第三十七話 「年越しカウントダウン」
12/20。今年も残り20日で年が明ける。建国まで「まだ20日もある」と考えるか「もう20日しかない」と考えるのは人それぞれだ。
村人や移住民達も年越しの準備に忙しいようで慌ただしく国内を駆け巡っている。
そんな中、わしは、役所の最上階の窓から広場を見ていた。
朝から人事の会議をしていたがある程度決まったので今は休憩している。
ギルドのお蔭で個人情報が手に入るのが有り難い。元の世界では考えられないが有効利用させてもらう。
その中で気になったのは、王族、貴族等の身分が高い者と闇ギルドに所属していたの者達だ。
王族や貴族達は、面談の時に「国を捨てて来たので一般市民として扱ってほしい」と言われた。
しかし、持ってきた荷物の量だけで部屋が埋まっている。<女神の奇跡>のお蔭で自分の常識が一般市民とかけ離れている事に反省していたのでそのうち慣れるだろう。
闇ギルドと言っても義賊の様な者達で悪人だけを懲らしてめいたらしい。人殺しではあるがわしは嫌いではない。世の中に必要悪は必要じゃ。
彼らは、全てわし直属の情報局として雇う事に決めた。この国に悪人はいないが彼らならうまく国民の動向を調べてくれるだろう。
税金は人員削減の為、ギルドから回収することにした。ギルドの職員は眷属達なので不正もなく人よりもはるかに能力が高いので任せても問題ないじゃろう。
しかも、ギルドには設立からの運営のノウハウが蓄積されている。
例えば、農業ギルドなら今年の取れ高の予想出来るし、工業ギルドなら鉱山の採掘量もコントロールもできるじゃろう。こういうのはプロに任せるのが一番じゃ。
試練の塔からの魔石は国で管理しようと思っていたが、どうせ大半は空中庭園の維持で使われるので商業ギルドに任せることにした。
ギルドと言えば、空中庭園に奉仕ギルドが追加された。あまりにも人気が出てしまって、聖獣や眷属では手が足らずに作られた。奉仕ギルドとは、執事やメイド達を教育・派遣・管理するギルドじゃ。そのおかげでわしの城にも執事とメイドを雇う事が出来た。
そして、やっと村人全員にギルドカードを作らせることが出来た。これで自分がどのギルドと関わりが深く、また、ギルドのノウハウも手に入るので生活も楽になるだろう。
国民はギルドに現金、魔石、作物等を納める。ギルドの眷属達は魔石で給料を支払われるので現金が残る。ギルドは国に現金で税金を納める。国は国民の為に税金を使う。
うむ。完璧な金の流れが出来た。
移転者は合計で2800人にもなった。奉仕ギルドや移転者の家族も入っているのでこれ位は増えるのは仕方がない。
神々の思惑なのか戦闘ギルドと魔法ギルドの関係者が1700人にも及んだ。お蔭でパーティー募集者が溢れ出したので落ち着くまでは第2広場内に臨時にコーナーを作る事になった。
通常は戦闘ギルドの中にコーナーが作られていてそこで仲間を見つけるのだが今は仕方ない。ほとんどの者が新たに仲間を探さなければいけない状況になっている。
トラブルを避ける為に法律でパティー内での報酬は頭割りにする事を決めた。
ギルドでは、そこまでのルールが無かったのでわしが決めた。これにより、レベルが低い者が安くこき使われる事はないだろう。
ちなみに試練の塔は新年まで入いる事を禁止した。まだ建国やギルドの準備が終わっていないので塔の管理までは手が回らないのが現状だ。
その代りに、塔の前に巨大な訓練所を作ったので皆そこで訓練している。パーティーの連携の確認をしている者が多く、上手く連携が出来ない者はパティーを抜けて別のパーティーを探す者もいる。
実戦では連携が取れなければ死に繋がるので、訓練所は必要だったようじゃ。
塔を解禁しても残すのが良いのかもしれん。
