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トマトケチャップとにやけヅラ

揚州淮南群寿春。その評定の間のど真ん中に二人の勇士が眼前のポッチャリに頭を垂れて拝礼をしている。

拝礼をしている片割れは、無骨な体躯にステキ除雪車髭と半開きの瞼。もう片方は気の良い雄才オッチャンと言ったところだろう。

また対面のポッチャリは、痩せてれば良い感じのダンディ爺だったろう残念感を漂わせ、玉・・・翡翠と言った方がわかりやすいだろうか。それら宝物を撫で倒してる成金趣味っぽいポッチャリだった。


何を隠そう拝礼をしてるのが張邈と魏続で二人の前に偉そうに座ってるポッチャリは袁術である。


あの後、数日かけ漸く寿春に着いた一行は寿春に到着しすぐさま袁術に面会したのである。


さて此処で、群雄割拠著しい今の状況を極絶簡単に語ろう。


現状大まかな流れとして後漢巻き込んだ袁紹と袁術の兄弟喧嘩。

袁紹だいぶ有利で継続中。


曹操は袁紹とは同盟中だが対呂布戦で遺恨が有り亀裂が入っている。


徐州は故州牧陶謙が袁術寄りだったが劉備に代わってから袁紹に鞍替えしようか思案中しかし曹操と劉備は敵対中。


呂布は曹操と敵対中だが実質敗北。袁紹、袁術とも関係は微妙。

そして今は劉備のヒモ。


張邈は曹操と戦争中。但し実際は弟がギリギリの抵抗。

ザッとこのような状況である。


「フォフォフォ。

さて張殿。ついで魏将軍よ、よく参った。

確か呂布への援軍の相談じゃったかな?」


思案顔で、だが内心見下し、嘲笑いながら今回の交渉内容を問う袁術。

まぁ、彼からすれば袁術の予想する交渉内容。彼らの援軍要求など物乞いに他ならない。だが既に曹操にボッコボコにされた状態で満身創痍と言った状況の者達の交渉だという事は対価に何を求めても文句は言われない。此れからの交渉結果を想像しニヤニヤしていた。


「いえ、袁左将軍。

豫州に少しの兵を展開して頂きたく。」


だが、張邈の反応は違った。袁術は張邈が援軍を願い懇願すると思っていたのだが、ただ兵を集め展開させるのみで良いと言う。

滅茶苦茶焦る袁術。もう彼の頭の中では呂布を使って曹操をボコボコにし次いで徐州、青洲を入手するところまで来ていたのだが早速当てが外れる。


「・・・ほう。ただ兵を豫州に配すのみと?

其れとは別に援軍を出しても良いが?」


「おぉ!!なればこの張邈、左将軍に飛将との縁を再び繋がせてみせましょう。」


飛将とは呂布を古の名将李信になぞらえたものである。


「フォフォフォ。

ほう、飛将のぅ。それで魏将軍か。

だが正しくは飛将では無く覇王の如くでは無いかの?覇王が人の下付くともは思えんが。」


コレは、戦の巧さだけでは無く人徳もあった飛将李広では無く戦はうまいけど人心を得ず最後に破滅した項羽じゃねーかと言いたいのだろう。

要は呂布とか信用できねぇからもっとコッチに利益よこせと言いたいのだ。


実は呂布と袁術、知り合いである。

呂布が長安を脱出後に袁術に庇護を求めたのだが呂布が玉璽や皇帝、当時の司徒など権力の架け橋たるものを持っていないと知ると呂布の兵が多かった事もあり反乱を恐れ掌を返して追い出したのだった。


最初は、わしマジで先見の明ありすぎじゃねぇ!?と周りの者に言いながらほくそ笑んでいた袁術であったが異母兄袁紹の元に呂布が行ったと聞いた時には呂布を追い出すように進言した家臣に罵詈雑言を吐き、黒山賊を粉砕した報を聞いた際に終ぞその家臣を手打ちにした程度には、呂布の戦力を惜しんでいた。


故にそう言う意味では袁術からすれば渡りに船ではあった。自分の策とも合致する。

但し呂布が裏切らないと証明できればだが。


「・・・頂けるというのなら欲する援軍は豫州に出す兵含めても一万。

呂布の兵が二千。劉備の兵が五千。」


「劉備だとっ!!!!!?

