たない小規模船団じゃ、他の6つの惑星の開拓まではできないからね…それにここはヘビの道の先、人も簡単に増やせないと来た…」


 その通信は、17年前、ワープ航法による開拓不可能宙域に向けて旅立った極限宙域開拓船団代表、ヤバ・ターニェンからのものであった。


 彼は17年前、開拓不可能宙域の先にシャングリラという人類居住可能惑星を見つけ出し、自らがその開拓者となるため、50隻の開拓船を率いて旅立った。


 だが、その道程は困難を極める。

 不安定な恒星が並ぶ他、無数に点在する小惑星帯によって超長距離ワープは使用ができず、その他、ありとあらゆる障害によってシャングリラへと向かうには、狭く細い、それでいて長大な道のり――ヤバはこれをヘビの道と呼んだ――を

 進む必要があった。


 ヘビの道は、その複雑な形状により、中~短距離ワープ、もしくは開拓船の独自航行しかできないと診断された。

 だが、ヤバはあえてそれをよしとし、そしてそれに付き合う30万の船員たちと共に、航海に出たのだ。


「だが、そんなことはどうでもいい! 我々はやりとげたのだ! 人類の新たなる挑戦を! 我々はすでに1つ目の惑星の開拓をはじめている。もし私の冒険のことを覚えてくれている人が居たら、メッセージを送って欲しい」


 そのメッセージには、暗い宇宙に浮かぶ7つの惑星の映像も添付されていた。

 その大気組成はどれもが環境改変をせずとも人類が居住できるレベルのものであった。


 この偉業は、本来であれば人類全体が注目する出来事であった。

 しかし、不幸なことに、人類はこの日宇宙怪獣の襲撃を受けてそれどころではない状況であり…よって、このニュースは宇宙怪獣の襲撃を受けていない、平和な惑星で小さく報道される程度であった…


 ◇ ◇ ◇


「なによ…これ」


 宇宙怪獣の襲撃を撃退したミソラは、母艦ヴァルハラに戻った後、ホログラムモニターに映った映像を見て、絶句した。


 彼女だけじゃない、その場にいた殲闘騎パイロットたちの誰もが、モニターに映る惨状を前に、何も言えずにいた。


 それは、オリュンポス恒星系を襲った宇宙怪獣が、人類の首都星ゼウスの守備隊を蹂躙し、今まさにゼウス内へと降下しようとしている映像であった。


「これは趣味の悪い、フィクションでもなんでもない。現実だ」


 彼らの前に立ったアリーヨの表情に、いつもの余裕はない。


「この後、宇宙怪獣は赤い幕のようなもので惑星を覆い隠した。その後ゼウス内部との通信は途絶している…」


「ゼウスにいる人々の状態は…?」


「残念ながら不明だ…だが、最悪の事態を想定しておいたほうがいい」


 アリーヨの回答を聞き、何名かが悲痛な叫び声をあげた。

 おそらくゼウス出身か、ゼウスにゆかりのある人物がいたのだろう。


「オリュンポス恒星系内にある人類居住惑星は、全て同じような状態になっている。赤い幕で覆われて、内部との通信は不可能。無人衛星による記録も取られていたが、そのことごとくを宇宙怪獣に破壊された。話はそれだけじゃない…」


 ホログラムモニターが、星図へと切り替わる。

 その中の20の恒星系が赤く光った。


「オリュンポス恒星系を襲ったものと同程度の集団が、20の拠点を襲撃…うち16箇所が、同じように宇宙怪獣の手に堕ちた。首脳部はこの事態を受けて、首都星をアスガルズ恒星系第一惑星オーディンへと変更。銀河連合軍所属の全ての艦艇に対して、可能な限り避難民を救助した後、オーディンへと集結するよう命令をくだした…避難民収容のリミットは12時間だ」


 その言葉に、室内がざわめく。


「12時間なんて…そんな、合ってないようなものじゃないですか!」


「取り残された人々はどうするんですか!?」


「そもそも、避難民を集めても、アスガルズ恒星系内に人を収容できるキャパシティなんて…」


 隊員達の発言に対して、アリーヨは何も言い返すことはしなかった。

 だからこそ、その場にいる者たちは、次第に理解していった。


 人類が、同胞を見捨てるということに…

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