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銀河のドラゴンスレイヤー  作者: 藍沢洗
【原動編】 第1章 激突
112/126

4 シグルドⅡ

 統一時間11月15日 19時35分。


 ヴァルハラの主力部隊が到着した時、ミソラが見たのは絶望的な戦況であった。

 数時間前、総数1200を超えていた開拓船団の艦船たちのうち、30パーセント近くの船が、この1度の襲撃で沈められていた。


 さらに、戦場にはあのカテゴリー7、ドラゴン型までいる。

 被害は1秒ごとに増え続けていたのだ。


 戦場に到着すると同時に、ミソラは自らの使命を認識した。

 少しでも仲間の被害を減らさなければならない。


「アレックスとアインの部隊は開拓船団の直援、他は予定通りアタシと一緒に、宇宙怪獣の群れを引きつけるわよ!」


「了解!」


 ヴァルハラ所属の殲闘騎部隊は、集団で宇宙怪獣の群れに突撃するという当初のプランに変更を加え、味方の援護に向かわせる別働隊を組織する。


「大丈夫。この機体がいれば…」


 ミソラは1人、コクピットでそう呟くと、機体を急加速させた。


「ミソラ!?」


「速すぎるよ~」


「状況はアタシたちが想定していたよりもひどい! だから、アタシは先に行って宇宙怪獣の数を減らすわ!」


 ミソラの視線はすでに、宇宙怪獣の群れへと向けられていた。


「クロウ!」


 叫ぶと同時に、彼女が目指す先にいる宇宙怪獣たちの情報が脳内に届けられる。


 カテゴリー4が8、カテゴリー3が22…


 一方、そこで戦っている味方は、シグルドβが7騎。

 クロウを搭載した機体だ。


 だが、それであっても圧倒的な数の差に、戦力を削られつつある。


「突っ込む!」


 ミソラの声に反応して、ブースターに火が灯され、機体はさらに加速する。

 群れに向かいながらも、シグルドⅡはウェポンボックスから一振りの剣を取り出した。

 対宇宙怪獣用近接兵器――グラム。

 ナノメタルによって形作られた防御不能の、最強の剣である。


 グラムの刀身がエメラルドグリーンに染まり、緑色の残像が宇宙を走る。


 3、2、1…


 群れに飛び込むと同時に、シグルドⅡは3体の宇宙怪獣を切り裂いていた。


 生き残った殲闘騎のパイロットたちは、はじめ何が起きていたいのか、認識ができていなかった。


「こちらヴァルハラ所属、殲闘騎部隊長のミソラ・アカツキよ!」


 だが、ミソラの声を聞き、思考が追いつくと皆一様に歓声をあげるのだった。


 彼女の名前と武勇は、銀河連合の中でも広まっていたのだ。


「ミソラ・アカツキってあの! しかもこのシグルドって最新鋭の!」


「俺たち…助かるのか!?」


 そんな声を、BGMにミソラは機体を動かした。

 すでに、乱入者に対して攻撃をしかけようと、カテゴリー4が4匹同時に、彼女に攻撃をしかけていたのだ。


 宇宙怪獣の口らしき器官から、棒状の杭が飛び出る。

 しかし、その切っ先は誰も捉えることはなかった。


 ミソラは、攻撃を認識すると同時に、必要最低限の動作で杭をかわし、グラムを振るっていたのだ。


 同時にエメラルドグリーンの刀身が、伸びる。

 粒子化したナノメタルは、剣の形状だけに留まらない。

 使用者の思考に応じて、その姿形を自由に変えることができていた。


 結果、杭を放った宇宙怪獣の顔面にナノメタルの粒子が触れ、数瞬も待たずにその部位が爆発する。


 その光景を見届けることなく、ミソラは機体を踊らせていた。

 ウェポンボックスからレーザーライフルを取り出すと、友軍機を襲おうとしていたカテゴリー3を射抜く。さらにグラムを振るい、体勢を立て直そうとした宇宙怪獣の命を奪う。


 無駄が全くない、洗練された動き。

 その光景を見た者たちは、皆、目を疑った。


 こんな機体動作は、見たことがない。


 シグルドⅡは全方位に目がついているかのように、次々と襲いくる宇宙怪獣を斬り伏せていく。


 宇宙怪獣たちは全て、シグルドⅡを倒そうとしているにも関わらず、やられるために動いているようにも見えた。


 これは舞台の一場面なのではないか?


 そう思うパイロットさえいた。


 いつの間にか、このエリアにいる宇宙怪獣の数は10を切っていた。

 形勢が、最新鋭殲闘騎1騎の乱入によって逆転したのである。


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