ギルドが出来た事により必要な物は転移陣で運ばれて来るようになったので、人口が急増した今でも品薄にはならなかった。建国するまではギルドで直接買える様にして、年が明ければ商売を始められるようにした。場所によって売り上げが変わるので不公平にならない様に気をつけなければならん。
時が経つのは早く、気が付けば12/39になっていた。
国政についての会議も最後の調整に追われている。もう5日は寝ていない。わしとおさきは慣れているので問題ないが高齢なラトは辛いようで再生魔術を受けながら気力で持ちこたえている状態じゃ。
予定よりも大分遅くれたが何とか19時には全てを完了させた。
昼には終る予定だったが神々の我儘が入り、遅れてしまった。その時のおさきの怒りようは凄まじかった。鬼の形相になったおさきは、高笑いを始めると次第に周りの書類が勝手に燃えていく。徹夜の成果を燃やすわけにはいかないので、慌てて止めたが怒りが収まるまで燃え続けた。わしは炎に包まれながらもおさきに抱き着いて何度も呼びかける。怒りが収まった頃にはわしは、全裸になっていた。ふぅぅ。なんとか被害を最小限で食い止めた。
うむ。久しぶりじゃ。再生魔術で治癒しながら炎で焼かれ続けたのは、昔はよくルル様の特訓(拷問)で味わったのが懐かしく思える。
おさきは怒りが収まると各女神達の眷属の中でも頭脳派達を拉致して会議を進めた。眷属達が文句を言おうとしたがおさきの迫力に負けて何も言えずに書類に目を通していた。
まっ。おさきにしたら結婚式の準備がしたいのだから仕方がないが二度とあの顔は見たくない。
仕事を終えたわしとおさきは直ぐに風呂に入って身を清める。建国の宣言と結婚式の準備が待っているのであまりゆっくりと風呂には入れなかった。
建国の宣言は古城でする予定だったが国民が集まるには狭かったので、【龍の飛翔】を使い役所の上空で宣言する事に決めた。
年越しのカウントダウン後に建国の宣言をして、わしは一旦城に戻る。城に待っている3人の王妃を連れて国内をパレードする予定じゃ。
年越しの時間が来たのでアリス、ラルチェ、おさきに挨拶しようとしたら断られた。まだ着替えが終わっていないらしい。わしはそれでも入ろうとすると後宮のメイドや祝いに来た眷属達に止められた。
「タケル様。どのような理由があっても花嫁衣装の着替えを覗く事は許されません。女にとって一生に一度の事ですから。
一番綺麗な状態を好きな殿方に見せたいと言う女心が分らないタケル様ではないと思います。」
普段ならわしの言う事は何でも応じているメイドがわしに逆らうとは・・・。
どうやら、ここは今、女にとっては聖域なのかもしれん。
王妃達に嫌われたくないのでわしは大人しく引き下がる事にした。
なんだか悔しくなり、わしに意見したメイドの体を暫らく堪能した。
うむ。流石は、最高ランクのメイドじゃ。良い体をしている。
わしは、心友の証を使い役所の屋根に移動する。下を見ればたくさんの人で広場が埋め尽くされていた。
これはすごいな。村人も移転者達も皆いるぞ。
パレード用の道はゴーレム達によって確保されていたので予定通りパレードが出来るじゃろう。
上空を見ると数字が浮かんでいる。数字は徐々に少なくなり今は300を切っていた。
わしは数字が60になると【龍の飛翔】を使い上空に飛んだ。
「皆の者。待たせたな。それではカウントダウンを始めるぞ。
大きな声で数えるのだぞ!!!」
「55」
「54」
・
・
・
・
「10」
「9」
「8」
「7」
「6」
「5」
「4」
「3」
「2」
「1」
「皆の者。今日は記念すべき日じゃ。
しかも、3つもある。
1つ目は、年が明け新年を迎えた事じゃ。
近年は子宝にも恵まれ、多くの者が家族を増やした。
