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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第1章 激突
114/126

6 ホール

 ◇ ◇ ◇


「ミソラっ!」


 クロウの叫び声を聞き、慌てて機体の動きを停める。

 機体は穴に触れる直前で、ターンした。


「これって…」


 機体を穴から離れさせながら、ミソラは機体が記録した映像を確認する。

 それは彼女が、今まで戦場で、何度も見たことのあるものだった。


「ホール?」


 宇宙怪獣が移動の際に使用する、亜空間へとつながる大穴。


「でも、どうしてこんな急に!? ホールが現れる前兆なんて、なかったじゃない」


「わからない、でもとにかく、離れるんだ!」


「え、ええ」


 指示に従い、機体をホールから遠ざける。

 ホール表面には拒絶面が存在する。もしそれに触れた場合、機体は有無を言わさず押しつぶされてしまう。


 機体を動かしている間にも、ホールの直径は拡大していく。

 その大きさは、今まで彼女が見たどれよりも、巨大なものであった。


「こんなの、見たことない」


 このホールは、3つの意味で不可思議なものであった。


 1つ目は、発生の前触れがないこと。

 ホールはその発生以前から出現が予想される。しかし、現在この宙域でホールが現れるという予報は出ていなかった。


 2つ目は、成長が早いこと。

 ホールはその最終系が巨大であれば巨大であるほど、拡大に時間がかかる。

 しかし、このホールは急速にその直径を広げていた。


 3つ目は、色。

 通常のホール表面は黒い。まるで宇宙に開いた大穴のようである。

 しかし、今回のホール表面は白く、まるでその部分だけに白い絵の具が垂らされたかのように見えた。



 調査の必要がある。

 ミソラは、拒絶面に触れないよう注意しながら、ホールとの距離を一手に保とうとコクピットレバーを握る。

 その時であった。


「ミソラっ!」


 切羽詰まった声が、ミソラの脳へと届く。

 ミソラは意識を向ける方向をホールから、機体周辺へと切り替えた。


 敵が、来た!?


 しかし、機体の周りには、ミソラの障害になりえそうなものは、何もない。


「何だって言うのよ…」


 一瞬、気が抜けそうになるミソラであったが…

 次の瞬間、レーダーが捉えたある物体の動きを確認して、驚愕した。


 ミソラの頭の中には、エインヘリアルシステムを通して、投射されたマップが浮かんでいた。

 その地図には色とりどりの光点が強弱あわせて点滅し、それが敵や味方の位置を識別できるようにしていた。

 その中の1点、周囲の光点と比べて、ひときわ輝く光が、ミソラたちの元へと、向かってきていたのである。


 その光点の名は…


「ドラゴン…型!?」


 宇宙怪獣の最大の脅威にして、この戦場で暴虐の限りを尽くした悪魔が今、ミソラたちの元へと一直線に向かってきていた。


「ミソラ!」


「わかってるっての!」


 瞬間、ミソラはフッドペダルを最大まで踏みこむ。

 同時に機体はドラゴン型から距離を離そうと急加速を始めた。


「うぐぅっ…!」


 機体にかかるGによって、ミソラの口からうめきが漏れる。


 だが、それでも、ドラゴン型に攻撃を受け、宇宙の藻屑と変わるくらいならば、その苦しみの方が断然ましだった。


 ミソラには、ドラゴン型と対峙した際に、戦いを優位に進めるアイディアがあった。

 しかし、それは自らがドラゴン型の元へと攻め入った際に発揮されるものであって、敵からの攻撃に対して有効なものではなかったのである。


 脳内のマップには、徐々に機体に近づいてくる光点が表示されている。


 このままじゃ…なにもできずに…アタシ!


 全てを諦めてしまいそうになった、その時であった。


「…えっ?」


 マップに変化が生じ、思わずミソラは自身の頭を機体の背後へと向ける。


 機体の背後、さっきまでドラゴン型の姿があった宙域には、もう何もいなくなっていた。


「…どういうこと?」


 疑問を口にするのと同時に、ミソラは先ほど目の前に展開したホールが、消えていることに気づいた。


「もしかして、あのホールって…」


 予想外の出現、不可解な展開速度、そして通常とは異なる色…

 そして、消えたドラゴン型。


 それら全てのイレギュラーを受けて、ミソラの中に1つの仮説が生まれた。


「ドラゴン型は…逃げたっていうの?」


 ミソラは、クロウを通じて機体が捉えた記録映像を再生していた。

 10秒ほど前、ドラゴン型が消える瞬間の映像を。


 そこでは、ミソラの予想通りの出来事がおきていた。


 ドラゴン型はホールへと一直線に向かい。

 そして、それに触れた瞬間、姿を消したのだ。


「どうして…? 戦いは、あっちの方が圧倒的に優勢だったのに」


「でも、これで残る敵は雑魚だけだ。俺たちの戦いはずいぶん楽になる…」


「そうだけど…」


 強敵が逃げたという事実に、納得がいかないミソラである。


「ほら、ミソラ…」


 そんなミソラを気遣ってか、クロウが声をかけた。


「え、ええ…戦いを続行しましょう」


 クロウに促されて、ミソラは機体を再び動かし始めるのだった。


 ◇ ◇ ◇


 統一時間11月15日 20時00分。

 戦闘用艦艇による次元振動砲の一斉発射により、大規模船団を襲った宇宙怪獣の群れは、そのほとんどの戦力を失うこととなった。


 結果、人類はこの戦場において宇宙怪獣の襲撃を乗り切ったが、大規模船団はその5割以上の人員、艦艇を失うこととなった。その被害は開拓者たちにとって非常に大きなものだった。


 疲弊し、憔悴しきった人員たち…

 そんな彼らの元に、凶報が届いたのは、統一時間11月15日20時38分のことであった。


【人類勢力圏内20箇所に宇宙怪獣の群れが出現、うち13箇所では防衛艦隊が壊滅、敗走中】





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