貴様ら劉備の元を離れて参ったのでは無いのか!?」


よれたタコ焼きを引き延ばしトマトケチャップを叩きつけたような顔になりながらブチ切れる袁術。

自から取る予定だった徐州を奪い、更には袁紹に鞍替えそうとしている者の名が出て来て憤怒した。


だが、平静を欠いてはいけないと豫州近辺に出た大規模な賊討伐のため出兵した袁術の諌め役である鄭泰と紀霊の代わりに一人の文官文官しいヒョロ男が慌てて袁術に進言する。覚えているだろうか彼こそ袁術と共に策を練り練りしていた者だ。


「お待ちください、我が君。」


「何だ!!楊弘!!」


*楊弘 ??・・・(ようこう ??)

史実では袁術がボコられた後、孫策を頼ろうとするが道中で劉勲の待ち伏せにあって死亡したとしか書かれていない。・・・何故書かれたのだろうか。

演義の方では何故か楊大将という名で登場して軍師っぽいことをする。史実よりは活躍してるが正直なところ誰この人ってなる。

字不明の為演義から捥ぎ取って大将にしますハイ。


「落ち着いて考えるのです我が君。


鄭軍師が曰く実質捕虜にした賊は百万に届かぬそうです。

私が愚考いたしますに兵として使える者は九万前後。直ぐに兵として使える者達はさらに少ない。

さらにその青洲兵を得たとは言え陶謙、劉備、呂将軍の軍勢と連戦し現状張太守の弟であらせられる張太守の居る陳留群に全力で攻め入っている事から見て曹操が直ぐに動かせる兵力は一万行くかどうかに御座います。呂将軍なればその程度五千も兵が居ればどうとでもなりましょう。

そして、恐らく劉備から出される将は関羽、劉備率いる五千。」


『・・・成る程、曹操は呂布と劉備の連合軍に全力を持って当たるという事か、なれば豫州に空白の地ができ我らに余力が出来るとな?』


何かに気づいたのか顔をニヤァと歪める袁術。なかなかにキモい。良が居れば色の悪い腐ったトマトを連想するだろう。


「フォフォフォ。黙認するかの?」


袁術の問いに対し豫州の者がブチギレるだろうなぁと思いながら、袁術に返答する魏続。


「兗州が我らの物になれば黙認いたします。否、兵なき我らはせざる終えません。


民を虐殺した者を打ち倒したとあればその名声たるや。そして我らは袁紹からの盾となります。」


名声。その言葉が袁術の耳に入った春歌袁術の顔がみるみる機嫌の良さそうと言うかニヤニヤしだす。


「フォフォフォ!!

良いのフォフォフォ!!」


袁術が手を叩き喜ぶ。

例えるなら・・・タンバリン持った猿のオモチャの様と言えば良いだろうか。

まぁ、無理もない揚州の九割豫州の四割を手中に収め馬鹿みたいに募兵している袁術からすれば、一万の兵はギリ何とかなる。民心なんて糞食らわせてミドルキック状態だが。

そんな袁術だ、デメリットなどほぼ感じていない。呂布を手駒とまで行かないまでも味方に出来るし策の裏に何が有るかを鑑みても、その時には孫策が揚州の支配を確立していると考えられる為、幾ら呂布と陳宮が居ようとボロボロの兗州一つ程度なら力押しでどうとでもなると考えていた。何より裏切ったとして呂布軍の中に埋伏させた者もいる。

だがそんな事より自分の欲する名声。それを想い高揚感を感じながら先の未来を想像する。


鄭泰が居れば熟考すべしと進言したろうが・・・つーかこの前孫策にもくれてやっちまったのも含めて兵出し過ぎ、せめて豫州に兵を展開するだけにして呂布に恩を売るのみにしとけとツッコむだろうが袁術は了承するのだった。


後にこの会談内容を聞かれ魏続と張邈は纏めとしてこう言う。


「「交渉が簡単すぎて逆に焦った。そして何より袁術の百面相を笑わないようにするのが辛かった。」」

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