そして、皆の努力で去年は豊作じゃ。おかげで食べる事や酒には困らなくなった。
改めて感謝の言葉を贈りたい。
皆の者、本当にありがとう。わしはこの地に来た事を心より感謝する。」
一斉に歓声が上がる。中には空中に魔法を打ち上げている者もいる。
「2つ目は、この村が国へと生まれ変わる事じゃ。
村人も転移者達もいがみ合わず手を取り合ってこの国を支えてほしい。
ゴホン。皆の者、静かに聞いて欲しい。
神獣:カーバンクルのルーブル・ファームル様、
神人:黄龍のアルベルタ・ディータ様、
神獣:白面金毛九尾の狐 玉藻前様の3柱の心の友、
タケル・ヤマトが宣言をする。
これよりこの地をヒノモトとする。
皆の者!建国じゃゃゃゃ。」
「おぉぉぉ。」
「乾杯~。」
「酒だ。酒を持ってこい。」
「俺達の国だぁぁぁぁ」
「キャャャャ。タケル様。」
あちらこちらで歓声が上がる。興奮しているのか上空にいるわしにまで熱気が感じられた。
「そして、最後は、わしは3人の美女を王妃に迎えることにした。
皆が知っている者じゃ。
今は、言わんぞ。
安心せい。これから連れてくるので静かに待つのじゃぞ。
それでは呼びに行く。さらばじゃ!!」
後宮に戻るとそこには豪華絢爛な衣装を着た美女達が待っていた。
全員白をベースにしているが服装自体が異なっている。
うむ。3人共、綺麗じゃ。元々美人だったが豪華な衣装を着ると気品が溢れ出している。まるで由緒正しき王女の様じゃ。
わしは、襲い掛かりたい気持ちを押さえて、順番にエスコートしていく。国民がいないので胸や尻を触るのは忘れなかった。
3人の衣装を説明する。
アリスは、胸元が大きく開いた純白のウェディングドレスに身を包んでいる。綺麗な胸のラインを惜しげもなくさらしているが不思議と下品ではない。それどころか七色に輝くネックレスによって気品があり上品な印象を受ける。
頭には、七色に輝くサークレットを乗せ、髪留めはわしがプレゼントした櫛を使用している。
正直わしがプレゼントした櫛では、今日の衣装には合わないと思ったがスタイリストの腕が良いのか違和感がなかった。
ラルチェは、胸元にハートの形がくり貫かれた純白に金の刺繍が施されたチャイナドレスを身を包んでいる。頭や胸元はアリスと同じ物をつけているが大分印象が違っていた。際どいスリットが両サイドに伸びているので健康的で綺麗な足が姿を現している。妖艶なのに気品があるという不思議な雰囲気を醸し出していた。
おさきは、白を基調に七色に輝く模様が艶やかな十二単に身を包んでいる。いつもはメガネをしているが今は外している。3人の中で一番艶やさは少ないが気品にあふれていて、まるで女神の様に神々しい。
額には九尾が形どられた額櫛の尻尾部分1つ1つが大きな宝石で出来ている。
わしらは、走り屋が引く装飾された巨大な大八車に乗り広場へ向かった。
湖を越えて広場に向かうと大きな歓声が上がる。走り屋にスピードを落とすように指示を出すと歩く速度までスピードを落としながら進む。
わしらが手を振ると国民も反応して大きく手を振り返してくる。
「王妃様達、キレイ~。」
「いいなぁ。わたしも着てみたい。」
「おれは、アリス様かな。あの色気はたまらん。」
「バカ。ラルチェちゃんだろ。あの健康的なむっちりとした肉体がたまらん。」
「これだからお子様はおさき様の知的で気品あふれるお姿が一番だろ。」
「いい加減にしなさい。バカ男子!!」
「タケル様もステキーー!!」
「リア充は爆発しろ!!!」
うむ。変な事を言う奴もいるが所詮は負けおしみじゃ。わしは寛大なのでその程度では怒らん。
何とも気持ちが良い日じゃ。今日だけは全てを忘れて大騒ぎしても良いだろう。
「皆の者。今日は無礼講じゃゃゃゃゃゃ。」




